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13話

 晴開せいかい蓉彩ようさいから求婚されたが、あっさりと断った。

 

 そして彼女の桃色の眼から光る物がこぼれてくる。


 それを見た杏琳きょうりんに加え、梅涼めいりょう蓮花れんかまでもが困り顔になってしまった。彼女らは蓉彩にこう告げる。


「公主様、こうなるのは想定していたのですか?いくらなんでも晴開に求婚したからといって、それが”是”になるとは限らないんですよ」

「そうよ。彼だってあなたと初対面だったから、心の準備というのも無かったのよ」

「このクソアマどもが……寄ってたかって、公主の邪魔ばかりしやがって……!!」

「んもぅ!変態(・・)道士は黙っててよね!!」


 二人は蓉彩を宥めたが、自分と彼女の思惑が台無しとなったことで、憂仁ゆうじんは語気を荒げて、姉妹らを侮蔑したが蓮花に言い返された。

 彼は異性に『変態(・・)』と言われたことによる衝撃ショックのあまり、凛々しく美しい(かお)を引きつらせてしまった。


 一方晴開は、それを彼女らが寧ろ自分を庇っているように見えていたので、申し訳なく思った。


 それでも蓉彩はまだ泣いているのかかわらず、今度は己が母である曾淑そうしゅくに聞き出す。


「何であなた達にそう言わればならないの!?母上も杏琳達に何か言ってよ!!」

「蓉彩、うぬは孝然こうぜんを婿として迎えることは出来なかったとは言え、其奴よりも晴開の方がよいのか?」

「そうよ。さっきも言ったじゃない?孝然様は見た感じ良さそうではあるけど、会話もしたことも無いのよ。私は"王族同士"という縛りにとらわれたく無いわ。それに晴開は王族の血を引かないけど、彼は”白龍の龍召士りゅうしょうし“なのよ!!」

「だが、今は晴開を我が夫とするよりも、残り四人の夜叉五大将やしゃごたいしょうを亡きものにするためには、藭荊山きゅうけいざん炎蔣于えんしょううを討つことが先決だ」

「そんな……!?」


 曾淑はこの秋兌国王しゅうたいこくおうであり、蓉彩の母でもあった。そうであるからには、彼女の発言は絶対に逆らえない。


 さすがに憂仁も言い返すことが出来なかった。


実の娘の婚姻を急くより、この国の平安こそ民意であるという曾淑の判断は間違っていなかった。

晴開を含む姉妹三人も彼女の意見には何も返す言葉はなかった。


 そのような権限を持つ母に対して、蓉彩は衝撃ショックのあまり不満とも悲観とも言えない感情がそのかおに出てしまった。


「この国は夜叉五大将やしゃごたいしょうの襲撃をないがしろにして、孝然の婿入りしを優先したことで、孝然も亡き者になってしまった。だから蓉彩、ことは奴らを征伐してからにしろ。晴開は藭荊山に赴き、奴らと蔣于を討たねばなない」

「そうれは、そうだけど……私もいっしょに行きたいのよ!!」

「お前は大事な一人娘、唯一の跡継ぎだから行ってはならぬ」

「母上……どうしてもダメなのね……分かったわ……晴開、絶対無事に帰って来てね!!待っているわ!!」


 母の言を聞いて落ち込んだ様子でそれを受け入れた。彼女は、晴開が帰還出来ることを期待を込めて激励した。

 当の本人は何とも言えないような顔になってしてしまった。


「……あぁ……そうだな。でもこうなりゃ、必ず残りの夜叉五大将を全員を討たなければならないな!!」

「蓉彩様。私達、こうよん姉妹しまいに任せて!!」

「一人いないけどね……」


 夜叉五大将の討伐に向けて決意した晴開に合わせて、姉妹3人もそれ呼応した。彼らの勢いに呼応するかのように、曾淑は声を上げる。


「今すぐに藭荊山きゅうけいざんに進軍せねばならぬな。えいッ!どこにおるのか!?」

「ここにおりますぞ!主上!!」

「な……何だ、お前!?」


 曾淑が急に『嘉榮』という者の名を呼ぶと、この広間のどこかからそれに応える堂々とした声こだました。


 その方を見ると、大岩のように頑強な体躯の男がいた。晴開はそれに気圧されて、つい彼のことを『お前』呼ばわりしてしまった。


「おお、そこにいたのか!!嘉榮。大将軍のうぬに此度の総大将を任ずるッ!!」

「はッ!!御意でございます!!あッ、申し訳ない輪晴開とやら。我はこの秋兌国の大将軍、ざんえいだ。よろしく頼んだぞ!!」

「あぁ、よろしくな……」


 拱手する嘉榮からの自己紹介に、晴開は彼の気迫の強さに圧倒さてしまったので、呆れながらそれに応じる。


「よし!!後日斬嘉榮を総大将にして、晴開と梅涼、杏琳、そして蓮花に炎蔣于および、残りの夜叉五大将の討伐を命ずる!!準備を整え次第、藭荊山へと進軍するのだ!!」

「「御意ッ!!」」


 秋兌国王の曾淑より命が下され、晴開らはそれに対して自信満々に応えた。


 その時、晴開らは進軍の命が曾淑から命が下され意気揚々となってしまい、外の様子が騒がしいことに気づいていなかった。


 この時点で、魄受殿に焦げたような臭いが漂ってくる。更に窓の外から入ってくる煙の向こうの景色が赤く染まっていた。


「何だ!!一体、なにがおきているのか?!」


 そして、魄受殿はくじゅでんの正面の扉から十数人の兵が弾かれたように大量の煙と共に広間に跳び込んできた。


 彼らは慌てて、すぐさま曾淑に向かって跪いて拱手した。


「伝令ッ!!主上、閏商じゅんしょうの城市が火の海に飲み込まれております!!」

「「何だって!!」」


 兵士らが入ってくるまで曾淑らが気を取られて、彼らは魄受殿の外の騒然とした状況に気付くのが遅かったようだ。


 思わぬ失態を犯したことをここにいる全員に戦慄が走った。

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