トーシローの睡眠作戦・宇宙大戦争篇 第三幕
第三幕 総司令官の寝返り
「イユル!」
休み時間、トーシローが僕の机にやってきた。
「どうした?」
「重大な報告がある」
「また宇宙戦争?」
「そう!」
「今度は何があったの?」
「寝返りを打った」
……。
「それは普通のことじゃない?」
「違う! 宇宙艦隊が寝返ったんだ!」
「ええっ!」
「三万隻が、一斉に敵側についた」
「それは大変じゃないか!」
「大変だった」
「どうして?」
「僕が寝返りを打ったから」
……。
「……どういうこと?」
「僕の寝返りに合わせて、全艦隊が寝返ったんだよ」
「……」
「右を向けば右の艦隊。左を向けば左の艦隊」
「それ、宇宙艦隊じゃなくて、お前の寝相じゃない?」
「失礼な! 立派な艦隊運動だ!」
トーシローは机の上に消しゴムを並べ始めた。
「これが第一艦隊」
「うん」
「こっちが第二艦隊」
「うん」
「これが僕の旗艦、水饅頭号」
消しゴムの真ん中に、小さな丸い練り消しを置いた。
「それで僕が右へ寝返ると」
ゴロッ。
練り消しを転がした。
消しゴムが一列に倒れた。
「……」
「どうだ!」
「……ドミノ倒し?」
「違う! 戦術的方向転換!」
そこへセイジがやってきた。
「お前ら、何やってるんだ?」
「宇宙艦隊の演習」
「消しゴムで?」
「そう」
セイジは、倒れた消しゴムをじっと見た。
「隊列が乱れてる」
「……え?」
「この間隔じゃ、旋回したら衝突するぞ」
トーシローの目が輝いた。
「わかるのか!」
「当たり前だろ」
「じゃあ、作戦参謀になってくれ!」
「断る」
「なんで!」
「まず、お前が起きろ」
……。
セイジ。
それ、いちばん難しい命令だと思う。




