トーシローの睡眠作戦・宇宙大戦争篇 第四幕
第四幕 最後の一分間
トーシローが、珍しく真剣な顔をしていた。
「イユル」
「何?」
「昨日は、危なかった」
「どうしたの?」
「敵に包囲された」
「宇宙戦争?」
「うん」
今度は、なかなか大変だったらしい。
「味方の艦隊は、ほとんど動けなかった」
「どうして?」
「燃料が尽きたんだ」
「ええっ!」
「僕の水饅頭号も、動力が停止した」
「それで?」
「敵の大艦隊が迫ってきた」
トーシローは、窓の外を見た。
「もう駄目だと思った」
……。
珍しいな。
いつもなら、ここで何か変なことを言うのに。
「でも、逃げなかった」
「うん」
「水饅頭号の最後のエネルギーを使って、味方の船を全部、安全な場所へ送ったんだ」
「すごいじゃないか!」
「その代わり、僕の船は動けなくなった」
「……」
「敵の主砲が、こっちを向いた」
僕は思わず身を乗り出した。
「どうなったの?」
「発射まで、あと一分だった」
「それで?」
「僕は、最後の通信を送った」
「何て?」
「みんな、元気でな、って」
……。
なんだか、本当にかっこいいじゃないか。
「それから、静かに目を閉じた」
「……」
「十秒前」
「……うん」
「九秒前」
「うん」
「八秒前」
僕は黙って聞いていた。
「七、六、五……」
「……」
「四、三、二……」
「……」
「一!」
「どうなった⁉️」
「起こされた」
……。
……。
「誰に?」
「母さんに」
……。
「もう八時よ! 学校遅れるわよ! って」
「……」
「僕は叫んだんだ」
「何て?」
「あと一分寝かせてくれ‼️」
……。
……。
「トーシロー」
「何?」
「宇宙は?」
「わからない」
「……」
「今夜、確かめる」
トーシローは、きっぱり言った。
「だから今日は、早く寝る」
「宿題は?」
「……」
トーシローは窓の外を見た。
今日もいい天気だった。
……。
宇宙の平和と宿題。
その両立は、どうやら相当難しいらしい。




