4人でお出かけ
清水君の友達に紹介してもらった日から数日後、私は日曜日の予定を考えながら、クローゼットの前で悩んでいた。
きっかけは、金曜日の放課後に清水君から誘われたことだった。
「優里恵さん、今度の日曜日って予定ありますか?」
帰り支度をしていた私は、鞄のファスナーを閉める手を止めて、清水君を見上げた。
「日曜日? ううん、特にはないけど……」
「よかった。この前、拓海たちと話したときに、四人で遊びに行こうって話になったんです。ボウリングに行って、そのあと食事でもどうかって」
「ボウリング……」
「苦手だったりします?」
私が少し考え込んだのを見て、清水君は心配そうに首を傾げた。
「ううん。そういうわけじゃないよ。ちょっと久しぶりだから、どうだったかなって」
「そうですか。無理にとは言いませんけど、僕は優里恵さんと一緒に行けたら嬉しいです」
清水君が照れくさそうに笑う。
そんなふうに言われたら、断る理由なんてなかった。
「……うん。私も行きたい」
「よかった。じゃあ、詳しい時間はあとで連絡しますね」
「うん、楽しみにしてる」
そう答えたときは、純粋に楽しみだった。
ところが、日曜日が近づくにつれて、楽しみな気持ちの中に、少しずつ別の感情が混ざり始めた。
清水君の友達と一緒に出かける。二人きりのデートとは違って、今度は清水君が普段から付き合っている友達と、同じ時間を過ごすことになるのだ。
せっかく紹介してもらったのだから、二人にもよく思われたい。清水君の彼女として、恥ずかしくない振る舞いをしたい。
そんなことを考えているうちに、私はいつの間にか、日曜日に着ていく服まで何度も選び直していた。
「……これじゃ、気合いを入れすぎかな」
鏡の前で、私はブラウスの襟元を整えたあと、小さくため息をついた。
少し大人っぽく見える服を選んだつもりだったけれど、普段よりもずっと意識している自分が恥ずかしくなってきた。
かといって、適当な格好で行くのも違う気がする。
「うーん……」
しばらく悩んだ末、私は結局、普段からよく着ている淡い色のニットとスカートを選んだ。
清水君の前では、少しずつ自然体でいられるようになってきたのに、その友達の前では、また別の自分を演じようとしている。
そう気づくと、自分でも少しおかしくなった。
「……普通に楽しめばいいんだよね」
私は鏡の中の自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
そうして迎えた日曜日。
待ち合わせ場所の駅前に着くと、清水君はすでに改札の近くで待っていた。私に気づいた清水君が、こちらへ歩いてくる。
「優里恵さん、おはようございます」
「おはよう。待たせちゃった?」
「いえ、僕も今来たところです」
清水君はそう答えてから、私の服装に目を向け、少しだけ笑顔を深めた。
「今日の服、似合ってますね」
「えっ……そ、そう?」
思いがけない言葉に、頬が熱くなった。
「はい。いつもと少し雰囲気が違いますけど、いいと思います」
「……ありがとう」
嬉しい。せっかく選んだ服を褒めてもらえたのだから、素直に喜べばいい。それなのに、私は自分が頑張って選んだことまで見透かされたような気がして、妙に落ち着かなくなった。
「どうかしました?」
「ううん、何でもないよ」
慌てて首を振ると、清水君は不思議そうな顔をしながらも、それ以上は聞かなかった。
そこへ、遠くから大きな声が聞こえてきた。
「おーい、清水! 浅桜さん!」
振り向くと、拓海君が大きく手を振りながら走ってくる。その後ろを、直樹君が少し呆れた様子で歩いていた。
「悪い、待ったか?」
「いえ、私たちも今来たところです」
私が答えると、拓海君はにやりと笑った。
「おっ、二人で待ち合わせか。なんだかデートみたいだな!」
「今日は四人で出かけるんだろ」
清水君がすかさず突っ込む。
「分かってるって。ちょっと言ってみただけだよ」
拓海君は悪びれもせずに笑った。直樹君はそんな彼の肩を軽く叩き、私に向かって苦笑する。
「朝からすみません。こいつ、今日もいつもどおりなんで」
「ふふっ、ううん。大丈夫だよ」
そう答えたものの、私は少し緊張していた。
清水君と二人で待ち合わせるのとは、やはり違う。自分だけが浮いてしまわないか、会話についていけるだろうか。そんなことが頭をよぎってしまう。
けれど、拓海君は私の緊張を気にする様子もなく、すぐに話を進めた。
「じゃあ、行こうぜ! 今日はボウリングで勝負だからな!」
ボウリング場に向かいながら、拓海君は楽しそうに話し続けた。
「せっかく四人いるんだから、チーム戦にしようぜ」
「なるほど。じゃあ、どう分けます?」
清水君が尋ねると、拓海君は得意げに指を一本立てた。
「俺と清水。浅桜さんと直樹でどうだ?」
「えっ、私と直樹君?」
思わず聞き返すと、直樹君が穏やかに頷いた。
「よろしくお願いします。僕もそんなにうまいわけじゃないですけど」
「い、いえ、こちらこそ、よろしくお願いします」
慌てて頭を下げると、拓海君が楽しそうに笑った。
「おいおい、そんなにかしこまらなくても大丈夫だって。遊びなんだからさ」
「拓海の言うとおりですよ。気楽にやりましょう」
清水君も優しく笑ってくれた。
私はようやく肩の力を抜き、三人と一緒にボウリング場へ向かった。
ボウリング場に着くと、受付を済ませて靴を借り、四人でレーンへ移動した。
周囲では、学生らしいグループや家族連れが楽しそうにゲームをしている。ボールがピンを倒す音や、誰かの歓声が響いていて、思っていた以上に賑やかだった。
「よし、じゃあ先攻は俺だな!」
拓海君が勢いよくボールを選び、レーンの前に立った。
「見てろよ。華麗な一投を見せてやるからな!」
「はいはい。まずはちゃんとピンまで届かせろよ」
直樹君が冷静に返すと、拓海君は振り向いて抗議した。
「お前、俺を何だと思ってるんだ!」
「口だけは一流のやつ」
「ひどくない!?」
三人のやり取りを見て、私は思わず笑った。
拓海君が投げたボールはレーンの中央を進み、勢いよくピンにぶつかった。倒れたのは六本だった。
「おっ、悪くないだろ!」
「最初にしては上出来ですね」
直樹君が拍手を送ると、拓海君は満足そうに胸を張った。
「だろ? さあ、次は清水!」
清水君は苦笑しながらボールを選び、レーンの前に立った。構えは落ち着いていたけれど、投げたボールは少し左に逸れ、ピンの端をかすめて五本を倒した。
「あー、惜しい!」
清水君が悔しそうに眉を寄せると、拓海君がすぐさま声を上げた。
「おいおい、清水! さっきの勢いはどうした!」
「まだ一投目だろ。お前だって六本だったじゃないか」
「俺は六本、お前は五本。つまり俺の勝ちだな!」
「一投だけで勝負を決めるなよ」
そんな二人のやり取りに、直樹君が苦笑しながら私を振り返った。
「次、浅桜さんですよ」
「う、うん」
私はボールを選んだ。
久しぶりなので、どれくらいの重さがいいのかも、いまひとつ自信がない。とりあえず持ちやすそうなものを選び、レーンの前に立つ。
ボールを両手で持ち、狙いを定めた。
大丈夫。落ち着いて投げればいい。
そう思いながら腕を振ったけれど、ボールはレーンの端へ向かい、そのまま溝に落ちてしまった。
「あ……」
ピンは一本も倒れなかった。
「……ごめんなさい」
私は思わず直樹君を振り返った。
「せっかくチームなのに、いきなりガターで……」
「いえいえ、まだ一投目ですから。気にしなくていいですよ」
直樹君は穏やかに笑い、手を軽く振った。
「それに、僕も最初からうまくいくとは思ってませんでしたし」
「そ、そうだよね」
私は苦笑したけれど、内心では少し悔しかった。
せっかくなら、ちゃんと投げたかった。直樹君にも迷惑をかけたくなかったし、清水君たちにも楽しんでもらいたかった。
そんな気持ちが顔に出ていたのか、清水君がこちらを見て声を掛けてくれた。
「優里恵さん、そんなに気にしなくて大丈夫ですよ。最初から思いどおりに投げられる人ばかりじゃないですから」
「……うん。ありがとう」
私は小さく頷き、もう一度ボールを持った。
今度は力を入れすぎないように気をつけて、ゆっくりと腕を振る。
ボールは先ほどよりも真っすぐ進み、ピンにぶつかって四本を倒した。
「あっ、倒れた!」
思わず声が出た。
すると、隣で直樹君が嬉しそうに頷いた。
「いい感じでしたね。次もその調子でいきましょう」
「うん!」
私は勢いよく頷いてから、はっとした。
少し大きな声を出しすぎたかもしれない。そう思って三人を見ると、拓海君は楽しそうに笑い、清水君も優しい表情を浮かべていた。
「おっ、浅桜さん、今のいいじゃん!」
拓海君が親指を立てる。
「次はスペア狙いだな!」
「えっ、そんなの私には難しいよ」
「何言ってんだよ。まだ始まったばかりだぞ!」
その言葉に、私は思わず笑ってしまった。
確かに、まだ一ゲーム目の途中だ。最初に失敗したからといって、そこで諦める必要はない。
その後もゲームは続いた。
拓海君は調子よくピンを倒しては大げさに喜び、清水君は安定した投球を見せながら、ときどき思いどおりにいかず悔しそうな顔をする。直樹君は派手さこそないものの、着実にピンを倒していった。
私もガターを出すことはあったけれど、最初のように失敗を気にし続けることはなくなっていた。直樹君が「惜しいですね」と声を掛け、拓海君が「次こそいける!」と盛り上げてくれる。そのやり取りが楽しくて、次の投球が待ち遠しくなっていた。
「よし、今度こそ!」
私はボールを持ち、狙いを定めた。
今度は、さっきよりもうまく投げられた気がする。
ボールはレーンの中央を進み、ピンにぶつかった。
倒れたのは七本。
「やった!」
思わず両手を握りしめて喜んでしまった。
その瞬間、三人が一斉にこちらを向いた。
「おおっ、やったじゃん、浅桜さん!」
拓海君が自分のことのように喜んでくれる。
「今のはよかったですね」
直樹君も笑顔で頷いた。
「うん。すごくよかったですよ」
清水君までそう言ってくれたので、私は急に恥ずかしくなった。
「あ、ありがとう……」
頬が熱くなる。でも、不思議と嫌ではなかった。
失敗したときも、うまくいったときも、三人は同じように声を掛けてくれる。上手にできるかどうかより、一緒に楽しむことが大切なのだと、少しずつ分かってきた。
その後も何度か投げたけれど、最後のスコアは拓海君と清水君のチームが勝利。私と直樹君のチームは負けてしまった。
「いやあ、勝った勝った!」
拓海君が大げさに両手を上げて喜ぶ。
「まあ、俺の活躍が大きかったな!」
「清水君も頑張ってたでしょ」
私が言うと、拓海君は一瞬だけ口をつぐみ、それから笑った。
「まあな。でも、俺も頑張っただろ?」
「はいはい。そういうことにしておくよ」
直樹君が苦笑しながら返す。
私も笑いながらスコア画面を見つめた。
負けたのは悔しい。もう少しうまく投げられたら、直樹君と一緒に勝てたかもしれない。
「……もう一回やりたいな」
思わず口からこぼれた言葉に、三人がこちらを向いた。
「おっ、浅桜さん、やる気じゃん!」
拓海君が嬉しそうに声を上げた。
「次は負けないからね!」
私も思わず言い返していた。
言ってから、自分でも驚いた。
いつもの私なら、負けたことを笑ってごまかし、こんなふうに悔しがる姿を見せなかったかもしれない。けれど、今は不思議と気にならなかった。
拓海君が楽しそうに笑った。
「いいねえ! その意気だよ、浅桜さん!」
直樹君も穏やかに頷く。
「次は、僕たちのチームが勝ちましょう」
「うん!」
私は笑顔で答えた。
そのとき、清水君が少し驚いたような顔で私を見ていたことには、まだ気づいていなかった。
ボウリングを終えた私たちは、近くのファミリーレストランへ向かった。
席に案内されると、拓海君はメニューを広げながら、さっそく今日のゲームを振り返り始めた。
「いやあ、楽しかったな。清水もなかなかやるじゃん」
「そっちこそ、思ったよりうまかったですよ」
「思ったよりって何だよ!」
拓海君が大げさに抗議すると、清水君が笑った。
直樹君はメニューから顔を上げ、二人を見ながら小さくため息をついた。
「二人とも、さっきからずっとその話だな」
「だって勝ったんだから、喜んで当然だろ?」
「はいはい」
三人のやり取りを聞きながら、私はメニューを眺めていた。
何を頼もうかと考えているのに、なかなか決められない。普段ならすぐに決められるはずなのに、今日は妙に周りが気になってしまう。
「優里恵さん、決まりました?」
隣に座っていた清水君が、私の手元をちらりと見ながら尋ねた。
「ううん、もう少し考えようかなって」
「ゆっくり選んでいいですよ。僕もまだ決まってないので」
清水君がそう言ってメニューを開き直したので、私はほっとした。
しばらくして、それぞれ注文を済ませると、拓海君が私の方へ身を乗り出した。
「浅桜さんって、ボウリングは久しぶりだったの?」
「うん。子どもの頃に家族と行ったことはあるけど、最近は全然」
「そうなんだ。最初は緊張してる感じだったけど、途中からすごく楽しそうだったよな」
その言葉に、私は少しだけ照れくさくなった。
「……そう見えた?」
「うん。最後なんか、すごく悔しそうだったし」
「そ、それは……」
私は言葉に詰まった。
悔しかったのは本当だ。でも、最初は清水君の友達に失礼のないようにしようとか、ちゃんとした彼女だと思ってもらおうとか、余計なことばかり考えていた。
「……最初は、ちょっと緊張してたの」
私はメニューを閉じて、膝の上で両手を重ねた。
「清水君の友達だから、ちゃんとしなきゃって思って。変なことをしたらどうしようとか、失礼なことを言ったら嫌だなとか……」
話しているうちに、少し恥ずかしくなってきた。
「でも、みんなが普通に話しかけてくれたから、だんだん楽しくなってきて。それで、負けたら悔しくなっちゃった」
最後は思わず笑ってしまった。
直樹君は、私の話を聞いて穏やかな表情で頷いた。
「そうだったんですね。でも、気を遣ってくれてたのは分かりましたけど、無理にしっかりしようとしなくても大丈夫ですよ」
「え?」
「僕たちも、ただ一緒に遊びたかっただけですから。楽しんでくれるのが一番ですよ」
拓海君も、うんうんと頷いた。
「そうそう。最初からすごく丁寧に話してくれるから、こっちもちょっと緊張しちゃったくらいだしな」
「えっ、拓海君も?」
「そりゃ、清水の彼女だし。変に失礼なことを言ったら、あとで清水に文句を言われそうだろ?」
「お前、最初から失礼なことばかり言ってただろ」
清水君が呆れたように突っ込むと、拓海君は声を上げて笑った。
「まあ、それはそれ!」
その言葉に、私も思わず笑ってしまった。
私だけが緊張していたわけではなかったらしい。そう考えると、なんだか急に気持ちが楽になった。
「……ありがとう。次からは、もう少し普通にするね」
「はい。その方が僕たちも嬉しいです」
直樹君が笑顔で頷いた。
清水君も、隣で私を見ながら優しく笑っていた。
「僕も、今日の優里恵さんを見られてよかったです」
「え?」
「ボウリングで失敗したときは申し訳なさそうにしてたのに、途中からは本気で悔しがってましたよね。最後に『もう一回やりたい』って言ったときなんか、すごく楽しそうでした」
「……そ、そんなに?」
「はい」
清水君は少し照れくさそうに笑った。
「いつもの優里恵さんとは少し違うところが見られて、嬉しかったです」
その言葉を聞いた途端、頬が熱くなった。
清水君に、自分のそういうところを見られるのは恥ずかしい。でも、それを嬉しいと言ってもらえるのは、もっと嬉しかった。
「……もう。そういうこと、さらっと言わないでよ」
私が小さな声で抗議すると、清水君は困ったように笑った。
「すみません。でも、本当にそう思ったので」
「……うん」
私は照れ隠しに水のグラスへ手を伸ばした。
その様子を見ていた拓海君が、にやにやと笑い始める。
「いやあ、いいねえ。清水がそんなこと言うようになるとはなあ」
「お前、またそうやって……」
「だって、昔は女子と話すだけでも――」
「拓海!」
清水君が慌てて遮ったため、拓海君は楽しそうに声を立てて笑った。
「はいはい、分かったって!」
直樹君も笑いをこらえながら、拓海君の肩を軽く叩いた。
「その辺にしておけよ。清水が本気で困ってるだろ」
「へいへい」
そんなやり取りを見て、私はまた笑ってしまった。
清水君が友達といるときの顔は、二人きりのときとは少し違う。でも、どちらも清水君なのだ。
優しく接してくれるところも、友達にからかわれて慌てるところも、悔しそうにボウリングのスコアを見つめるところも。
知らなかった一面を見つけるたびに、清水君という人が少しずつ近くなっていくような気がした。
食事を終えた私たちは、会計を済ませて店を出た。
駅へ向かう途中、拓海君が手を振りながら言った。
「いやあ、今日は楽しかったな! また四人で遊ぼうぜ!」
「うん。私も楽しかった」
今度は、迷わず答えることができた。
「次はボウリングで勝つからね!」
「おっ、言ったな、浅桜さん! 次も勝つのは俺たちだからな!」
「その前に、次もチームが同じとは限らないだろ」
直樹君が冷静に指摘すると、拓海君は一瞬考え込み、それから笑った。
「じゃあ、次は個人戦でもいいぞ!」
「まだやるつもりなんだ……」
清水君が苦笑したので、私もつられて笑った。
駅に着くと、拓海君と直樹君はそれぞれ別の方向へ帰るため、改札の前で別れることになった。
「じゃあな、清水! 浅桜さんも、またな!」
「今日はありがとうございました。また遊びましょう」
直樹君も穏やかに笑い、二人は手を振って人波の中へ消えていった。
私と清水君は、同じ方向の電車に乗るため、並んで改札を通った。
さっきまで四人で賑やかに過ごしていたせいか、二人きりになると、少しだけ静かに感じる。
「……今日は、楽しかったですね」
清水君が私の方を向いて笑った。
「うん。最初はすごく緊張してたけど、思ってたよりずっと楽しかった」
「そう言ってもらえてよかったです」
「清水君の友達、二人ともいい人だね」
「はい。あいつらとは長い付き合いですから」
清水君は少し懐かしそうに目を細めた。
「優里恵さんが一緒に楽しんでくれて、僕も嬉しかったです」
「……私も、清水君と一緒に遊べて嬉しかったよ」
言い終えてから、私は少しだけ照れくさくなった。
今日は、清水君の友達に好かれようと考えるあまり、最初は少し頑張りすぎていた。
でも、実際に一緒に遊んでみたら、失敗しても笑ってもらえたし、悔しがっても一緒に盛り上がってくれた。最後には、もう一度遊びたいとまで思えた。
最初から、そんなふうに気楽に考えていればよかったのかもしれない。
「ねえ、清水君」
「はい?」
「次も、みんなで遊びに行こうね」
「もちろんです。また拓海たちに相談してみます」
「うん」
私は頷き、清水君の隣を歩いた。
そして、少しだけ迷ってから、そっと彼の手に自分の手を重ねた。
清水君が驚いたようにこちらを見たので、私は恥ずかしくなりながらも、小さく笑った。
「……今日は、ありがとう」
「こちらこそ、ありがとうございました」
清水君は優しく笑い、私の手を握り返してくれた。
清水君の友達と過ごした休日は、思っていた以上に楽しかった。
ちゃんとした彼女でいようと頑張らなくても、失敗しても、悔しがっても、一緒に笑ってくれる人たちがいる。
そして、その中には、私のそんな一面まで嬉しいと言ってくれる清水君がいる。
そう思うと、胸の奥が温かくなった。
これからは、清水君のことをもっと知っていくだけでなく、自分のことも、少しずつ知ってもらえたらいい。
そんなことを考えながら、私はつないだ手に、ほんの少しだけ力を込めた。




