episode.26 About the country, my escort, the devil race, and the devil race.
ミランさんに再会した日の夜、帰宅したカイン様に護衛を紹介されたわ。
「彼はシュヴァリエの影の1人でラルフ。彼には明日からロティの表の護衛について貰うことにしたんだ」
「初めまして、奥様。ラルフです。命をかけて奥様をお守り致します」
ほう…ラルフさんとやら、かなーりイケメン。
でも多分、普通の男性じゃないんだろうな…とエッタを見れば、サッと視線を逸らされたわ…!?
「初めまして、ラルフ。明日からお願いね。えっと、それで、貴方は男性、であってるのかしら?」
「え…?」
ポカンとしてしまったラルフ。
うん、どうやらミルカみたいな、女性かと思いきや実は男性だったパターンじゃなかったようね。
じゃあどんなドッキリがしかけられてるのかしら…と考えていたら、隣からカイン様の笑い声が。
「ぶはっ、ラルフもミルカみたいに、男性に見えて実は女性じゃないかって思ったんだ?」
「むぅ。だってカイン様がわたくしに一般的な男性を近寄らせるとは考えにくいですもの…う、自惚れだっていうのはわかってますのよ!?でも…」
「ふふふ。自惚れなんかじゃない。その通りだよ、ロティ。ラルフはね、人間じゃないんだ」
「あら、まぁ。そうですの?なら、魔族かしら?」
「「「えっ!?」」」
カイン様とラルフとセバスチャンの声が揃ったわ。
わたくし変なこと言ったかしら。
あ、そっか。
普通に生活してたら魔族となんて滅多に会わないんだったわ。
何でわたくしが驚かなかったかと言うと、実はヴァロワ侯爵家にも1人、魔族の従者がいるのよ。
この世界、さすが魔法があるだけあって、人族以外が住む領域があるの。
まぁ所謂、魔族領、ね。
魔族はパッと見はほぼ人間と変わらないけれど、中には肌の色が少し灰色っぽかったり、耳が尖ってたり、牙があったり、尻尾があったりする。
でも隠す魔法を習うらしいから、それを習得しちゃえば本当にわからないのよね。
だからわたくしは『ならこのどう見ても人間なラルフは魔族かしら』って思ったの。
人族と魔族は協定を結んでいるものの、魔族は美形が多いらしくて、たまに奴隷商なんかに捕まった魔族が人族に売られたりしてるって昔お父様に聞いたことがあるのだけれど…そんなお父様が騎士団に頼まれて協力して壊滅させた奴隷商(今考えれば他にも色々余罪があって、マフィア的な集団だったのだと思うわ)で保護した魔族の子を、お父様がヴァロワ侯爵家に引き取って、従者に育てたの。
だからエッタも知ってるわけで、今驚かなかったのよね。
「お、奥様、何故僕が魔族だって分かったんですか?」
「実はね、ヴァロワ侯爵家にお父様が引き取った魔族の従者がいるの。その子を紹介された時に両親から、お兄様と一緒に魔族について習ったの。だからどう見ても人族なのに人族じゃない種族なら、魔族か変身魔法の使える別の種族だってわかったの。でも魔族以外だと希少種だってシリウスが言っていたよね。だから魔族かしら?って思ったのよ。でも細かく習った訳じゃないから、ラルフが護衛をしてくれるなら復習しておくわね」
ぎゅむっ。
話し終えると同時に、カイン様に抱きしめられてスリスリされてるわ。
また知らないうちにカイン様のツボ?を突いていたらしいわね…相変わらず謎だけれど、嫌われるわけじゃないから気にしない!
「ロティ賢い。可愛い。差別しない所も最高。好き」
やだ、わたくしも。
「奥様、僕泣きそうですっっ」
え、どこかにラルフの感動ポイントあったのかしら。
「奥様はなんと、なんと心優しきかな!」
セバスチャンまで!?
優しきかなって、なんか古語っぽいわね。
「えーええと、ありがとうございます?」
「皆様、奥様が困ってらっしゃいますので、ひとまずリビングに移動をしては如何でしょうか」
エッタ、ありがとう!
実は半泣きの男性2人とカイン様の解かれない抱擁に、どうしようかしらって困ってたの!
リビングに移動して、セバスチャンがカイン様に用意してくれた簡単な食事がテーブルに並べられた。
「カイン様、先程の続きですが。ラルフが魔族だとどう安心なのですか?」
「ああ。ラルフは魔族の中でも同種しか伴侶に選ばない種族なんだよ。選べないって言った方が正しいか?」
「はい。僕の種族は同種にしか欲情しないんです」
ゴフッ。
あまりにもサラッと言うからワインを吹き出しかけたわ。
エッタ、ハンカチをありがとう、ごめんなさい。
「そ、そうなの。それは、大変ね?」
「いえ。僕はまだ60歳の子供なんで、特に焦ってる訳でもないですから」
「60歳で子供なの!?魔族って、凄いのね…色々」
「魔族は長寿だから、婚姻とかは100歳超えてかららしいよ」
「あら、まぁ」
「人族領にいる魔族は僕みたいな種族が殆どなのでほぼ安全だと思いますよ。リリンは基本的に魔族領を出れませんし、もし魔族領以外で見つかれば死刑ですから」
「リリンて確か…」
「えーと、人間の間では夢魔とか言われてる種族だね」
ああ!所謂あれね、サキュバスとかインキュバスの総称。
リリンが護衛は…うん、考えたくないわね。
「なるほど、理解しましたわ。改めて明日からよろしくお願いね、ラルフ」
「お任せ下さい!」
「ラルフ、さっきも簡単に話したけれど、例の庶子らには特に気をつけてくれ。緊急時には殺さない程度の武力行使も許可する」
「はいもちろんです!長の大事な大事な奥様ですからね!」
「えっ、武力行使って…大丈夫ですの?」
確かにカイン様もこの間、王子を魔法で吹っ飛ばしてましたけれど…。
「大丈夫だよ。その辺は陛下に許可を貰ってるし、そこまでしなきゃいけないようなのはどちらにせよ脱落だから」
あ、そっか。
言われてみればそうね。
むしろそんなアホは脱落してもらわなきゃ、国にとって良くないわよね。
うん、わたくしには関係ないわ、きっと。
「そういえばカイン様。ラルフは表の護衛と仰ってましたけれど、裏の護衛もいるという事で合っているかしら?」
「あ」
バツが悪そうなカイン様。
さっきは無意識に言っちゃったのね。
珍しくてちょっとカワイイわ、ふふ。
「エッタの話から表の護衛がミルカかと思っていたのですが、ラルフが表なら裏がミルカ辺りかと思ったのですけれど」
「ううん、私の奥さんは本当に賢くて可愛いなぁ。そう思うだろ?ラルフ」
溶けてるわ、カイン様の笑顔が溶けてるわ!
うぅ、眼福…っ!じゃなくて。
「はい、とても!尊敬します!」
ええぇ…まぁいいわ、とりあえず当たっていたのね。
「ロティの言う通り、ミルカだよ。裏はミルカ以外にあと2人増やしたから、安心してね」
「えっ、つまりわたくし1人に、エッタも入れて護衛5人て事ですの!?多くありません?ご迷惑では?」
「奥様、わたくしから宜しいですか」
バリトンボイスのセバスチャンが、恭しく頭を下げたわ…うーん、ナイスミドル。
「ええ、何かしらセバスチャン」
「もし奥様が国王陛下の庶子の手で大きな怪我でもなされれば、その庶子は旦那様にとっての敵となります。それはシュヴァリエが庶子の父である国王陛下、つまり国を見限るには十分な理由となり得る程の事なのです」
「…はい?」
え、まじか?
そこまでなの?
「奥様はそれほど、旦那様に愛されておいでなのです。勿論それは、わたくし共シュヴァリエの影の総意でもあります。ですので国王陛下にとっても、奥様をお守りする事こそ自国の暗部との繋がりを守る事となるのです」
お、おおぅ…わたくしいつの間にか、そんなにも大それた身分になっていたの…ちょっと身震いが。
チラリとカイン様のお顔を覗き見してみれば、あらまぁトロットロに溶けた笑顔で見られたわ…うん、怪我しないように気をつけよう、国のためにも。
さて、思わぬ事実を知ってしまったけれども、現実逃避ついでにミランさんの話をしましょう…。




