ホーンラビット討伐戦(前半戦)
激しい肉料理の宴会から一夜明けた、翌朝。
5人が泊まる村の宿屋の一室で、とんでもない事態が起きていた。
福田「う、うう……。肉……肉が、俺の胃袋で暴れてやがる……」
ベッドの上で、あの最強ハイスペックゴリラの福田が、青白い顔をして腹を押さえて唸っていた。原因は、昨晩の「ロックバードの肉」の食べすぎによる、凄まじい消化不良と謎の知恵熱である。
悠「福田ァァァーーーッ!? 体力Sの男が、まさかの寝込みスタート!?」
木下「ふむ、僕の『脳内構成』で分析したよ。彼の肉体は頑丈だけど、異世界の魔力素を一度に摂取しすぎたせいが原因だね。全快まで丸一日かかる計算だ。つまり、今日の福田くんの戦闘力は【F】、ただの動けないデブだよ」
瑛人「終わった……。今日からギルドのクエストで生活費を稼ぐ予定だったのに、メインアタッカーが使えねえ!」
そんな中、部屋のドアを叩いて入ってきたのは、作業着姿の村の大工の棟梁だった。
棟梁「おう、お前らの中に『青野』って坊主はいるか? ギルドの受付嬢から聞いたぞ。一瞬で頑丈な家を建てる凄腕の建築士がいるってな! 頼む、崩れかけの村の防壁の修繕を手伝ってくれ! 日給ははずむ!」
青野「え、マジで? いいよ、俺そういうの得意だし。みんな、俺はちょっとこの村で建設の仕事して稼いでくるわ!」
固有スキル『神速建築』を持つ青野は、福田を置いてさっさと村の公共事業へと就職していってしまった。
木下「よし。青野くんのおかげで今日の宿代は稼げそうだけど、僕たちも遊んでいるわけにはいかない。ギルドに行って、今の僕たちの戦力でもギリギリこなせそうなクエストを受けよう」
こうして、動けない福田、現場に出た青野を除いた3人――悠(体力E、他F)、瑛人(ALL F)、木下(知力SS、他D)は、村の近くの草原へとやってきた。
受注したクエストは、初心者の定番『ホーンラビットの討伐』。
頭部に鋭い一本角を生やした、凶暴なウサギ型のモンスターだ。
悠「よし、これならいけるはず……。あ、いたぞ! ホーンラビットだ!」
草原の向こうで、体長50センチほどのウサギがこちらを睨みつけている。その瞬間、木下がスッと前に出た。
木下「昨日ひらめいた『火力調整』の出番だね。……『火焔・出力0.05%』」
ボッ!!!
昨日より少し強めの火球が木下の指先から放たれ、ホーンラビットの足元に着弾。激しい炎と煙がウサギを包み込む。
ホーンラビット「ピギャァァーーーッ!?」
角ウサギは悲鳴を上げ、丸焦げになりながらバタリと倒れた。
瑛人「おおおっ!! すげえ木下! 一撃じゃん!」
木下「うん、計算通りだ。……ただ、瑛人くん、悠くん。ちょっと困ったな」
悠「え、何が?」
木下「0.05%とはいえ、連続で魔法を使った『反動』で、僕の右腕の筋肉が完全にハダカの生まれたての子鹿状態(激しい筋肉痛)になってしまった。もう今、指一本動かせないよ。アハハ」
悠・瑛人「また肉体が頭脳に追いついてないーーーっ!!!」
木下がまさかの戦線離脱。
そして運が悪いことに、魔法の爆発音と焦げた肉の匂いに引き寄せられるように、近くの茂みから「緑色の不気味な人型モンスター」がギチギチと歯を鳴らしながら、3匹も這い出てきた。
木下「……あ、あれは、村の子供でも知っている凶暴な集団捕食者、『ゴブリン』だね。戦闘力は全員【D】。今の僕たちの戦力で戦ったら、確実に3秒で全滅する計算だよ。アハハ」
瑛人「笑いながら遺言を残すなァァァーーーッ!!!」
福田は宿屋、青野は工事現場、木下は両腕マヒ。
残されたのは、ちょっとだけ体力が上がった悠と、ALL Fの瑛人のみ。絶体絶命の【後半】へ続く――!




