弓士エリス
私は、エルフの弓士、エリスだ。
友人ウルスラの紹介で、勇者パーティのメンバーになった。
勇者パーティに参加するのは、久しぶりだ。
何十年前のことだったか......。
今回の勇者は、一言で言って、弱い。
今まで会った勇者の中で、最弱ではないだろうか。
素早さと運だけが、勇者らしいぐらいだ。
魔王城に来るまでの戦闘でも、主におとり役だった。
攻撃では、まるで役に立たない。
そのくせ女には目がない。
パーティメンバーのイレーナ、オリビエ以外にも、ウルスラや私にまで声をかけてきた。
私たちがお前の何倍生きていると思っている。
年下は問題外なので相手にしなかったら、その辺の町娘とかにもナンパしている。
短命種というのは、子孫を残すことばかり考える。理解できない。
そんな勇者パーティでも、運よく魔王城までたどり着いた。
遠目でも玉座の間の魔王が途轍もなく、強いことがわかる。
強大な魔力、肌がひりつく。
「魔王は、女だ。しかし、とんでもない魔力だ。
強いぞ。」
私が言うと、突然アルクがまず自分が一人で行くと言い出した。
何を言っている?!
お前なんか、瞬殺だぞ。
「魔王は、ものすごく強そうだ。
全員で行ったら全滅するかもしれない。
だからまず俺一人で行く。
もしかしたら平和的な話し合いを出来るかもしれないし。
だから少し離れた、もしもの時は逃げられる位置で見守ってほしい。
逃げるときは、俺のこと見捨てていいから。
俺、逃げ足だけは自信あるし。」
平和的な話し合いなんて無理だろう!!
そもそも討伐に来ているんだし!
そう言おうとしたら、ウルスラが目くばせをしてきた。
取りあえず、黙る。
「アルクの好きにさせな。」
ウルスラの口元は笑っている。
何かある。私は察し、成り行きを見守ることにした。
「アルクの言う通り、全員で行って全滅ってのは、ごめんだね。
ここで様子をうかがっているよ。
いざ逃げるときには、隙をついてあんたが逃げられるよう、大きな魔法を放ってやるから、その間に逃げるといい。
うまくやりなよ。」
イレーナは、黙ったままで何か考えているようだし、オリビエは初めての勇者っぽい言動に感動している。
「それじゃ、行ってくる!」
勇者アルクは我々に背を向け、玉座の魔王の方へ進んでいった。
「エリス、ここからでも魔王とアルクの会話は、読唇術で読み取れる?」
ウルスラの問いに答える。
「魔王は見えるけど、アルクは向こうを向いているから、無理かな。」
「じゃあ、魔王の言葉だけ、皆に伝えておくれ。
ここでしばらく様子を見よう。」
見ると、アルクは魔王の前までたどり着いていた。
何か話し出した。
『お前が今度の勇者か。何のために魔王城に来た?』
『友好親善?あいにく私はその言葉が大っ嫌いでね。虫唾が走る。』
『......私が美しいのは十分認識している。お前に言われるまでもない。』
『側においてほしい?......何を言っているのだ?!お前は勇者であろう?
使命はどうした? そんなものどうでもよいと。
あきれた勇者だな。
仲間はどうする?置いてきたから問題ない?』
「あれを置いて、撤退しましょう!!今すぐ!!」
聖女イレーナの冷たい怒りを感じた。
皆に異存はない。
我々勇者パーティ女性陣は、勇者アルクを魔王城に残し、王都に向けて帰還することになった。
それぞれの怒りやあきれを胸に、私たちは王都への帰路についた。




