(新大陸編)影丸!
瑛人は迫り来る大蛇の牙を睨みつけ、この「スピードSの神速を誇る3匹の大蛇」を同時に、一撃でブチ抜くための最強の架空のキャラクター(設定)をその場で必死に脳内に構築した。
瑛人「タイムリミットは10分! 俺の言葉通りに生まれろ!! ――『服装は漆黒の隠密服、武器は巨大な一撃必殺の手裏剣を操り、スピード【SS】の神速で影を駆け抜け、3匹の敵をコンマ1秒で同時に両断する架空の最強忍者・影丸』、顕現しろォォォーーーッ!!!」
パァァァァァンッ!!!
砂浜にまばゆい紫色の光が爆発するように弾けた。
光の中から現れたのは、瑛人が今さっき設定を考えたばかりの、鋭い眼光を放つ黒装束の忍者――影丸だった。
影丸(架空)「――御意。主(瑛人)の命により、これより瞬く間に影を断たん。我がタイムリミットはあと9分55秒」
具現化された瞬間から、世界をスローモーションにするスピードSSの設定を持つ影丸は、背中から不気味な黒光りをする巨大手裏剣を引き抜いた。
影丸(架空)「忍法――『影縫い・三つ巴』」
【影丸のステータス(架空・10分限定)】
• 体力:B
• 知力:C
• 腕力:A
• スピード:SS (※世界をスローにする神速)
• 【固有スキル】:『刹那の一閃』
• 効果:スピードSSの速度を維持したまま、3つの異なる軌道へと攻撃を完全残像で同時派生させ、敵の死角から急所を一瞬で両断する。
襲いかかってくる大蛇たちのスピードSの突進。しかし、影丸のスピードSSの世界では、大蛇たちの動きはまるで止まっているかのように遅かった。
影丸は砂浜をカッと蹴ると、音速を超える神速ステップで大蛇たちの間をすり抜けた。同時に、巨大手裏剣を凄まじい遠心力で投げ放つ!
シュバァァァァァンッ!!!!!
放たれた手裏剣は、影丸のスキルによって空中で3つに完全残像分身。大蛇3匹の唯一の首の防御の薄い隙間を、全く同時に、寸分の狂いもなく一瞬で横一文字に引き裂いた。
ブラック・サーペント×3「ピ、ピギャッ……!?」
新大陸の獰猛な大蛇たちは、自分がいつ首を斬られたのかすら理解できず、3匹同時に一瞬で光のチリとなって完全に消滅した。
静まり返る始まりの砂浜。
青野「う、嘘だろ……。スピードSの大蛇3匹が、コンマ数秒で全滅した……」
山田「これが瑛人の新しい力か。とんでもねえ設定のやつを生み出しやがったな」
瑛人「ふぅ……。心臓が止まるかと思った。サンキュー、影丸!」
影丸(架空)「フッ、主の思い描いた設定が完璧だったがゆえにございます。さあ、残り時間は8分30秒。このままこの安全な砂浜に、青野どのの建築で最初の『拠点(要塞)』のクラフトを開始されよ」
実在の友達を拉致する罪悪感を克服し、その場で最強の架空アタッカーを生み出して敵を圧倒する瑛人の進化。
新大陸への上陸初戦を、フレンドゲーターズの3人は驚異の架空の忍者と共に、最高の形で勝利で飾るのだった――。
最南部の『始まりの砂浜』では、瑛人が生み出した架空の忍者・影丸が、残り3分ほどのタイムリミットを迎えようとしていた。
影丸(架空)「主(瑛人)よ、我が時間は間もなく尽きる。……だが、消える前に伝えておかねばならぬ『世界のルール』がある」
瑛人(ALL E)「世界のルール……? なんだよそれ」
影丸(架空)「我が脳内にあるシステム情報を読み解いたところ、主の『架空具現召喚』には絶対的な枷が存在する。……主が頭の中で最強の設定を盛り込んだアバターを創り出せるのは、【1年にわずか5体まで】じゃ」
瑛人・青野・山田「1年に5体だけ……!?」
影丸(架空)「左様。今しがた拙者(影丸)を創り、さきほど船を操った浜口を創った。つまり、主の今年の残りストックは【あと3体】しか残されておらぬ。安易に新しいキャラクターを創り出せば、本当に国家滅亡クラスのピンチが来た時に、手札がゼロになるぞ」
瑛人「マジかよ……! 強すぎると思ったら、とんでもねえ回数制限があったのか……!」
影丸(架空)「フッ、これぞこの世界の神(謎のおじいさん)の悪趣味なバランス調整。……ではな、主。残されたストック、大切に扱われよ……」
時計の針がゼロを刻むと同時に、影丸は静かに光の粒子となって消滅した。
3人は、新大陸の圧倒的な脅威と、残り「3回」しか使えない切り札の重さに、ゴクリと息を呑むのだった。




