14話
晴開らに炎蔣于討伐の進軍の命が曾淑から下された。
それで意気揚々となって気を取られてしていた時のことだった。
飛び込んできた伝令兵から、閏商の城市全体が大火に見舞われていると告げられたのだった。
そのため彼らは白義宮内の騒然とした状況に気付くことが出来なかったという大失態を犯してしまった。
危機の迫った状態で曾淑が報告した伝令兵に大火の原因を追求する。
「火元は…………どこから火が起こったというのか!?」
「火元はまだ定かではありません!これはただの大火とはとは全く違います!!」
「それが分からぬとはどういうことだ!?一体どういう状況にあるんだ!?」
伝令兵はおどおどした様子で声を震わせながら発した。矢継ぎ早に彼らは、焦燥を隠せぬまま報告を続ける。
「それが、炎がまるで上から――――空から火矢が飛んでくるように、炎が烈火のごとき速さで次から次へと降り注いでくるとのことです」
「それはある者が言うには、人が持したとは思えないほど、非情に多くの火徳の流気有しているとのことです」
「そ…それは、炎蔣于が起こしたものだというのか!?」
大火そのものが火徳の流気によるものであれば、閏商――――ましてや秋兌国にとって一大事という言葉で表せなかった。
この場にいた者は皆、猛火に晒されている外とは反対に、あまりのおぞましさに寒気を感じたのであった。
閏商を襲う炎に火徳の流気によるものだということが発覚したため、その原因を起こしたのが、討伐が決まったばかりだという炎蔣于によるものではないかという疑惑が湧いた。
緊迫した空気が張り詰めるなかで、またしても我が夫の手にかかったと思った曾淑は、覚束なくあるが大声で命を告げる。
「い……急いで、消火作業に入れ!!そして梅涼、太白鉱を護りとおすのだ!!」
このような大災害に遭って、急に荒げた声を曾淑が、梅涼に向けて命を下した。
「はい、承知しました!何としてもこの国の壊滅を防がなければなりませんので」
「おい!どういうことだよ梅涼!?」
「太白鉱は、この国の金徳の流気源で、五行の相剋の法則で言えば、”火剋金”で、火徳の流気は金徳のそれを損害してしまうのよ!!」
「――――いやそうじゃなくて、その”流気源”ってのは何なんだよ?」
「そんなことも知らないの!?流気源とはこの秋兌国の流気の源。それが太白鉱になるの」
「あぁ!!そんなこと昨日言ってたな。だから唯一土徳の流気を持つお前ら后土四姉妹がこの国に必要だって言ってたな」
この秋兌国に置かれた状況を晴開は、梅涼からの説明を昨日聞いたのを思い出した。更に彼女は間髪入れずに晴開に説明する。
「私が言いたいのは、流気源から生まれる金徳の流気の量によってこの秋兌国の栄枯盛衰が左右されるということ。もしそれが火徳の流気に侵されれば、閏商どころか、この国中に大火が起こってしまうのよ!!」
「何だって!?それって、マジでヤバいじゃねぇか!?」
「だから私達が持つ土徳の流気が太白鉱に対して五行の相生の法則で、”土生金”になるから何としても私の流気で火徳の流気から護らないといといけないの」
「でもその火徳の流気に対してどう対処すればいいんだ……?」
「それは……」
梅涼が晴開に必死になっていたが口を噤んでしまった。その様子を見ていた曾淑は、焦りと苛立ちが募り彼らの方を見て、恐ろしい剣幕で睨みつけて告げる。
「うぬら!!こんなことをしている場合か!!さっき言っただろうが!梅涼、お前はさっさと太白鉱のある鳳凰殿に行け!そして蓮花、お前は水徳の流気も持っているのだろう。ならさっさと倒してこい!!」
「でも主上、敵がどこにいるか解らないのですよ?」
「そのような御託を並べている場合か!!余のいうことが聞けぬというのか!?」
「はい……わかりました。行ってまいります」
王からの急な命令に蓮花は弱音を吐いてしまったが、彼女からぴしゃりと言い返された。
普段は天真爛漫な蓮花だったが、今は恐怖と不安で身体を震わせながら、魄受殿の外へとぼとぼと向かっていく。
梅涼はそれとは反対に白義宮の奥へと駆けていった。
「あと、杏琳は蓮花に付いて行け、そやつを敵から護るんだ」
「承知しました!蓮花、私も行くから!!」
未だ遅々とし歩が進まない蓮花に力添えするように杏琳は声をかけ、彼女の手を取って外に連れて外へと姿を消した。
それを見て彼女らが心配になった晴開が口を開く。
「俺も行く!!」
「ダメよ!!あなたは、ここにいなきゃ!!あなたはまだ、白龍を召喚出来ていないじゃない!」
突拍子もない発言をした晴開に、蓉彩は外に行こうと歩を進めた彼の衫を掴んで制止した。
それを見た曾淑と含めた全員が驚嘆し、誰しもが彼の方に目を向けた。
「放せよ!!俺も行くんだっての!!」
「晴開、お前は、ここにいろ――――って、人の話を聞け!!」
蓉彩からの制止も虚しく、自分を邪魔する彼女を振り払って晴開は魄受殿を出ていった。
「うぬら、晴開を捕らえよ!!」
「御意ッ!!」
王が遣わせた兵の追っ手をひらりとかわしながら、晴開は白義宮の外へと走り抜けていった。




