10分でクッキング!
王都の超高級焼肉店の一室。
フレンドゲーターズのテーブルには、国宝級の結晶のおかげで注文できた、幻の高級食材「ドラゴンカルビの塊肉」が堂々と鎮座していた。
木下(知力SS)の左手から放たれる「出力0.02%」の完璧な直火で、お肉はジューシーに焼き上がっていく。だが、全員の口の中には、まだ帰り道に飲んだあの激マズポーションの「雑巾の絞り汁味」が微かに残っていた。
福田(パワーS)「美味そうだけどよ……このドブ味のせいで、ドラゴンの肉本来の旨味が100%楽しめねえ! 味が濃くて最高に美味い『タレ』が必要だ!」
青野(知力A)「でもこの店のタレ、上品すぎてドブ味に負けてるんだよな……」
瑛人(ALL E)「よし、それなら俺の進化したスキルの出番だな! 1日3回、1回10分だけ友達をお試し召喚できる新機能――『時間制限召喚』、発動!!」
瑛人が胸の前で手を合わせ、脳裏に「あいつ」の顔を強く浮かべた。
(実家が創業100年の老舗定食屋で、高校生にして秘伝のタレを完璧に再現できるクラス一の料理人……佐藤!!)
パァァァンッ!!!
クラッカーが弾けるような軽快な音と共に、空間から一人の男子高校生が降ってきた。手には、今まさに現実世界のお母さんから手渡されたばかりの「夕飯のおかず(アジの開き)」を持っている。
佐藤「はい母さん、焼き上がっ……って、えええええええッッッ!? なんだここ!? 瑛人に悠!? なんでお前ら高級そうな個室でバカデカい肉囲んでんんだよ!」
悠(体力D)「佐藤ーーーッ!! 喋る時間はねえ! お前のタイムリミットはあと9分30秒だ!!」
佐藤「タイムリミットって何だよ!?」
木下「佐藤くん、初めまして。君のステータスは知力C、パワーD、固有スキルは『至高の調味』だね。今からその左手にあるアジの開きを置いて、テーブルの上にある異世界のスパイスと果実を調合し、このドラゴン肉に合う『ドブ川のヘドロ味を一瞬で消し去る最強のタレ』を2分で作ってほしい」
佐藤「要求の情報量が多すぎるわ!!! 異世界!? ドラゴン肉!? そもそもなんで俺の口内調味スキルを知って……」
福田「四の五の言うな! 作らないと……肉、食わせねえぞ!!」
福田(パワーS・体力S)が丸太のような腕を組んで眼力を飛ばす。そのゴリラのような威圧感に、佐藤の料理人魂(と生存本能)が大爆発した。
佐藤「ひっ……! 訳わかんねえけど、やってやるよちくしょう! スキル発動!!」
佐藤の目がプロの料理人のそれに変わった。
テーブルの上の謎の異世界フルーツを凄まじい手つきで握り潰して果汁を絞り出し(※青野直伝の握力調整により果汁だけを綺麗に抽出)、異世界の香辛料を1ミリグラム単位で配合していく。
佐藤「お前ら、醤油っぽいのはねえのか!?」
山田(知力B)「これを使え! さっきギルドの換金所でおまけに貰った『魔魚の魚醤』だ!」
佐藤「ナイス! これをひと回しして……よし、完成だ!! 『特製・魔獣特効ネギ塩おろしダレ』だ!!」
時計の針は、残り5分00秒。
福田が焼き上がったドラゴン肉をそのタレにドップリと浸し、口の中へ放り込んだ。
直後、福田の目がカッと見開かれる。
福田「んんんんんんまァァァァァいッッッ!!!!! 口の中のドブが一瞬で消滅して、ドラゴンの濃厚な脂が脳天を突き抜けたぞ!!!」
悠・瑛人「美味すぎるーーーッ!!!(号泣)」
青野・山田「これだよこれ! 味が濃くて最高だ!!」
佐藤「だろ? どんなヘドロ味でも、うちの秘伝の酸味を加えれば一発……って、おい、俺の体が光り始めてるんだけど!?」
時計の針は、残り0分10秒。
佐藤の体が、元の世界へ戻るための淡い光に包まれ始める。
瑛人「サンキュー佐藤! お前のおかげで最高のディナーになったわ!」
佐藤「待て! 俺はただ拉致されてタレを作らされただけかよ! せめてそのドラゴン肉を一口……一口食わせろォォォーーーッ!!!」
ピカァァァッ!!!
佐藤が肉に手を伸ばした瞬間、10分間のタイムリミットが到来。
佐藤はアジの開きを持ったまま、光と共に元の世界の自室へと強制送還されていった。
悠「……行っちゃったね。一口も食べられずに」
木下「ふむ、これぞ完璧なタイムマネジメントだね。時給換算するとゼロ円の最高のボランティアだよ。あはは」
瑛人「進化した俺のスキル、マジで便利だけど罪悪感が半端じゃねえわ……」
福田「がはは! 細かいことは気にするな! タレはまだ山ほどある! 悠、瑛人、山田、青野、木下! 最高のタレで……」
全員「「「「「肉、食おうぜ!!!」」」」」
日雇い拉致された佐藤の尊い犠牲(?)のおかげで、フレンドゲーターズの王都での宴会は、これまでで一番の盛り上がりを見せるのだった――。




