episode.24 Stolen magic tools and new possibilities.
ウィン・クラークの名前がウィル・クラークになってたので直しました。
エッタからお風呂で思わぬ話を聞いたわたくしは、湯上りのカイン様に顔を覗き込まれ、「大丈夫?」と聞かれるまで頭がショートしてしまっていて、いつの間にやら湯浴みどころか髪まで乾かし終え、いつでも寝れる!状態の自分に、かなりびっくりしたわ。
「わたくしったらボケっとして!ごめんなさい、大丈夫ですわ」
そう言っても心配顔が直らないカイン様にミルカの性別を聞いて驚愕したと話をして、漸くカイン様の心配顔が笑顔に戻ったの。
カイン様も「アレは驚くよね」と頷いていたから、やっぱりミルカは誰がどう見ても女性だと勘違いすると思うわ。間違い無い。
「そうだわ、カイン様。お聞きしたい事があって。あのぅ、メイジー様の処罰は決まりましたの?」
メイジーとはカイン様やキース王子に偽魅了魔法をかけたのに、残念ながらかけれなかったという、少し憐れな…たしか子爵令嬢。
「ああ…ははっ、今日まで特に聞かれなかったから、彼女はロティの中で消去したのかと思ってたよ」
図星に近いですわ…と言うかむしろ、先程までは確かに消去していましたわね…。
今日薄桃色のリンダさんを見たことで消去していたメイジーを思い出し、慌てて僅かな記憶を全て呼び戻した感じ、かしら。
「うぅ、恥ずかしながら先程まで記憶から消去しておりましたわ…今日ふいに思い出して、聞いてみたんですの」
「なるほど。そっか、ロティらしいね。彼女は今は神殿にいるよ」
えっ?神殿?
まさかウィン・クラーク様がメイジー様の毒牙…というか、偽魅了魔法にかかってしまい、自分の婚約者に据えた、とか…?
…いえ、自分で言って何だけれど、なんとなくそれはない気がするわ。
あの時のウィン様は多分、至って正常だった、はず!
それに、神徒様の息子だからって婚約者を神殿に連れてく必要も無いものね。
なら、理由は何かしら?
わたくしが答えに辿り着けずにいると、後ろから抱き着いてきたカイン様の顎がわたくしの頭に乗せられたのが分かった。
湯浴み後のカイン様は色気が5割増だから、こんなに近付かれると鼻血が出そうで逃げたい!
っていうか、カイン様のその色気を少しわたくしに分けてくれないかしら?
まぁ分けて貰えたとしても、増えた色気を感じて欲しい相手はそのカイン様なのだけど…って、何考えてるのよわたくし!?
「コホン。カ、カイン様、なぜ彼女が神殿に?」
わたくしが鼻血が出ないように鼻と口元を押さえつつ振り返ると、カイン様の甘ーーーい黒目が細くなって
色気がぶわり。
…はぁ、妻が自信無くす程の色気ですわ、旦那様。
カイン様は、思わず哀しみの溜息を零すわたくしを不思議そうに見つめながらも順を追って話してくれたわ。
色気は纏ったままで…っ!
「実はね、彼女が使ってた偽魅了魔法が魔道具によるものだったんだよ。それで、その魔道具が数年前に神殿の封印の間から盗まれた物だったらしくて。神徒様の息子で自身も神徒を目指しているウィンが、偶然彼女がその魔道具とそっくりな魔道具を持っているのを見て、きちんと確認して回収する為に2人の側にいる事にしたらしい。今回運良く魔道具を回収できたけれど、その魔道具を再び封印する必要があるんだ。だから処罰の一環として封印の為のイケニ…コホン、被験者として、メイジーが神殿に送られたんだ。あ、ちなみに宰相の息子はウィンの幼なじみで、元々一緒にいる事が多かったから、必然的に4人組の様に見えてたってのが真相だったよ」
なるほど、ウィン様と宰相子息様はメイジーの策略(?)には無関係で、狙いはメイジーではなく彼女が持っていた魔道具だった。
そしてそんな2人にも、メイジーの偽魅了は全く効果を発揮出来ていなかったらしい。
くっ、ある意味お花畑っ!
むしろ魅了出来た人はいたのかが気になるわ。
そんな憐れなメイジーは処罰でイケニエにされたと。
魔道具の封印なんて世間一般では知られていないから、わたくしもよく知らないのだけれど…イケニエって言っちゃう程の何かを必要とするのかしら…聞かない方が幸せな事もあるわよね、うん、きっと今回のコレがそうに違いない。
触らぬ闇に祟りなし!
「理解できましたわ。カイン様、ありがとうございます。…あのぅ、もうひとつ質問があるのですけれど」
「ん?なに?言って?」
「アレン元王子と居らっしゃったミラン様の現在のお住いはご存知ですか?」
「あぁ、あの目が痛くなる程桃色の」
カイン様がその『色味』を思い出したのか、少し顔が歪む…わからなくもありませんわ。
「そうです、目に優しくない桃色の方です」
「彼女なら、母親の実家の男爵領に戻った後に市井に働きに出てるって報告が来てたはずだけど」
「まぁ、あのミランさんが働きに?」
「うん。彼女がどうかした?」
わたくしにそう尋ねるカイン様は探る様な視線ではなく、少し心配そうな瞳。
それが嬉しくて、思わず口元が綻んでしまう。
信頼されてるって、幸せな事だわ。
「実は今日わたくしに声を掛けてきたお花畑王子の件で、ミランさんに聞きたい事がありますの。ミランさんはおそらく…わたくしと同じ転生者なのです。あと、お花畑王子も」
「え、まじか」
珍しく口調が崩れるカイン様にときめきつつ、わたくしは強く頷いた。
「まじですわ!」
「…なるほど。ミランにこの世界について何か知らないか聞きに行きたいんだね?」
さすがシュヴァリエの頭領カイン様!
頭の回転が早すぎて感動モノですわ!
「その通りですわ。ミランさんは何か別の物語が遊戯と勘違いされていた様なのですけれど、似た系統の物語等を好んでいらしたのならば、別のものでも思い当たるフシがあるかもしれないと思って」
「…ねぇ、ロティ。それって、俺のためって思っていい?」
え。
……はっ!!!!!
そうだわ、わたくし…。
前回のキース王子とメイジー様の時に『カイン様が攻略対象かと思って戦慄していた』のがバレてしまっていたのだわ…。
それなら今回もそうだって、即行でバレるのは当たり前じゃないのよ…!
ううぅ、恥ずかしい。
「…はい、その通りです…」
両手で顔を覆ったままのわたくしが観念して答えると、カイン様のわたくしを抱きしめる腕に力が入るのと同時に心地のいい声がわたくしの耳朶を掠める。
「あー、もう。すっごい嬉しい。ロティはこれ以上俺を惚れさせてどうしたいの?」
「えっ、えっと?」
どうしたいかなんて、聞かれてもわからないです!!
そもそもそんな事考えてませんでしたし!?
というか、耳元でカイン様のイケボはガチでマズイです!!
わたくしはいつもよりさらにご機嫌なカイン様に押し倒される寸前まで、頭の中でそんな事を盛大に叫んでいたのだけれど。
むしろカイン様こそわたくしをこれ以上惚れさせてどうしたいのですかっ!!
なんて、転生特典で『恥じらい』を貰った(と思いたい)わたくしに、言えるはずがないわよ…。




