主、クリスタル・ウルフ
洞窟の最奥は、天井から巨大な魔力結晶が何本も垂れ下がる、幻想的かつ不気味なドーム状の空間だった。
その中心で、結晶の破片がゴゴゴゴゴ……と音を立てて集まり、巨大な狼の姿を形作っていく。
木下「……みんな、止まって。あれがこのダンジョンの主、『クリスタル・ウルフ(結晶の魔狼)』だね。ステータスを『脳内構成』で覗かせてもらったよ」
【ダンジョンボス:クリスタル・ウルフ】
・知力:C
・体力:A
・パワー:A
・スピード:S
・全身が魔力を帯びた超硬度の結晶で覆われている。
瑛人「スピードが【S】だと!? 福田と同じランクじゃねえか!」
木下「それだけじゃない。全身の結晶がこちらの物理攻撃を50%カットする相性最悪の相手だ。……流石の福田くん(パワーS)でも、正面から力押しするだけだと少し手こずるよ」
福田「へっ、面白そうじゃねえか。パワーSの俺の拳が勝つか、あいつのガチガチの体が勝つか……試してやるぜ!」
福田がニヤリと笑い、地響きを立てて突進する!
対するクリスタル・ウルフも、スピードSの神速で空間を駆け抜け、福田と正面から激突した。
バキィィィーーンッ!!!
福田の強烈なストレートがボスの顔面にクリーンヒット。しかし、ボスは顔面の結晶を砕かれながらも、その強靭な体力Aで耐えきり、鋭い結晶の爪で福田の腕を引っ掻く!
福田「チッ、硬えな! それに素早い!」
パワーSの福田の攻撃は確実に効いているものの、ボスの「スピードS」と「物理カット」のせいで決定打を与えられず、戦闘は一進退の攻防へともつれ込んだ。
木下「福田くん、そのままボスの注意を引きつけて。……よし、脳内シミュレーション完了。このボスをノーダメージで完封する『最適解』が出たよ。……悠くん、君の出番だ」
悠(体力D、パワーE、スピードE)「えっ!? 俺!? パワーEの俺が、あの硬い化け物に何をするんだよ!?」
木下「さっきの道中で、君のスピードとパワーは【E】に上がった。これは一般の高校生が『ガチの部活で死ぬほど鍛えたレベル』の瞬発力だ。そして、僕の『脳内構成』は、ボスの動きの『次の1秒』を完全に予測できる」
木下は、ぶらんと垂れ下がった両腕のまま、鋭い視線でボスを見据えた。
木下「悠くん、僕のカウントダウンに合わせて、ボスの『真後ろの右後ろ足の付け根』に全力でタックルして。そこだけ結晶の密度が【F】ランク並みに薄い、唯一の構造的欠陥(弱点)だ」
悠「わ、分かった! やってやる!!」
木下「いくよ。ボスの次のステップは左後方……3、2、1……今だ、悠くん! スピードEの最大出力!!」
悠「うおおおおおーーーッ!!!」
ALL Fだった頃の悠なら、足がもつれて転んでいただろう。しかし、今の悠の肉体には、ブートキャンプで培われた「スピードE」のキレがある!
ボスの視界の外から、木下の指示した寸分の狂いもないピンポイントの軌道へ、悠の体が弾丸のように飛び込んでいく。
悠「大器晩成を……舐めるなァァァッ!!!」
ドガァァァッ!!!
悠の「体力D」の頑丈な肉体と、「パワーE」のタフな体当たりが、ボスの唯一の弱点である右後ろ足の付け根にクリーンヒットした。
クリスタル・ウルフ「ピギャッ!?!?」
構造を破壊されたボスは、スピードSの体勢を完全に崩し、マヌケに地面へとスライディングするように大転倒。お腹の柔らかい部分が、無防備に上を向いて露出した。
木下「福田くん、ボスの腹部の防御力は【E】だ。最大パワーでいって」
福田「ナイスだ悠!! これで終わりだコラァァッ!!! 『ミート・クラッシャー』!!!」
福田が上空へ高く跳び上がり、パワーSの全体重を乗せた両拳を、ボスの無防備なお腹へと叩きつけた。
ズガァァァァァーーンッ!!!!!
凄まじい爆発音とともに洞窟全体が激しく揺れ、クリスタル・ウルフは一撃で粉々の光のチリへと霧散した。空間には、ボスがドロップした特大の最高級魔力結晶がゴロゴロと転がっている。
悠「はぁ、はぁ……。やった……俺、本当にボスの体勢を崩せた……!」
瑛人「すげえよ悠! マジで戦力になってるじゃん!」
青野「ALL Fのゴミ虫だった頃が懐かしいな……」
福田「がはは! 悠、最高のトスだったぜ! お前のおかげでスカッと勝てた!」
福田にバシバシと背中を叩かれ、悠は痛がりながらも、これまでにない達成感に満ちた笑顔を浮かべた。
最弱の転生者だった悠が、最強の仲間たちのサポートによって、ついに戦いの中で輝き始めた瞬間だった。
福田「よし、極上のボス結晶も手に入ったし、これ換金したら大金持ちだな! 帰って……」
全員「「「「肉、焼こうぜ!!!」」」」
5人の息の合った大合唱が、静まり返ったダンジョンの最奥に響き渡るのだった――。




