第13話 05 赤
「・・・あ・・・あぐっ・・・」
肩の激痛で朦朧とするも、シルフィーネは両足に力を込め堪える
「あの剣で空間を切られても困るからねぇ・・・」
左肩を貫かれたシルフィーネの身体がゆらりと傾く
「・・・ぐっ・・・・ネクロ・・・マンサー・・・」
右手を掲げ、再びネクロマンサーを呼ぶ
「ウォール!!」
同時にギムが素早く唱えた
「!!」
シルフィーネは、まるでテンションのかかったゴムが切れてバチンとなるような衝撃を受ける。
・・・ネクロマンサーが現れないのだ
「・・・魔力が・・・・遮断・・・されて・・・」
先程の呪文が魔力障壁となり、シルフィーネとネクロマンサーの魔力回路を遮断したのだ
「え・・・影・・牙・・・・」
たまらずほかの攻撃、影牙に切り替える。
シルフィーネの背後に闇が現れ、幾本かの影がギムに向かう
「その魔力もらうぞ!」
シルフィーネの背後に抜け出たギムの右手に影が吸われるか如く消えていく
「・・・がぁ・・・」
強烈な痛みがシルフィーネを襲う
ギムの右手に黒い球が現れるとシルフィーネの肩から右手を抜いた
「あああぁぁ!」
悶絶するシルフィーネ、肩に強い痛みと、内側から押されるような強い違和感を覚える
「魔力は返すよ。」
ギムの声が聞こえる
「ぐあぁぁ・・・」
痛みに悶えるシルフィーネの左肩の傷口に黒い球が残っていた。
抜いた右手でシルフィーネを腹から抱え
「そうら!シガ!!」
シガに向け放り投げる
シガはシルフィーネを受け止める
「・・・ぐぅぅっ・・・」
受け止められたシルフィーネは、苦悶の表情を浮かべ悶絶する。
その時・・・
パアァァァン!!
激しい音とともに肩に残された黒い球が弾け、黒と赤の入り混じった一枚の魔方陣が現れる
「あああああぁぁぁぁぁ!!!」
シルフィーネが更に悶絶をする
そして直径2m程のその魔方陣はシガとシルフィーネの頭上に形成され、一瞬光ると溶けるかのように、赤い水が滴るかのように二人へと降り注ぐ
「!!」
「どうだい?天使の血で作った魔方陣だよ」
一瞬焦りの姿勢を見せるシガ、それに相反して自信ありげな笑みを浮かべるギムがシガに言い始める
「その魔方陣で君の魔力に反応する空間を作った。君の魔力と合わさることでちょっとした爆発が起こるのさ。」
その説明を受けたシガが確認するように降り注いだ魔方陣の残骸である紅い液体を見る
確かにその魔方陣へ込められた思念の形跡が認められる、
しかし、それは『ちょっとした爆発』などではない、
”この辺り一帯が跡形もなく消滅する・・・”
それほどの爆発が起こると推測できる
「・・・」
結果的にシガの魔力が封じられる形となった
「・・・ご・・・ごめんなさい・・・私が・・・」
シルフィーネが、焦点の合わない瞳をこちらへ向け謝る
油断したばかりに・・・・と続けたかったのだが、大量の出血と痛みで言葉が止まる
「いいさ・・・お前が無事でよかった・・・」
しかし・・・
まだ|奴は何かをするつもりだ・・・
そのギムはウェインとレオンの闘いが激化していることを横目で確認する
「悪いなぁ・・・ウェイン・・・」
ギムが企みのある瞳をシガに向ける
それに気づいたシガがその場から動き始める
”空間から外れれば・・・”
シガが魔力検知のある空間から出ようと移動しようとする
「気付いているよ。それが妥当な行動だ!」
ギムが笑った
その時・・・
「・・・あぐっ!・・・がはっ!!」
シルフィーネの左肩の傷が強く赤く光った。
「あああああぁぁ!!!」
激しく悶絶するシルフィーネの左肩を中心に赤と黒の閃光がシガの足を貫く
「!!」
思わずシルフィーネがシガから転げ落ちた。
「これは・・・」
呟くように分析する
「拘束魔法か・・・」
シガが闇と天使の血によって拘束されたのだ
「そうだね。そこは今から行うショーの特等席さ」
自慢げに語るギムは、更に小さく呟き、自身の目前に直径2メートルほどの紫の魔方陣を出す
「!?」
意識が朦朧としているシルフィーネがその気配を察知し、体を起こそうとする
「ぐうぅぅ!」
歯を喰いしばり力を込め、何とか片膝をつき魔方陣を見る
「・・・あれは・・・」
息を切らせながらシルフィーネが続ける
「・・あれは・・・死者の精神・・・・」
「流石だねぇ」
シガがシルフィーネの答えを肯定する
「これには君の鎮魂歌が一番厄介なんでね」
シルフィーネは現状の自分のダメージを悔やむ・・・が・・・
動かない左手はそのままに、右手を自分の胸に添え姿勢を整える
”あのエレメントは・・・”
一体誰の精神体なのかわからないが、とても強い悲しみと人を思う気持ちが感じられた
「ごめんな・・さい・・・今のあなたを・・・魂葬する・・わ・・・ね・・・」
誰とも知らない思念に断わりを入れシルフィーネは鎮魂歌を謳い始める
「!!」
しかしその唄は歌えなかった・・・シルフィーネの身体がその姿勢を保てずに、前かがみに四つんばになる
「うぐっ!・・・げほっ」
途轍もない平衡感覚の揺れを感じる。まるで世界が揺れて回っている
吐き気と強い目眩がシルフィーネを襲う
”なにが・・・”
苦しそうに咽ながらシルフィーネは原因を考える・・・が、目眩が酷く、集中できない
「残念だね・・・君は血が足りないのさ。」
ギムが説明をする
「・・・血・・が・・・足り・・・ない・・・」
ギムの言葉をオウム返しに呟くも、今や思考がまとまらない。
「さぁ、準備は整った。出ておいで。」
ギムが魔方陣に手を伸ばし呼びかける
「ビエラ。」




