第11話 05 夜が怖い
時は少々前にさかのぼる。
「なんだ・・・あいつは・・・」
やせ細った体に黒いスーツを身に纏い、小さな眼鏡をかけた面長の顔立ちをしたその男は羊蹄族の村へと向かう大きな鎌を持った黒服の女に驚嘆の呟きを見せる
あの女は強い、相手にするのは避けたほうが良いかもしれない。
男はそう思いながら去り行く一行を見過ごしていた。
すると・・・
ゴウン!!
という鈍い音と共に、大きな氷の塊が男の頭に落ちてきたのだ。
頭上部を半分失った男だったものがそこに残り、氷の塊は地面に衝突する。
大きな衝撃音が辺りに響き、静まった後には頭の上部の無くなった男が直立して立っていた。
轟音の後の静けさの中で
「クックック・・・流石ですねぇ・・・」
頭が上半分無くなったものが笑いながら、落ちた上半分の頭を拾い
「私では相手にならないということでしょうかねぇ・・・・」
振り向きもせずに攻撃を繰り出す彼女を確認し、薄ら笑いを浮かべながらそう呟く。
男は自分の頭を持ったまま踵を返しその場を去って行く
辺り何事もなかったかのように静まり返った
夜である
獣人の街から次の街キノクスへの途中で夜を迎えたパドスとオルフィドは、野宿することとなった
幸いこの辺りは戦火からは遠く安全と言えば安全だ。パドスが持っている魔よけの香のおかげで小型の魔物や獣などの接近は皆無で、焚火を起こし、オルフィドは寝袋へパドスは見張りも兼ね焚火の前で浅い眠りにつくこととした。
小さいかがり火のような焚火をちょっと離れた木にもたれながら見ていたパドスは悩んでいた
夜寝ているとオルフィドが傍らに蹲るように寄り添って来るのだ。
曰く「夜が怖い」とのことだ。
いやいや、魔族だろ!闇の・・・それこそプロだろ!と思ったが、以前出会ったタニアという女性に会ってから精神的に弱くなった部分があるみたいだ。
長い角が当たってちょっとうざいのだが、まだ見ぬ自分の子供を見るかのような気持ちになる。
これが父性愛というものだろうか・・・パドスには理解できない悩みがもどかしい。
パドスのマントの下で蹲るオルフィドの背中を赤ん坊でもあやすかのようにポンポンと軽くたたくと安らかな寝息を立て始める。
最近気づいたのだが、魔族も寝るのだなぁ・・・しかもこんな安らかな寝息を立てて・・・。
パドスは静かに微笑む。彼の父性愛は間違いなく育っていた。
朝目覚めると傍らにオルフィドはいなかった
朝日が昇ると元気になるようだ。狩りをしてきたみたいだ。
「パドス!魚捕って来たよ!」
最近、オルフィドの声が甲高くなってきた・・・声変わりか?・・・いや、う~ん・・・
「オルフ・・・お前って男だよな?」
不安になってパドスが尋ねる。
「なんで?」
キョトンとしてオルフィドが答える
「いや・・・なんか不安になってきた・・・」
パドスのその応えに、
「うん、なんていうか・・・俺は男になる予定だけど・・・」
「なんだ?その「予定」ってのは!」
思わずパドスが突っ込みのような返答を返す。するとオルフィドは当然のような口調で
「だって、俺はまだ性別決まってないから。」
と言った。
当然のような見た目と口調で男と決め込んでいたパドスは額に手を当て黙り込む
「どうしたんだよ!」
というオルフィドに自分が着用していたマントを外しオルフィドの少々撫で肩になった肩にかける。
「・・ん・・・」
訳も分からずにかけられたマントに視線を移すオルフィドに、
「次の街で服を買おうか・・・」
パドスが何やら言いづらそうにそう言った。
その日の魚の味はあまり覚えていない・・・・。




