ホーンラビット討伐戦(後半戦)
ゴブリン「ギギッ……ギャァァッ!!」
棍棒を手にした緑色の肌の醜悪な化け物、ゴブリン3匹がじりじりと距離を詰めてくる。
対するこちらは、両腕が極度の筋肉痛でぶらんと垂れ下がった木下と、戦闘力ゴミ虫以下の悠&瑛人。
瑛人「ひ、ひえええ……! 来る! 終わった、俺たちここで緑のチビどもに骨までしゃぶられるんだ!」
木下「諦めるのはまだ早いよ、瑛人くん。僕の両腕は死んでいるけれど、脳(知力SS)と口は生きている。僕の『脳内構成』が、君たち2人が生き残るための『1.2%の勝機』を弾き出した。僕の指示通りに動いて」
悠「1.2%……! やるしかない! 木下、どうすればいい!?」
木下「まず、右のゴブリンの足元を見て。そこには昨日の雨でぬかるんだ粘土質の泥がある。悠くん、君は昨日『体力E』に進化した。そのタフさを活かして、わざと右のゴブリンの突進を正面から腹で受け止めるんだ」
悠「えっ!? 痛いの嫌なんだけど!?」
木下「大丈夫、死にはしないよ。さあ、来るよ!」
ゴブリン「ギャアッ!」
一匹のゴブリンが棍棒を振り上げ、悠を目がけて飛びかかってきた。
木下「悠くん、今だ! 腹に力を入れて受け止めて!」
悠「うおおお! 体力Eの底力ァァァッ!!」
ドゴッ!と鈍い音がして、ゴブリンの体当たりが悠の腹に直撃した。
「ぶふぉっ!」と息が詰まる悠。しかし、昨日の怪鳥の肉パワーと微増した体力の効果で、骨折は免れ、ゴブリンをがっちりとホールドすることに成功する。
木下「ナイスホールド。そのまま後ろへ倒れ込んで! ぬかるみに巻き込むんだ!」
悠は言われた通り、ゴブリンを抱きすくめたまま泥の中へ転がった。ベチャッと泥が飛び散り、ゴブリンの視界が完全に塞がれる。
木下「よし、右の個体は3分間視界不良で行動不能だ。次は中央と左! 瑛人くん、君の出番だ。君はALL Fの一般人未満だけど、その分『体重が軽くて重心が不安定』だ。わざと泥の上で派手に滑って転んで!」
瑛人「転ぶのが指示ってどういうことだよ!? うわあああ!」
瑛人が泥に足を滑らせ、無様にズサーッとスライディングしながら転倒。
しかし知力SSの計算は完璧だった。瑛人のスライディングは、突進してきた中央のゴブリンの足首に見事なローリングソバット(という名のただの激突)として炸裂した。
ゴブリン「ぎゃふん!?」
足をすくわれた中央のゴブリンが前のめりに転倒し、その先にいた左のゴブリンと頭をごっつんこ。ごちーんとマヌケな音が響き、2匹のゴブリンは脳震盪を起こして目を回した。
木下「今だよ! 2人とも、落ちているホーンラビットの『角』を拾って、目を回している奴らの首元に突き立てるんだ! パワーFでも、角の鋭利さと体重を乗せれば皮膚を貫通できる!」
悠「よっしゃあああ! 死ねええええ!」
瑛人「お前らのせいでポテチ食い損ねたんだよクソがァァァッ!」
泥まみれの悠と瑛人は、必死の形相でウサギの角を握りしめ、目を回したゴブリン2匹に飛びかかった。
グサッ! グサッ!と鈍い音が響き、ゴブリンたちが光の粒子となって消えていく。
残った泥まみりの1匹も、悠が馬乗りになって泥を口に詰め込みまくった結果、窒息して消滅した。
悠「はぁ……はぁ……か、勝った……?」
瑛人「勝った……。俺たち、ゴブリンに勝ったぞ……!!」
泥と返り血(光のチリ)にまみれ、大の字になって草原に倒れ込む最弱コンビ。
木下「お疲れ様。泥臭くて美しさは皆無だったけれど、完璧なコンビネーションだったよ。あはは、僕の指示が良すぎたかな」
悠・瑛人「動けないくせに偉そうに言うなァァァーーーッ!!!」
こうして、福田抜き、青野不在という絶望的状況の中、3人は知略と泥仕合によって見事ゴブリン討伐を達成。ギリギリの勝利を収め、少しだけ冒険者として逞しくなったのだった。
宿屋に戻ると、胃薬を飲んで復活した福田が「おう、お前ら泥だらけじゃねえか。よし、風呂入って肉、食おうぜ」といつも通り出迎えてくれた。




