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episode. 20 I'm not the royal family Hoi Hoi.


忽然と視界から消えたミニアレンを即行で記憶から消し去ったわたくしは、カイン様といつもの貸切サロンへ。


ソファに並んで座ったカイン様が、わたくしの手と腕に浄化魔法を3度もかけられたわ。

早く洗いたくてウズウズしていたから嬉しい。


その直後、「腕に傷が出来てるじゃないか!」と青筋を浮かべたカイン様に言われて腕を見てみれば、たしかに爪が刺さったような、引っ掻いたような、小さなかすり傷が。

あのド腐れミニアレン、かなり強く握ってきやがったから爪が刺さったのね…もうっ、腹が立つわ!

わたくしがプリプリと内心で毒を吐いていたら、カイン様が治癒を掛けてくれたのだけど、カイン様の後ろに鬼が見えたわ…いえ、鬼じゃなく般若かしら。


そんなカイン様の麗しいお口から「あんのクソガキ…俺のロティに傷を付けた落とし前、付けさせてやる…埋めるか…燃やすか…沈めるか」なんてブツブツ言う声聞こえたわ…沈めるって海にかしら?物騒!


とか言いつつ、可哀想とも思えないわたくし。

だって、物心付いた時…は生まれた時だから違うわね、ええと、7歳のお見合いパーティー以降ね。

あの時から何かと王家に絡まれてるのよ?わたくし。

ここまで来ると、なんだか自分がセスティア王族ホイホイになってる気分よ!

腹立つ!


「これで大丈夫だと思うけど、他に触られた所とか、痛い所とかない?」


「はい、大丈夫ですわ。ありがとうございます、カイン様」


「良かった」と満足気にわたくしの手を撫で、唇を落とすカイン様。

こういう、日本には無い触れ合い?ってやっぱり慣れなくて恥ずかしいわっ!


にしても、先程消し去った記憶を呼び戻すだけで、怖気が走ってトリハダが。

わたくし多分、アレ系統の顔というか、セスティア王族顔?が苦手みたい。

あれかしら、初めて会った王子の酷さに衝撃を受けたせいで、トラウマ?みたいになっているのかしら。

普通に見たら『キラキラしくて整った王子様顔ね〜』くらいには思える顔面レベルなはずなのだけれど、どうしてもアレン元王子のオレサマが頭を過ぎるのよね。

あ、でも王弟殿下だけはそんなに不快感は無いわね…性格も温厚で式典の時とかの学院長の挨拶も短いし、生徒にも慕われてるって聞くし、普段見慣れているからかしら。


「触られる前に駆けつけられなくてごめん…。ちょうどモニターで見てて慌てて転移したんだけど、間に合わなかったんだ。あ、あのクソガ…あー、ええと、男子生徒ね、監視対象だったんだよね。たったさっき脱落したけど」


カイン様、言い直さなくてもクソガキで良いと思いますわ。


「ええ、わたくしにはアインスの魔力は見えますから、監視の魔道具が付いている彼にはすぐに気付きましたの。それで慌てて知らん顔して逃げたのですけれど…運悪く捕まってしまったのですわ」


「うん、あのボケクソガキがロティがタイプだとか抜かしてたのを聞いた…もう一発ぶちかましとけば良かったな…」


クソガキからボケクソガキに進化したわ!


「ボケっ!?カ、カイン様、落ち着いて下さいませ。わたくしなら大丈夫ですわ!それよりも、あのアレン元王子のミニチュア版みたいな方、先程の事で王太子の道は絶たれたのですか?ならば今後はどうなるのです?」


「あぁ、うん。初めて会った異性にあんな態度を取る様な迂闊な馬鹿は必要ないから、脱落。さっき隣の校舎の屋上にいた部下に向けて魔法でぶっ飛ばしたから、そのまま回収させたけど、元々学院には通ってたから…再教育して復学か、自主退学かな。本人は自分の父親については何も知らないからね」


あ、やっぱりさっきのドゴーン!っていうのはカイン様だったのね。

殺さずにぶっ飛ばすなんて、さすがカイン様だわ!


さて、ミニアレンの父親というのはもちろん陛下の事よね?

で、本人は出自を知らないにも関わらず、あんなにアレン元王子に似てしまった、と。


王家の血、怖っ!


「そういえばカイン様、わたくし今日の音楽発表会で、ぷかぷかと浮く魔道具を7つ確認して…血の気が引いたのですが」


「あ!そうそう、俺も今朝聞かされてさ。その事を話そうと思ってたんだ」


「じゃあやはり、カイン様も知らなかったという事ですのね?」


そうよね、知っていたら話してくれていたはずだもの。


「うん。7人のうち、3人は一応貴族の養子になってて、元々学院の生徒で、その中の1人がさっきのアレね。で、残りの4人のうち2人は平民の母親の元で暮らしてて、残りの2人は下級貴族の家で使用人として働いてて、それぞれそこの領の学校にいたはずなんだけど…今朝来たら編入してたんだよ…ったく面倒なことを」


OMG!!


「ナ、ナゼソノヨウナコトニ」


思わずカタコトになるわたくし。

だって、今まで一方的に王子達に絡まれて来たんだもの…。


「多分陛下か宰相あたりが手を回したんだろうなぁ。選定するなら学力も必要だろうとか、そんな理由だと思うよ」


え。

いやいやいや、今まで平民の学校にいたのなら、学力に差があって当たり前ではなくて?

むしろ、突然貴族の多い学院に入れられたら困るのではないかしら。


わたくしが腕を組んで「むーん」と悩んでいると、ひょいっと膝に乗せられて、後ろから抱き締められた。


「ロティの考えてる事は間違いないと思うよ。監視対象だから、昨夜魔道具を付けて、部下にモニターで見張らせてたんだけどさ、今朝の報告の時、本人たちが突然編入とか言われてパニクってたって聞いたし」


「ですわよねぇ…。わたくし、国王陛下とお会いした事ないので、陛下がどれだけ優秀なのかは分かりませんけれど…あの元王子2人を見る限り、あまり学力はアテにならない様な気がしてしまいますわ」


「あー、あの脳足りん2人はねぇ…両親のダメな血統を見事に引いちゃったからねぇ。陛下はそれなりに頭は良いし、王妃も良いよ。でも陛下の叔父が物凄く勉強嫌いで、王妃の母親も同じく勉強嫌いだったんだよ」


あー…隔世遺伝的な?


「たしかに、王弟殿下は学院長をなさってるだけあって頭もよろしいと聞きますし、国王となった陛下がそれより頭が良いのは不思議ではありませんね…王子達のせいで信ぴょう性に欠けますが」


「はははっ、全くだね。今日帰ったら全員の学年と名前教えるから、ロティは近寄らないようにして」


「あ!それなら大丈夫ですわ。先程アインスに全員の名前と顔を調べてくれる様頼みましたの」


「顔も?アインスは似顔絵描けるの?」


「いえ、何年か前にヴァロワ家で作った魔道具の中に、風景を紙に映し出す魔道具を作っていたので、それを使うよう伝えたのですわ」


「そんな便利なのがあるの?」


「はい…でも少し便利過ぎて。商品化は怖くてしていませんの」


所謂カメラだけれど…なんだか便利過ぎて商品化するのを控えたのよね。

ビデオみたいな映像記録できる魔道具を売り出した時にものっ凄い売れちゃって、ちょっと怖くなっちゃって。

映像は停止できないし、ディスクじゃなくて魔石に記録するから、コピー出来ない上に量産もできないけれど、カメラだったら連写しちゃえばいいから…。

わたくしの作ったのは、インスタントカメラじゃなく、ポラロイドカメラなの。

異世界の知識を取り入れるのって、やっぱりちょっと怖いのよね…。


「あー、そっか、前世の記憶から作ったんだ?」


わたくしがこくりと頷くと、カイン様の腕に力が入った。


「わたくしが便利だからと作った魔道具のせいで、この世界が辿るはずだった未来が変わるかもと考えたら、怖いのです…。これからも、この世界の文明や歴史は、純粋なこの世界の者達の手で作るべきだと、そう思うのですわ」


「そうか…。うん、俺も歴史学者として、ロティの考えは正しいと思う。心配しなくても大丈夫だよ。ロティは自分でそういう判断が出来るし、流されたりしない強さもある。そうだろう?」


「そう、でしょうか?」


「そうだよ。でもロティ、それなら監視の魔道具とモニターは借りてよかったの?」


「あ、ええと、シュヴァリエの影の皆様なら、誰かにわたくしの作った魔道具を見せたりしないでしょう?なので全く問題ないのですわ。だから先程話した魔道具とか、他にも商品化していない便利魔道具も、シュヴァリエの影さんには使って頂いても問題ないのです。後々記録に残らなければいいのですわ」


「ロティ…、シュヴァリエや部下を信じてくれて、ありがとう」


「ふふ、今はわたくしもシュヴァリエですもの」


そしていずれは、わたくしも影になりたいわ!


なんて、のほほんとランチを過ごし、帰宅した日の夜。

アインスから報告が来たわ。


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