5.剣士オリビエ
なんなの!あの勇者は!
弱いのは、まだいい!
私の方が勇者より強くても、仕方がない。
でも魔王城まで来て、まさかの寝返りなんて!!
確かに女好きとは思っていました。
パーティメンバー全員に声をかけてたし、しまいには町娘までナンパして......。
魔王城まで来たときは、珍しく勇者らしいと思っていたのに、魔王の色香に惑わされて、私たち仲間を裏切るなんて......。
聖女イリーナはめちゃめちゃ怒っています。
勇者の話になると、周辺の空気が凍り付くくらい。
魔女ウルスラは、
「筋金入りの女好きだねぇ」
なんてあきれているし、弓士エリスも同意見なのか、うなずいています。
ああ、陛下への報告をどうしよう。
まず騎士団長への報告が先だけど、ウルスラかエリス、一緒に行ってくれないかしら。
イリーナは神殿に報告に行くでしょうし、ウルスラなら、魔術師団への報告のついでに付き合ってくれるかもしれない。
さすがに私も『勇者アルクは、魔王の色香に惑わされて、寝返りました。』と報告するのは、気まずいです。
この顛末を報告したら、騎士団長も頭から湯気を吹き出しそう。
魔王城までたどり着きながら、何もせず帰還してしまった。
そんなパーティの一員だったなんて、汚点でしかない。
これからの出世も見込めないな。
女性騎士初の魔王討伐達成のはずが......。
エリスは、早々に冒険者ギルドに向かってしまいました。
ウルスラは、報告に付き合ってくれるといいます。
「アルクは、何かやらかしそうな気がしたんだ。
私たちをおとりにして、敵前逃亡とかね。
寝返りまでは、想像しなかったよ。
ある意味、大物だね」
と笑っていました。
「笑い事じゃないでしょう。」
「笑うしかないだろう?」
私も少し気持ちが落ち着いて、苦笑いできるようになりました。
国王陛下への報告では、陛下が絶句していましたが、この前代未聞の不祥事は
なかったことになりました。
勇者アルクは魔王城へ到達する寸前、魔族に襲われ、行方不明になった。
ということになりました。
当分、勇者が選ばれることはないでしょう。




