魔王カルラ
近頃私は、機嫌が悪い。
それというのも人族の国が、勝手に勇者だの聖女だのを送り込んでくるからだ。
少し前に、シアサーテ国から友好親善大使として自動人形の勇者が来て、散々魔族国内をひっかきまわした。
シアサーテ国王に文句を言ったら、今度は自動人形の聖女が来て、迷惑が二倍になった。
禁呪『時を止める魔法』まで使って、その自動人形を停止させたが、それ以来、人族の友好親善とやらは、信用しないことにしている。
大量の魔力を使ったので、未だに本調子ではない。
自動人形を停止させ、やれやれと思っていたら、今度はヤノアサーテ国の勇者パーティがやってきた。
勇者は一人で、玉座の前までやってきた。
魔眼で、勇者のパラメータを見てみる。
......弱い。
今までに魔王城までたどり着いた勇者の中でも最弱ではないか?
よくここまで来られたものだ。
「お前が今度の勇者か。何のために魔王城に来た?」
「友好親善のためです。ぜひ我がヤノアサーテ国と国交を開きましょう。」
「友好親善?あいにく私はその言葉が大っ嫌いでね。虫唾が走る。」
「あなたのように美しい人は見たことがありません。ぜひぜひお近づきになりたい!」
「......私が美しいのは十分認識している。お前に言われるまでもない。」
「一目見て、あなたが俺の運命の人だと思いました。どうかお側に置いてください。」
「側に置いてほしい?......何を言っているのだ?!お前は勇者であろう?
使命はどうした?」
「使命など、どうでも良いのです。お側にいられるなら、これ以上の幸せはありません。」
「あきれた勇者だな。仲間はどうする?」
「仲間とは、別れました。この近くに置いてきましたので、問題ありません。」
自分勝手な言い分に呆れ、こんな勇者を送り込んだヤノアサーテ王を憐れむ。
さーて、どうしたものか。
この最弱勇者は、瞬殺できる。
しかしそのあと第二、第三の勇者を送り込まれるのも面倒だ。
魔眼で見ると、仲間たちが近くで様子をうかがっている。
このまま下僕として使ってやることにしよう。
魔王に寝返った勇者に呆れて、じき仲間も帰るだろう。
勇者が魔王に寝返る、これは結構な不祥事だ。
きっとヤノアサーテ国は、しばらくこの事実の隠ぺいに躍起になるだろう。
次の勇者は、当分送ってこられまい。
残りの勇者パーティのメンバーは、魔王に寝返った勇者を見限り、あっさりと引き上げた。
お調子者の勇者は魔王城で下僕として働くこととなった。
何か特技はないかと、もう一度魔眼で見てみる。
おや、前と少し数値が違うな。
属性も元勇者となっている。
HPもだいぶ増えたようだ。
これなら、むしゃくしゃした時のサンドバッグにはちょうどよい。
元勇者の使い道が決まった。
へらへらしながら勇者は、魔族の配下ともまずまずうまくやっているらしい。
私の目を盗んで、魔王城のメイドにも声をかけているようだ。
本当に女好きなんだな。
もう一つ元勇者=下僕の良い使い道を思いついた。
時々慰問に行く魔族小学校に連れて行こう。
そして魔族の子供たちに言うのだ。
「人族はこのように、調子よくへらへらしています。
しかし油断してはいけません。
友好親善という甘い言葉で近づき、隙あらば我々を欺くのです。
しかも繁殖力だけは異様に高いのです。
ですからこれ以上人族と関わらぬよう、結界を強化する予定です。
皆もよくそのことを覚えておいてください。」
こいつなら十分良い教材になるであろう。
せめてそれくらいは役に立ってもらわないとな。




