2.聖女イレーナ
何なの!あの勇者!
私の顔を見るなり、
「聖女様でお願いします!」
ですって!
聖女としての実績とか、得意な魔法とか、魔王討伐への意気込みとか。
もっと聞くべきことはいくらでもあるでしょうに!
顔しか見ていないのね。
思わず顔が引きつってしまったわ。
魔術師の勧誘の時も、「このひとがいいです!」って考えもせずに決めてしまうし、勇者の勘って当てになるの?
弓士も「エルフだから」という理由だけで決めたし、せめて剣士ぐらいは実力を見ましょうよ。
このメンバーではっきり分かったことと言えば、勇者がどうしようもなく女好きで、考えなしの男だということ。
一応あれでも神託で選ばれたらしいわ。
神様はいったい何を考えて、あんな人を選んだのでしょう?
私には理解できないわ。
あんな勇者でも神託で選ばれた以上、聖女としてサポートせざるを得ないのです。
やがて魔王のいる魔王城を目指して、旅立つことになりました。
旅立つ前に、城の騎士団と多少は鍛錬をしたようだけど、勇者の実力には不安しか感じません。
ただ魔術師のウルスラ、弓士のエリスはどちらもベテランですし、剣士のオリビエは態度も真面目で、好感が持てます。
旅の途中でも、勇者なのに、ちょっとかわいい宿の女中さんとかに声をかけたりして、不真面目です。
そんな彼のおしりを叩きながら、旅は続きました。
道中で魔獣に遭遇すると、エリスが弓で足止めし、ウルスラが強力な魔法を叩き込み、オリビエがとどめを刺す。
そんな連携もできるようになりました。
私は、皆の傷を癒やし、野営では結界を張って安全を確保します。
勇者は何をしたかって?
たいして、役に立ちませんでした。
一応剣は振っていますけど、急所を外すし、どちらかというと、お荷物でしたね。
おとりとしてだけは、役に立っていました。
そのうち何か勇者の隠された能力に目覚めるんでしょうか?
今のところ、ガールハントに能力全振りです。
狩るなら魔獣にしてほしい......。
そうこうするうちになんとか、魔王城近くにまでたどり着くことが出来ました。
このメンバーで、本当に魔王を倒せるのかしら?
不安は尽きないけれど、最悪の場合は勇者をおとりにして、私たちだけでも逃げてしまいましょう。
あの人にも、それぐらい役に立ってもらわないとね。




