トーシローの睡眠作戦・宇宙大戦争篇 第一幕
第一幕 司令官、起床せず
トーシローから報告が来た。
『イユル、大変なことになった』
『どうした?』
『とうとう宇宙へ行った』
……。
『夢の中で?』
『もちろん』
『何しに?』
『それが、わからない』
『……』
『気がついたら、水饅頭の中にいた』
……。
水饅頭?
『しかも、コクピットだ』
『操縦できたの?』
『できた』
『すごいじゃないか!』
『いや、僕が操縦したわけじゃない』
『え?』
『座ったら、勝手に飛んだ』
……。
……それ、乗客じゃないの?
『それで?』
『目の前に、ものすごい数の宇宙戦艦が現れた』
『ええっ!』
『全部、僕の部下らしい』
『……らしい?』
『そうなんだ。いきなり通信が入ってね』
トーシローは、そこから音声メッセージに切り替えた。
「総司令官閣下! 敵艦隊が接近しております!」
……。
声色までつけている。
「僕は言ったんだ。総司令官って誰ですか、って」
「そしたら?」
「あなた様です! って」
「……」
「驚いたよ。いつの間にそんな偉い人になったんだろう」
「夢だからじゃない?」
「そんなことはどうでもいいんだ。敵が来てるんだから!」
……。
そうでした。
「で、どうしたの?」
「とりあえず、全艦隊に命令した」
「何て?」
「僕が考えている間、待機!」
「……」
「そしたら敵艦隊も止まった」
「……え?」
「たぶん、向こうも考えてたんだろうね」
……。
なんだそれ。
「それで?」
「しばらくして、敵から通信が来た」
「何て?」
「そちらの総司令官と話がしたい、って」
「おお!」
「僕が出た」
「おおお!」
「そしたらね」
「うん!」
「敵の総司令官も、僕だった」
……。
……。
「トーシロー」
「何?」
「もうひとりのトーシロー?」
「そう!」
「やっと会えたじゃないか!」
「そうなんだよ!」
「それで、何を話した?」
「向こうが言ったんだ」
「何て?」
「お前、いつまで寝てるんだ?」
……。
「……それ、前にも言われてなかった?」
「うん」
「それで?」
「僕は言い返した」
「何て?」
「今は起きてるだろ!」
「そしたら?」
「向こうが、そうだったな、って」
「……」
「それから、二人で作戦会議を始めた」
「何の?」
「どうやったら起きずに済むか」
……。
……。
宇宙大戦争は、まだ始まってもいなかった。
なのに。
トーシローは、すでに敵の総司令官と意気投合していた。
『続きは?』
僕が尋ねると、すぐに返事が来た。
『今夜、寝てから決める』
……。
それでいいのか。
宇宙の平和。




