表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王冠を拒んだ改革者 〜婚約破棄された私ですが、領地経営から始めて王都の政治をひっくり返します〜  作者: 神代ユウ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/30

第24話「選択」

 夜は長かった。


 若者三名は城内の仮牢に収容されている。


 商人側は正式な処罰を求め、騎士団は治安維持のための厳罰を支持する声が強い。


 城下では、すでに噂が二分していた。


「若気の至りだ」


「いや、契約破壊の重罪だ」


 アリアは執務室で一人、帳簿と契約書、そして王国法典を並べていた。


 理屈なら重罪。


 情で見れば未遂。


 だが政治は、そのどちらでも決まらない。


 扉が叩かれる。


 セルマだ。


「商人代表が面会を求めている」


「通して」


 管理責任者は険しい表情で入室する。


「今回の件は重大な契約侵害です」


「承知しています」


「厳罰を求めます」


「具体的には」


「王都への身柄引き渡し」


 空気が凍る。


 王都裁判にかければ、若者は見せしめになる。


 領地の主導権も揺らぐ。


「過剰です」


 アリアは即答する。


「二度と起きぬ保証は?」


「私が出します」


 静かな声。


「保証とは?」


「森の治安維持を、騎士団と村代表の共同管理に改める」


 管理責任者が眉をひそめる。


「商人の権限が削られる」


「削るのではなく、共有する」


 言葉を選ぶ。


「疑念を断つためです」


 沈黙。


 管理責任者は低く言う。


「若者の処罰は」


「領地内で行います」


「軽い処分では納得できない」


「軽くはしません」


 アリアは視線を外さない。


「だが、未来を奪う罰は出さない」


 しばしの沈黙の後、管理責任者は言う。


「三日以内に具体案を」


 去っていく背中。


 重い。


 翌朝、エドガーが呼び出される。


 目は赤い。


「……止められなかった」


「知っている」


 アリアは言う。


「責任をどう取る」


 沈黙。


「俺も処罰を受けます」


「襲撃はしていない」


「思想を広げた」


 その言葉に、アリアは微かに息を吐く。


「思想は罪ではない」


「ですが」


「だが、行動を止められなかった責任はある」


 エドガーは頷く。


 若さの熱は、今は痛みに変わっている。


 午後、城下広場で公開裁定が行われた。


 商人、騎士、村人、若者たち。


 全員の前で。


 アリアは壇上に立つ。


「森の襲撃は重罪です」


 静まり返る。


「契約を壊しかけた」


 若者三人が前に出される。


「法に従えば、王都送りも可能」


 ざわめき。


「だが」


 声を強める。


「彼らは森を守ると信じていた」


 商人側がざわつく。


「だから許すのか?」


 声が飛ぶ。


「許さない」


 はっきり言う。


「一年間の労役。森の復旧と共同管理に従事」


 沈黙。


「給与は支払う。ただし罰金を差し引く」


 騎士団がざわめく。


「さらに」


 アリアは続ける。


「共同管理制度を導入する」


 商人と村代表、騎士団が参加する評議会を設置。


「森は、誰か一人のものではない」


 静かな声。


「守る責任も、共有する」


 管理責任者が険しい顔で見つめる。


 だが拒絶はしない。


 若者たちは頭を下げる。


「処罰を受けます」


 エドガーが前に出る。


「俺も評議会に参加させてください」


 ざわめき。


「監視役として」


 アリアは彼を見る。


 理想は削られた。


 だが折れてはいない。


「参加しなさい」


 静かな決断。


 群衆の空気がゆっくり変わる。


 怒りは完全には消えない。


 だが爆発もしない。


 均衡は、形を変えて再構築された。


 夜、執務室。


「甘いと批判されます」


 ミレイユが言う。


「厳しいと離れる者もいる」


 セルマが腕を組む。


「だが血は流れなかった」


 アリアは静かに頷く。


「理想を一つ削った」


 王都送りにすれば、秩序は強まった。


 だが領地は割れた。


 合意を選んだ。


 重い選択。


 窓の外、森は静かだ。


 火の跡はまだ残る。


 だが新しい芽も出始めている。


「王都へ行く」


 アリアは小さく言う。


「この形を持って」


 急がず。


 だが止まらず。


 第2章は、痛みと共に幕を閉じる。


 合意は守られた。


 だが理想は、少しだけ削られた。


 それでも彼女は進む。


 国家を作るという、終わりなき均衡の道を。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ