敵国襲来!
悠が初めてのソロバトルに勝利し、自分自身の小さな一歩を実感していた同じ夜。
王都『グラン・フレンドリア』の中心にそびえ立つ王城『友情の砦』の玉座の間は、かつてない重苦しい絶望に支配されていた。
深夜、静まり返った謁見の間の扉が激しく開かれ、全身に血と泥を浴びた隠密部隊の報告兵が滑り込むようにして床に伏した。
報告兵「報告ッ! 北方の隣国『バッドエンディア帝国』が我が国に対し、事前通告なき奇襲を敢行……! 宣戦布告と同時に国境の第一・第二防衛線が完全に決壊いたしましたッ!!」
玉座に座る国王は、その報告に血の気を失い、ガタガタと椅子の手すりを握り締めた。
国王「な、何ということだ……。我がフレンドリア王国は、隣国とは長きにわたり不可侵条約を結んでいたはず。なぜ、何の前触れもなくこれほどの凶行に及ぶ……!?」
傍らに控える、この国を支える大賢者が、震える手で古い予言書を広げた。その表情はこれまでにないほど青ざめている。
大賢者「王よ、お耳に入れておくべき『最悪の真実』がございます……。我が国の占い師が世界の理を観測したところ、この世界を支配する大いなる意志(神)が、数日前に帝国の皇帝へ神託を下した形跡が見つかりました。【日本の男子高校生という特異点がこの国に現れた。彼らを極限の絶望に叩き落とすため、全軍で攻め滅ぼせ】と……」
国王「そんな……っ。神の、単なる気まぐれだというのか……!? 我が民が、我が国家が、そんな不条理な理由で滅ぼされねばならんのか……ッ!!」
大賢者「これがこの世界の絶対的な残酷さにございます……! 帝国軍はすでに、我が国の誇るAランク聖騎士団を瞬く間に蹂躙。現在、遮るもののない平原を驚異的な速度で進軍中……。あと3日、わずか3日でこの王都は包囲され、我が王家は歴史から消え去ります」
世界システムそのものが、転生してきた少年たちを追い詰めるために「滅亡のシナリオ」を起動させたのだ。王家に残された時間は、もう絶望的に少なかった。
時を同じくして、フレンドリア王国の国境沿いに広がる漆黒の荒野。
「「「「「ハイル・バッドエンド……!!」」」」」
地平線の果てまでを真っ黒に埋め尽くす、漆黒の鎧を纏った帝国軍の兵士たち。その数、実におよそ10万の大軍勢。
彼らが一糸乱れぬ足取りで踏み鳴らす足音は、まるで巨大な地鳴りのように大地を激しく震わせている。
軍勢の先頭を進むのは、あらゆる物理攻撃を弾き返す鋼鉄の巨大魔戦車、そして夜空を覆い尽くさんばかりに飛来する、凶暴なワイバーン(飛竜)の群れ。そのすべてが、並の冒険者では一瞬で肉片に変えられる【戦闘力:B〜A評価】の生ける兵器たちだった。
黒い巨大な軍馬にまたがり、禍々しいオーラを放つ帝国軍の総司令官・デス将軍が、冷酷な眼差しで遥か彼方の王都を見据えた。
デス将軍「ククク……神が仰せられた異界の『高校生』どもが、あの王都に潜んでいる。奴らを一人残らず炙り出し、完璧な絶望の中で肉片に変えてやれ。全軍、進軍せよ。立ち塞がるものはすべて蹂躙しろ……!!」
「「「「「ウオォォォォォーーーッ!!!!!」」」」」
大地を揺るがす狂気的な咆哮と共に、10万の鉄流が津波のように王都グラン・フレンドリアを目指して牙を剥く。
行く手にある街や砦は、抵抗の余地すらなく一瞬で踏み潰されていく。その圧倒的な破壊力の前には、王国の防衛力など文字通り紙切れも同然だった。
この時、王都の超高級宿屋のベッドで「明日から何の肉を食べようか」と、静かに眠りについていた悠たち『フレンドゲーターズ』は、まだ何も知らなかった。
自分たちの存在そのものが引き金となり、国家滅亡のカウントダウンが、10万の牙となってすぐ目の前まで迫っているということを――。




