episode.18 The king was also young at that time.
「そこ、とは」
カイン様の仰る『そこ』って、次の王太子が誰がって所?よね?
キース王子はおツムがアレだけれど、他に居ないからって理由で、これまでは廃嫡されずに残っていたけれど、カイン様はその話をしてくれた時に『王弟殿下が継げばいいのに』って仰っていたはず。
うん、何とか覚えていたわ。
わたくしの王族嫌いの脳味噌が、勝手に記憶消去していなくて良かったわ。
とは言っても、カイン様が何にお悩みなのかは見当もつかないわね…。
「もう王弟殿下でいいよねぇ〜…はぁぁぁぁぁ」
またもや盛大な溜息を零しているカイン様の、愁いのあるご尊顔…いや、もうホント、鼻血モノです!ご馳走様です!
と、脳内で不謹慎に鼻血を出している場合ではないわね。
…ん?
…ちょっと待って?
『王弟殿下でいいよね』って仰いました?
まさか、まさか…?
「国王に隠し子でもおりましたか?」
頭に過ぎった事柄を、オブラートに包む気もなく、サラリと尋ねたわたくし。
そしたら、わたくしの肩におでこを乗せていたカイン様が、ガバッと頭を上げたのよ…。
その黒曜石の様な瞳が『よく分かったね?』と言っているわ…。
おおう、マジかぁ、そりゃ溜息つきたくもなるわね…。
…でも、カイン様なら、前から国王のそういうアレも把握してそうなものよね?
なんてったって影の頭領だもの。
「カイン様のことですから、国王の隠し子?庶子?の存在自体は把握されていたのでしょうし、溜息の理由は庶子の存在というより、どう公表するか…または、王妃様の事とか、かし、ら………あ」
待つのよシャーロット…。
国王があの王子達の製造元と考えると、隠し子が1人とは限らないんじゃない?
うん、これは確信に近い。
本当に厄介な王家ね!
カイン様に迷惑をかけない範囲にして欲しいわ!
じゃないとカイン様のご帰宅が遅くなるのよ!
うむむむ。
「カイン様を悩ませている国王の庶子とやらは、何人いらっしゃるんですの?」
もはや確定と言わんばかりに尋ねると、見開いた黒目をぱちくりとさせたカイン様に、ぎゅむっと抱き締められたわっ!
あぁ、カイン様の匂い、好き。
じゃなくて、抱き締められるポイントが謎だわ!
「ああ、もう…ロティってホント、怖いくらい俺の理想の女性だよね」
「え??」
なぜわたくしの質問の答えが、蜂蜜より甘そうな笑顔での褒め殺しなのかしらっ!?
脳内で会ったこともない国王を罵っていたとか、言えませんわ!!
「ロティの想像通り、国王の庶子は1人じゃない。で、その隠し子達はアレン元王子やキース王子よりは優秀なんだけど…公表はしていないし、王妃も認めていない」
「なるほど…。でも実際問題、王妃様の実子が2人共北の塔行きとなりますと、王弟殿下か隠し子の誰かしかありませんわよね?」
「そうなんだよね」
「それで、カイン様に与えられた任務は何ですの?その疲れきったご様子を見るに、厄介な任務なのでしょう?」
「どの隠し子が王の器があるか調べろってさ」
「…な、なるほど。陛下も2人の王子のやらかしで学んだ、と言うことなのかしら…」
「たぶん、そんなとこだと思う。まぁ、任務自体は殆ど部下に割り振るからいいけど…明日から帰りが遅くなりそうで、ロティと過ごす時間が減る…泣きたい」
あら…しょんぼり顔のカイン様があまりに可愛くて、ちょっときゅんてしちゃったわ!
にしても、学院で会えるとはいえ、わたくしも寂しい。
もう!わたくし王族に迷惑をかけられる呪いにでもかかってるのかしら!?
「そうなのですか。わたくしも寂しいですが…部下の方達だけに任せる訳にはいきませんものね…」
「そうなんだよね。1人につき2人の部下を付けて7日間調査して、それを精査した後、また候補を絞る感じかな」
「あの…先程さらっと流されましたけど、そこまで絞る程の隠し子がいるのですか!?何人ですの!?」
「…7人」
「…」
…まさかの人数に、思わずわたくしの片眉がピクっと上がって、口角がヒクッとなったわ。
…どんだけだよ!
しかもそれ、王子だけの人数ですわよね!?
王女も入れたら…マジでどんだけだよ!
この国の王族、カイン様とジャパニーズニンジャ達というか、シュヴァリエ家に苦労かけすぎだろ!
「…もう、王弟殿下でよくありませんか」
思わず遠い目で呟くわたくし。
「…俺もそう思う」
むー、せめて何かお手伝いが出来れば…あ。
カイン様のソフトマッチョな胸に預けていた体をガバッと起こしたわたくしに、びっくりした顔のカイン様がこてんと首を傾げる。
その、こてん、て傾げるのやめてぇ!可愛いかよ!
コホン。
「カイン様、いいものがありますわ!アインス!」
わたくしが闇精霊のアインスを呼ぶと、黒い煙と共にアインスが現れたの。
この煙、ネコ型のバスとか出てくる某国民的映画の黒いワサワサしたアレに似てるのよね…可愛い…。
『呼んだ〜?あれ、カインもいるじゃーん。やっほ』
「ああ、うん、久しぶり。アインス」
「アインス!アインスに預けていた監視の魔道具とモニターを出して下さいませ」
「監視の魔道具?」
『おっけ〜、何個?』
「7個…いえ、14個で。モニターは2個」
アインスの小さな手からわたくしのスカートの上にポロポロと、色々ゲットだぜ!をしそうな真っ黒な丸い玉が14個と、テーブルにモニターが2つ出てきたわ。
その1つを、カイン様が手に取って眺めてる。
「ロティ、これは?」
「これは監視用の魔道具ですの。ターゲットを決めて一度起動すると、3日程監視し続けます。アインスの闇の魔力が入っているので、起動すると見えなくなりますの。この魔道具から、このモニターに映像が送られてきます。これを隠し子達に付ければ、だいぶ楽かと」
昔一度、ヴァロワ侯爵邸に勇気のある泥棒が入った事があって、監視カメラ的なのが欲しくて作ったのだけれど、それを改良してメイジーだったかしら?あのピンクに付けたのよね。
最近まで使っていたのに、すっかり忘れていたわね、コレ。
『便利だよぉ〜コレ』
「凄いな、ロティ作?あ、クロス名義か」
カイン様には魔道具を売る時の『クロス・セガール』名義も話してあるわ。
「そうですわ。個人的に使うために作ったので商品化はしておりませんけれど、もし使い勝手が良ければ、今後も使って下さいませ」
「やっぱり俺の奥さん、最強だなぁ。ありがとう、ロティ」
「お役に立てたら嬉しいですわ」
こめかみに唇をちゅっとあてられて、恥ずかしいけど、嬉しい。
わたくしもシュヴァリエ家に嫁に来たからには、何かしたいもの!
「役立つなんてものじゃないよ。部下も楽になるし、かなり助かると思う。それにその都度報告を受けなくていいから、早く帰ってロティを堪能出来る」
たっ、堪能って…!
「よ、良かったですわ」
「…ロティは嬉しくない?」
だからぁー!頭、こてん、てしないでぇー!
「うっ、嬉しいに決まってます…!」
顔が赤いのを自覚して両頬を触れば、やっぱりあっつい。
「ふふっ、可愛い。エッタ、お風呂よろしく」
「既に沸かしております」
ちょっ!?
「エッタ!いつの間にいたの!?」
エッタ、気配!
もうちょっと気配を出して!
「5分程前からでございますね。おふたりでお入りに?」
「うん。さ、ロティ、行こうか」
「えっ、ちょ、カイン様!ええぇぇ」
リビングに来た時同様に、わたくしをお姫様抱っこして浴室へスタスタと向かうカイン様に、しがみつきながら抗議したけれども、全て徒労に終わりましたわ…。




