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7話

 晴開せいかい龍鳳りゅうほうかいに転移してから、岩杏琳がんきょうりんとともに秋兌国しゅうたいこくの王都のじゅんしょうへ向かった。


 晴開がどうしても杏琳と馬を相乗りしたくないと主張して仕方がなかったので、そこから次へ寄った城市でもう一頭馬を購入した。


 二人とも馬で移動することが出来たとはいえ、今まで馬に晴開は馬に乗ったことがないのでそれを制することが出来ず、杏琳に彼が乗った馬の手綱を引っ張ってもらうしかなかった。


 それと晴開は、博叉バクシャとの戦いで所々穴ができてボロボロになっていたので、そこで晴開は買った。それは、彼が過ごしていたげんで見た着物のような服だった。


 その中で杏琳が選んだのは、男物の上下が分かれた服だった。上は地味な色の麻を織った筒袖の「せん」と呼ばれる上衣と、下は上と同じ色のズボンのような「」と言う下衣だった。


 そのさなか二人は、宿で止まる際は杏琳が晴開に代金が浮くように同じ部屋で泊まるように言ったが、彼は顔を赤面して頑なに拒否した。


 転移して10日もかかって閏商にたどり着いた。


 その城壁に聳え立つ高さ約20丈(46m)もある白い甍を葺いた降婁門こうろもんに驚きを隠せない中晴開は、それをくぐり閏商の城市の中に入って行く。


 門の中建物はどれも白壁の建物の屋根に日光を照り返すほど輝く白銀の甍が葺かれていた。


 閏商の城市内の区画は世界史の教科書に載っているような王宮から南に向かって正門まで大路が延びているのではなく、東に伸びていた。


 そのため王宮の白義宮はその真西に位置していた。


 しかしそこは人通りも少なく、いたとしても瘴気でも漂っているのか、具合が悪そうな様相を人々はしていた。


「…………」

「何ぼーっとしてるの?いつまで呆気にとられないでくれる?早くいくわよ」

「……あっ、済まない。すぐ行く」


 予想だにしない城市の中の鬱蒼とした雰囲気に圧され、晴開は足が止まってしまう。それでも杏琳は、そそくさと右へと馬を進めていく。


 石畳の街路を進んでいくと、土塀に囲まれた屋敷が建ち並ぶ区域に入った。


 杏琳はその中を何回か右に左に曲がっていくと、一つの家門の前に杏琳と同じように黄色くつばの無い小さな帽子を被った少女がいた。


 彼女の服装は杏琳と同じだが、黒曜石のような紫黒色で緩やかにうねっている長髪をしていた。


 晴開らが近づいていくと、彼女はそれに気づいたようだ。


「あっ、きょう姉ちゃん!!ずっと待ってたんだよ―――ってそこにいるひとって!?もしかして、きょう姉ちゃんのか・れ・し!?」

「違うわよ!!れん。彼は白龍の……」

「何だ?こいつって杏琳の妹か?」


 杏琳は目の前の少女から姉呼ばわりしたので、自分の妹のようだった。彼女は咄嗟に、一緒にいる晴開を杏琳の恋人だと捉えてしまったようだ。


「んもぅ!わたしを『こいつ』呼ばわりしないでよね!!ちょっと待ってね。すぐめい姉ちゃん呼んでくるから!!」

「あぁッ!!あいつ俺らのことを、茶化しやがって!!」

「蓮花、待ってよ!!全く、蓮花ときたら……晴開のことを私の……あなた、中で馬を繋ぐから入るわよ」


 蓮花はいきなりテンションを上げた状態で、門の中に入っていった。


 晴開は潔く去った彼女に呆然とした。二人とも馬を降りると、蓮花の奔放さと躊躇わない態度に呆れてため息を大きくついた。


 晴開は、蓮花から自分と杏琳との関係を指摘されたことに忸怩たる思いをした。そして彼らは、蓮花が戻ってくる前に門の内へはいり、それぞれ厩に馬を繋いだ。


 それから何分かもたたないうち、ドタドタと音を立てて蓮花は自身と杏琳と同じ服装で青い髪を三つ編みで後ろに一つにまとめた少女を連れてきた。


どうやら彼女が蓮花が言っていた『めい姉ちゃん』と思われる。


杏琳と晴開の前に二人が姿を現すと、そこで彼女は開口一番に杏琳に詰め寄って問いかける。


「ちょっと杏琳!何やってんのよ?主上からの命でとうかんこくの王太子の様子を探りに行ったはずでしょ?彼が夜叉やしゃ大将たいしょうの一人が土砂崩れを起こして生き埋めになったって聞いたわよ!!」

「そのことなんだけど、まさかそいつが襲ってくるとは思ってなくて。私がもっと早く着ていればそんなことにならなかった……んだけど……」

「あんたって子は!!どうしてくれるのよ!?主上はもちろん、蓉彩ようさい様もこのことにひどく悲しんでいるわ。せっかく彼女も婿入りを待ちわびていたのに」


めい姉ちゃん』と思しき少女は、杏琳をひたすらこき下ろし続けた。


どうやら杏琳の失態は国の一大事になっていたことに改めて気付かされ、彼女は顔を俯け唇を噛んだ。


すると、相手は晴開の存在に気づくと、探し物を見つけたような眼を晴開に向けたかと思いきや、笑みを浮かべながら杏琳に更に問い詰める。


「あと杏琳、こんないいひと連れてきちゃって――――うふふふ」

めい姉ちゃん聞いて!!このひときょう姉ちゃんの……」

「うわああぁぁ!!やめて!!最後まで私の話聞いていよね!!彼は白龍のりゅうしょうよ、冬坎国の王太子が襲われた現場にいたから連れて来たのよ」


 先程まで悔しがっていた杏琳は、再び晴開との関係を蓮花から指摘され気が動転してしまう。その頃晴開はてんやわんやで騒ぐ姉妹に振り回され、あきれ果てた。

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