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episode.13 Kansai dialect because of jealousy.




そんなこんなで紆余曲折ありつつも、なんとか前世の記憶と、編入生に対するわたくしの不安を、カイン様に話し終えたのは、日が傾き始めた頃だった。


「…前世のロティは、結婚していたの?」


カイン様、真っ先に突っ込む所はそこではないのではなくて…?


「い、いいえ、独身でしたわ」


「恋人は?」


「ええと、何人かお付き合いした方はおりましたわ。最後の方は過労死する1年前に別れましたわね」


「何人か…」


なぜかしら、カイン様の口調はいつも通りなのに、纏うオーラがドス黒いわ…。


「あの、カイン様?」


「そのうちの誰かと…寝た?」


寝たって…あれよね、同じお布団でおやすみなさい、ではなくて、男女のアレコレ、よね?


「ええと…その…………はい…」


気まずすぎて俯いてしまうわたくし。

だって、カイン様には嘘はつきたくなかったんだもの…。


ゴンッ


「はへっ!?」


なんの音かと顔を上げてみれば、テーブルに頭を打ち付けたのか、おでこをテーブルにくっつけているカイン様…ええっ!?


「カイン様!カイン様のおでこが!」


「…ごめん、ちょっと嫉妬でおかしくなりそうだった」


顔も知らないのに!?…って、あら?

考えてみたら、わたくしも顔を思い出せないわ…?

どんな顔だったかしら…数人とお付き合いしたはずだし、何人かとはそういう関係になったはずなのに…恋人とのあれやこれやも、誰一人思い出せないわ?


「カイン様、あの…今考えてみたら、わたくし、前世でお付き合いした方のお顔やお声を、誰一人思い出せませんでしたわ。所詮、その程度だったのだと思います。最後の方と別れた理由も、わたくしがデートよりも睡眠と休養を欲していて、デートをキャンセルし過ぎたせいですし」


「そっか。ごめん…どうしようも無いのは分かってるのに、そいつらに嫉妬した。ロティがその男共を愛していなかったなら大丈夫…耐える…なんとか…頑張る…」


耐えるとか、頑張るとか…か、可愛いすぎか!!!


コホン。


「わたくし、前世を含めても、心から愛したのはカイン様だけですわ。それに、そのぅ…あの行為を思い出そうとしてみたのですけど…全く思い出せませんでした!」


相手の顔を思い出せない時点でお察しよね。

『した』っていう記憶はあるのに、内容をサッパリ思い出せないのよ。

どうってことなかったのかしらね!

あははははは…って、なんだかわたくし悪女みたいじゃない?

違うわ!違うのよ!


「それは…本当?」


「はい!本当の本当に、今思い出そうとしたら、すっかりさっぱり忘れておりましたわ!したという事実のみ存在しておりますが、どうやったのか、全く思い出せませんわ!」


「したという事実…」


「うっ…!あの、その!カイン様はキスだけで、わたくしは幸せ過ぎて死にそうになりますけれど…えっと!思い出せなくても、そんなキスはされた事がないっていうのは分かりますの!それに、夜の…その…あれも、えっと…カイン様みたいに、す、凄いなら、きっと覚えてますもの…だから…」


ぎゅう。

抱きしめられるのは嬉しいのですが、鼻が潰れそうですわ、カイン様。


「ありがとう、ロティ。出来るなら今すぐ食べちゃいたいくらい嬉しい」


「た、食べっ!?うぅ…わたくし、恥ずかしい事をつらつらと…もう…本当に穴があったら入りたいですわ…」


「…ん?穴があったら、なに?」


「あぁ、ええと、前世の世界の言葉ですわ…恥ずかしすぎてどこかに隠れてしまいたい、という例えの言葉ですわ…」


なぜわたくしは『穴があったら入りたい』の説明をしているのかしら。


「ああ!なるほど、わかりやすい例えだね。面白い」


「えっと、カイン様?わたくしの前世の記憶云々は、信じて頂けますの?」


「うん、もちろん。ロティが俺に嘘つかないのは分かってるから。それにしても…なるほど、あの編入生がね…」


呆気なく、信じてくれたカイン様。

もう…好き。

じゃなくて!そうよ、編入生。


「前世で読んだ小説などから得た知識ですが、魅了魔法を使うヒロインですとか、逆ハー…ええと、男性数人を侍らせる事を目的にするヒロインとかがおりまして、基本のターゲットは、王族…学院ですと、キース王子ですわね。あとは宰相の息子、魔法省の息子…はお兄様だから大丈夫ね…あとは神殿の神徒様の息子、他国の王家からの留学生、隠しキャラ的位置づけで教師…などがありますの。ですから、わたくし…怖くて…」


「なるほど…もしかして、俺がそのターゲットの1人かもしれないって不安になってたの?」


わたくしがこくりと頷くと、カイン様の大きな手が、私の頭をぽんぽんと優しく撫でた。

伏せていた瞼を上げれば、何故かとても嬉しそうなカイン様がいる。

思わず困惑した顔で首を傾げると、さらに嬉しそうに笑うカイン様。なぜ。


「ふふ、ごめん。あんなにあからさまに元気が無かった理由が俺だったってことが、嬉しくて」


とたんにカーッと赤くなったわたくしは両手で顔を覆ってしまう。

確かにっ、確かにその通りなのですけどっっ!


「うぅ、恥ずかしい…」


「大丈夫、恥ずかしがってるロティも可愛いよ。…ねぇロティ、さっき言っていた魅了魔法って、この国で禁止されている魅了魔法と同じ?」


恥じらうわたくしをサラッと褒めそやしつつ、カイン様がそう問いかけてきた。


「え、ええ。確かこの国の魅了魔法は、相手に自分を好きだと思い込ませる魔法で、少しでも自分に好意があれば即座にかかるけれど、全く好意がなく、なおかつ真に愛する者がいる場合はかからない…でしたわよね?おそらく同じだと思いますわ」


「なら、全く心配しなくていいじゃないか。俺には真に愛するロティがいるんだから。ね?」


カイン様がわたくしの顔を覗き込むようにしながら、キッパリと言い切った。

やだ、嬉しい。

しかも、ね?って言いながら首をちょっと傾げた。

やだ、可愛い。


好き。

もう、本当に好き。

とにかく好き。


今わたくしの語彙が『好き』以外全て吹っ飛んだわ。


「カイン様」


「うん?」


「大好きです」


「俺もだよ、愛してる」


カイン様はわたくしの頬にそっと手を添え、口付けをした後、中身年齢的にはこっ恥ずかしすぎるお姫様抱っこで、隣室…夫婦の寝室につれこまれた。




コト…の後。

カイン様が重ねた枕に背を預けて、膝の上に乗せられたわたくしの頭を撫でながら「なるほどなぁ…」と呟かれた。

実はわたくし好みのソフトマッチョのカイン様の、さらけ出された上半身…最高過ぎて鼻血モノだわ…じゃなくて。


「どうなさいました?」


「あ、うん。例の編入生の事なんだけどね」


『編入生』という単語にあからさまにびくりと反応したわたくしは、ごくりと喉をならした。


「あ、大丈夫、心配するような事じゃない…無いよな?いや、どうなんだ?いや、俺なら嫌だな。…あのねロティ」


初めは笑顔だったカイン様のお顔が、段々と歪んでいく。

それを見ていたわたくしは、編入生との間に何かあったのかと戦慄しながら、名前を呼ばれて恐る恐る答えた。


「は、はい…」


「例の編入生ってね、頭悪いんだよ」


「………はい?」


わたくし、何を言われるのかと恐々としておりましたのに、頭が悪い、とは。


「いや、何が言いたいかというと、彼女は俺の受け持ちのクラスじゃないんだ」


へっ?そうなの?

…確かによく考えてみれば、歴史学の教師はカイン様以外にあと3人いて、カイン様はどの学年でも成績優秀者のいるクラスのみを受け持っている…という事は、頭のよろしくないらしい編入生のいるクラスは、カイン様が受け持つはずが無い。


「気付いた?」


わたくしの表情で考えを悟ったのか、カイン様がそう言ってふわりと笑う。

それを見てわたくしはこくりと頷いた。


「だからね、ロティの『関わらないで』っていうお願いは普通なら簡単に叶えられるんだけど…向こうがやたらと俺に関わって来ようとしている…ような気がする。あれはそういう事だったのかな、とね。まぁ俺自身、編入生に全く興味無かったから、ロティの話を聞いて改めて考えてみて気付いたんだけどね」


なんですって…?

わたくしのカイン様に…?

自分の教科担当でもないのに関わろうと…?

わたくしのカイン様に…!?

何してくれてんねん!?

舐めとんのかコルァ!!

いてまうぞこのクソ猛禽類が!!


前世のわたくしはひと所に落ち着けないたちで、数年置きに各地を転々としていたのだけれど、ナマの関西弁を聞ける様な土地には住んだことが無かった。

そして死んだ時は東京に2年くらい住んでいたわたくし。

なのに何故か若干の関西弁で怒りに猛りながら、無意識に低い声で問いかけていた。


「…その時の彼女は、猛禽類のようでしたか」


「え、猛禽類?…って、ロティ、もしかして嫉妬してる?」


カイン様に言われて気付くわたくし…えぇ、これは間違いなく嫉妬だわ…。

それはもう、何故か関西弁になる程には嫉妬してますわ。

でも、だって、仕方ないじゃありませんの!


「嫉妬してはいけませんか」


子供っぽいとは自覚しつつも、頬を膨らませてそんな可愛くないことを言うと、頭の上から「ふっ、ふふ」という、とても嬉しそうな笑い声が聞こえてきた。

何がそんなに嬉しいのですか!と声を上げようとカイン様を見れば。

カイン様は、それはそれは蕩けた顔でわたくしを見下ろしていた。


「ごめん、俺はロティに愛されてるんだなぁと思ったら、凄く嬉しくて。それに嫉妬してるロティは初めて見たけど」


カイン様はそこで言葉を区切ると、わたくしに覆い被さる体勢になってから頬にちゅっとキスをして、耳元で「可愛すぎ」と甘い声で囁いたの…。

同時にあれ程猛っていた気持ちもふっと落ち着き…逆に羞恥で真っ赤になった事を自覚する。

何コレ…わたくしを羞恥死に…いえ、幸せ死にさせる気かしら!?


「ははっ、顔真っ赤でほんと可愛い。その顔、俺以外に見せちゃダメだからね?」


「なっ…み、見せるわけがありませんわっ!それにわたくしにこんな恥ずかしい思いをさせるのはカイン様だけですもの!他の方に見せようとしても無理ですわ!」


「うん、そうだね…ロティのその顔は俺だけのものだ。じゃあもっと恥ずかしい顔を見せてもらおうかな」


「…え?ちょ、まっ…んっ」


途端に唇が塞がれ、先程終わったはずのコトがまた始まった。

カ、カイン様、わたくし既に腰が立たないのですけれど!?

せめて治癒魔法をかけてからにしてくださいまし!!



と、わたくしの前世の記憶云々の告白は大した事もなく終え、カイン様のいつものペースに流されて、目が覚めれば朝でした。


うん、今日もいい天気。



って…あれ?編入生についての話はどこへ…?


3話連続ででろ甘な内容が続くなんて…予定外!


元々1話6000文字位で分けてた文章を、3500~4500で分け直した所、3話連続で書いたみたいになって恥ずかしい!!

穴があったら(略)

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