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episode.19 Someone want me to tell you it's a lie.


カイン様に監視用の魔道具をお渡ししてから2日後の今日。


今日は学院で音楽発表会があるの。

これは今年からの取り組みなのだけれど、わたくし歌うのは好きだけれど、楽器の演奏だけは壊滅的なのよ…。

前世でも、たまーにヒトカラなんてしていたけれど、楽器なんて授業でアコギを少し習ったくらいだし。

でも有難い事にこの発表会は自由参加だから、わたくしは勿論参加拒否で、ミーシャとソフィアも興味が無いらしくて参加しなかったから、今日は3人とも観客側。


「演目は何かしら」


ソフィアが準備中のステージに向けて首を傾げた。


「あ、パンフレットを貰ってきたから見てみましょ」


ミーシャがゴソゴソと取り出したパンフレットの表紙には、なんて言うか、オーケストラっぽい絵と、右下に丸で囲まれた有名な指揮者?の顔が描いてあって、上にはデカデカと『セスティア学院音楽発表会』って書いてあったわ。

これ、モロに前世の音楽会のポスターのパクリじゃないのよ…と、ちょっと笑ってしまったわ。

世界が変わっても、そういうセンスは誰でも近くなるのかしら。


「演目はシンドラの悲願、アウラの想い、の2曲みたい」


「あら!その2曲なら、さすがのわたくしも知っているわ!」


たしか、二柱を崇拝していた当時の神徒が作った曲だって、遺跡の本で読んだわ。


「ふふふ、ロティの場合はあれでしょ、遺跡の知識を学ぶついでに知ったとか、そんな感じでしょ」


「えっ、ソフィア、なんで分かったの!?」


「ロティの頭の中なんて、シュヴァリエ先生か遺跡しかないじゃない」


うっ!ミーシャまで!

図星過ぎて何も言い返せないわ!

恥ずかしくて赤くなった顔を手で扇いでいたら、視界の隅に『色々ゲットだぜ!をしそうな真っ黒な丸い玉』が見えて、わたくし思わずそちらに振り向いたのだけれど。


…ねぇ、ちょっと、うそでしょう…?


全校生徒が集まるこの場所で、『色々ゲットだぜ!をしそうな真っ黒な丸い玉』もとい監視用の魔道具が、きっちり7個、プカプカと浮いていたわ…。

あの魔道具、アインスの力のお陰で他人には見えないけれど、起動した本人(今回はカイン様か部下の誰かね)以外で、アインスの契約者であるわたくしにだけは見えるのよ。


まさか国王陛下の庶子7人が、この学院に居るとは…。

顔をきっちり覚えて、近寄らない用にしなきゃ!


「ロティ?」


胸の前で両手で握り拳を作ったわたくしを見て、ソフィアが心配そうにわたくしの名前を呼んだ。


「ごめんなさい、ちょっと考え事をしていただけなの」


「そう?先生も一緒に見れたら良かったのにね」


「え、ああ…うーん、それはどうかしら…カイン様、音楽は全て子守唄だから」


カイン様、音楽を聞くと秒で寝るのよね。

一度デートで歌姫のコンサートに行った時、開始直後に寝てたもの。

その時の寝顔がもう…悶えるほど可愛かったのよぉぉ!!!

わたくし歌姫そっちのけで、カイン様の寝顔鑑賞していたもの。


「そう言えばそんな事言っていたわね。あ、始まるみたいよ」


ミーシャの言葉につられて、ステージに目を向けたわたくし…なのだけれど。

視界にふよふよと浮かぶ監視用の魔道具が気になって、音楽発表会どころじゃなかったわ。




発表会を終えて、わたくし『お花摘みに行ってきますわ』と言って、演劇部の用具室にコソコソと入ったの。


「アインス」


『はいはーい!どしたの、ロティ』


「ねぇ、この間カイン様に渡した魔道具あるでしょう?あれの監視対象がね、全員学院の生徒らしいの」


『へぇ…ん?てことは国王の庶子が、全員学院にいるってこと?うわーカオスー』


カオスなんて言葉、教えたかしら?

まぁ、今はそれより。


「そうでしょうそうでしょう!わたくし、絶対関わり合いになりたくないから、全員の顔と名前を調べて欲しいの」


『なるほどね!任せて!顔は…追加で監視用の魔道具つける?』


「いえ、わたくしの実家の部屋の机の、一番下の引き出しの中に、これくらいの四角い魔道具があるのだけれど…わたくしが『カメラ』って呼んでいた魔道具よ、覚えてる?」


『ああ、うん!ボタンがついてて、押すと風景画みたいな紙が出てくるあれでしょ?なるほどね!じゃあ取りに行って、すぐに調査を始めるよ〜』


「ありがとう、アインス。出来たら今日中にお願い。大変なら、暇な子にお手伝い頼んでね」


『そうだね〜たしかヌルが暇死するとか言ってたから、手伝ってもらうよ!』


その後、用具室からそろりと出たわたくしは、何食わぬ顔で教室へ戻ったわ。



その日のランチタイム。

今日は午前中に音楽会で午後はお休みなのだけれど、カイン様は教師の仕事があるから、ランチだけ一緒に食べてから帰るつもりでいたの。

ソフィアとミーシャに「また明日ね!」と手を振ったわたくしはサロンへ向かって歩き出したのだけれど。


トコトコと廊下を歩いていたわたくしの視界に、ふよふよと浮かぶ玉が見えて、危険信号が脳内に木霊したわ!

思わずクルッと踵を返したわたくしの後ろに、人の近付く気配がした。


「ねぇ!君!」


後ろから何やら声がしたけれど、わたくし、急いでいるので。


「ねぇったら!」


わたくしの事じゃないはずよ、そうに決まっているわ。

そうであれ。


「ふわふわ髪の女神、君の事だよ!ねぇ!」


なんだよそのよく分からん褒め言葉は!?

いえ、わたくしの事じゃないから怒る必要は無いわ!

それよりも、ここからサロンへ行くにはどこが近道だったかしら?

えーっと、あそこの階段を登って…。


「ねぇ!」


ガシッと後ろから腕を捕まれたわたくし…秒で怒りが湧いて振り返ったの。


「やっとこっちを見てくれたね!ねぇ、一緒にランチを食べよう」


金髪碧眼のキラキラしい…少し童顔のアレン元王子を小さくした様な…ミニアレンな男子生徒が、人懐っこい笑顔でそんな事を宣った。

案の定、彼にはわたくしの監視用の魔道具がついている。

コイツ、顔だけでも即行でアレと血族だって分かるわね!

それにこの、オレサマ的な態度も、そっくりだわ!

つーか、腕痛いから離してくれるかしら!?


「お断り致しますわ」


「えっ、なんで?」


まさか断られるとは思ってもみなかったのか、キョトンとする…名前も知らない生徒。


「わたくし、貴方と知り合いでもなんでもありませんし。それにわたくし、勝手に女性に触れる男性とか、大っ嫌いですの」


わたくしの腕を掴んだままのミニアレンの手を見ながら言えば、慌ててその手を離し…たのかと思えば、何故か両手を握られた…。


「そんなこと言わないでさぁ、君って僕のタイプなんだよね!」


攻撃魔法、ぶち込んでもいいかしら。

火がいい?いえ、周りの被害を減らすために雷がいいかしら。

氷で固めるのもありね。


キレそうになっていたわたくしの後ろから、突然「ロティ」とわたくしを呼ぶ大好きな声がしたの。


わたくしが、カイン様だわ!と気付き、かなり強引にミニアレンの手を振り解いて後ろを振り返った瞬間、ドゴーン!と物騒な音がして、「ん?」とミニアレンを見てみたら、既にそこにその姿は無く。


何やら魔法が放たれた跡だけがあったわ…。


「ロティ、大丈夫だった?」


ぎゅうっと抱き締められたわたくしは、腕の中でこくりと頷いた。


「はい、怖いとかは無かったので!ただ気持ち悪くてイライラはしましたけど!」


ぶふっ、と吹き出すような笑い声がして、周りを見渡せば…あら嫌だわ、かなり大勢に見られていたわ…!


「皆様、お騒がせ致しましたわ!」


カイン様の腕の中からするりと脱出したわたくしは、周りにいた生徒達に頭を下げたわ。

でも、「助けたかったのだけれど怖くて!ごめんなさい」とか、「ハッキリと仰っていてかっこよかったですわ!」とか、「さすがシュヴァリエ先生の奥様だなぁと感心してしまって助け損ねました」とか…嬉しいような恥ずかしいような微妙な言葉を頂き、ひとまずはホッとしました。


「騒がせて申し訳ない。さ、ロティ、行こうか?」


カイン様曰く『教師の仮面』らしい笑顔を貼り付けたカイン様にエスコートされ、わたくしはようやくサロンへと移動したの。


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― 新着の感想 ―
[一言] 王様の遺伝子ってこんなのばっかりか? 大丈夫かこの国w 脱落した王子二人にこのナンパ氏が加わると残り6人。 誰かまともな奴いるのかな?
[良い点] 旦那様頼りになり過ぎて惚れてしまいそうです。
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