新たな仲間!
島遠征組の瑛人、青野、山田の3人は、砂浜の大蛇を架空の忍者・影丸の力で退けた後、アタッシュケース(白金貨5000枚)を抱えながら、新大陸の東部に位置する広大なエリアへと足を踏み入れていた。
そこは、新大陸の過酷な原始林とは打って変わり、見たこともない色鮮やかな魔力花や、奇妙な形に整えられた巨木が美しく立ち並ぶ、自然の造形美が創り出した巨大な庭園――『アート庭』だった。
青野(知力A)「すげえなここ……。まるで誰かがデザインした庭みたいだ」
山田(知力B)「綺麗だけど油断するな。俺の『神の照準』には、この美しい花畑のあちこちに、平均S〜SSランクの化物の気配がハッキリ見えてる」
瑛人(ALL E)「ああ、俺の架空アバターストックはあと3体だ。慎重に進まないと……」
3人が緊張感を持って美しい庭園の小道を歩いていた、その時だった。
ポフ、ポフ、ポフ、ポフ……。
アート庭の静かな空間に、場違いなほど軽快で、どこか気の抜けた「小気味いい音」が遠くから響いてきた。
山田「っ!? 静かに! 前方の花の陰から、何かが近づいてくる! この足音……不規則で全く読めねえ!」
3人は一斉に身を隠し、武器を構えて前方の曲がり角を睨みつけた。
木下の予言した「恐ろしい怪物」か、あるいは隣国の刺客か。瑛人が冷や汗を流しながら次のアバターの設定を脳内で叫ぼうとした、その瞬間。
美しいバラの垣根の向こうから、トボトボとした足取りで、器用にサッカーボールでリフティングをしながら歩いてくる、見覚えがありすぎる一人の男子高校生がふらっと姿を現した。
兼彦(知力F-)「あはは、このお庭、いろんな色のサッカーゴール(木の隙間)があっていっぱいシュートできるなぁ。楽しいなぁ」
「「「……は?」」」
瑛人、青野、山田の3人は、あまりの光景に脳の理解が追いつかず、目玉が飛び出そうになった。
瑛人「ひ……広金……兼彦……!?」
青野「なんでお前がここにいるんだよァァァーーーッッッ!!!(絶叫)」
兼彦は「あれぇ?」とボケた顔でリフティングを止め、ボールをぽふっと胸でキャッチした。
【脳内省エネモード】のままだが、目の前にいるのが元の世界のクラスメイトだと気づき、のんびりと手を振った。
兼彦「あ、瑛人じゃん。青野に山田も。みんなでお散歩? 奇遇だねぇ」
山田「お散歩なわけねえだろ!! 俺たちは命がけで海を渡って……っていうかお前、ステータスはどうなってんだよ!」
山田がパニックになりながら『神の照準』の魔眼で兼彦の能力値を覗き込む。
【山田の視界に映る兼彦のステータス(通常時)】
• 体力:【E】
• 知力:【F-】
• パワー:【F】
• スピード:【E】
山田「オールF付近のゴミ虫じゃねえか!!! 悠の初期状態よりひどいぞ!! お前よくこの平均評価Sクラスの化物島で生きてこれたな!?」
瑛人「待て、兼彦! お前の後ろの茂みから、さっきから俺たちが必死に避けてる特大の【Sランク・マジックライオン】が3匹、牙剥いて飛びかかってきてるぞ! 逃げろ!!」
バラの垣根を食い破り、スピードSの神速で、兼彦の背後から巨大な獅子の魔獣が襲いかかる!
衝突まで、あと0.1秒。
瑛人「クソッ、アバター召喚が間に合わねえ! 兼彦が噛み砕かれる――!」
3人が絶望したその瞬間。兼彦の焦点の合っていなかった瞳が、パチッとガラリと変わり、深淵のような冷徹で鋭い「超天才の輝き」を帯びた。
【固有スキル:自動覚醒スイッチ・強制発動】
知力【SS】、スピード【SS】へ一瞬で跳ね上がる。
世界が完全に停止したスローモーションの中、兼彦は冷徹に呟いた。
兼彦*(……演算開始。障害物の配置、およびターゲットの速度を計算。……勝機あり。ハンバーグの時にひらめいた新魔球、ここでテスト運用させてもらうよ)*
兼彦は、落ちてきたサッカーボールの周囲の空気抵抗と芝生の摩擦係数を完全ハッキング。左足の痛覚を遮断し(体力S)、音速を超える大爆発的脚力(パワーA)を込めて、ボールのド芯を強烈に擦り上げるように振り抜いた!
バコォォォォォンッ!!!!!
アート庭全体を激しく揺るがす、鼓膜をツん裂くような大爆破音。
放たれた魔球は、空中を飛ぶ中で凄まじい順回転(縦回転)を帯び、魔獣たちの頭上で急激に、直角に近い角度でガクンと急降下した。
【新必殺技:超絶ギザギザ・ドライブシュート】
地面に激突した魔球は、肉の脂の数式から応用された「摩擦抵抗ゼロ」の超不規則なギザギザバウンドを起こし、スピードSの獅子3匹の脳天を完全に予測不可能な軌道からピンポイントで次々と爆破していった。
ズガァァァァァーーンッ!!!!!
災害級の魔獣3匹は、悲鳴を上げる暇すら与えられず、一撃で同時に光のチリとなって完全に消滅した。
兼彦「ふむ……。芝生の抵抗、計算通りだね」
システム音がピコンと鳴り、兼彦の目の輝きが消え、またトボトボとした「知力F-」の完全なボケ状態に戻る。
兼彦「あれぇ? ライオンさんたち、どこ行っちゃったのかなぁ? お昼寝かなぁ? ねぇ瑛人、お腹空いたから一緒に何か食べよぉ」
瑛人・青野・山田「お前あいつらより圧倒的にバケモノじゃねえかァァァーーーッ!!!(絶叫)」
美しい『アート庭』に、島遠征組3人の魂のツッコミが響き渡る。
最弱のゴミ虫だと思っていた広金兼彦が、実はこの新大陸を一人で支配する「サッカーの神」であったことを知り、彼らの新大陸サバイバルは、ここから最高に心強くて理不尽な新章へと突入するのだった――!




