↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/31

第一章 五節 街道にて

 ヤルクに向かう道をまだ痛みが治っていない足で頑張って歩いている。

 草木が生い茂り、辛うじて街道の形を保っている。

 しかし、なんでこんなに道が整備されていないんだろう。

 もう結構歩いた気がする。

 けどまだ着かない。

 昨日歩いた道だからそれは知ってる。

 グダグダ考えながら歩いている私の前を、ヨドは文句も言わず淡々と歩いている。

 太陽が真上から世界を照らしている。

 そういえば、朝食べてから何も食べてないな。

 ……お腹減ってきた。

 水筒には昨日の水がまだ残っている。

 私は全部飲み切らないように、少しだけ口に含んで喉を潤した。

 そういえば、魔物って居るはずなのに、最初に襲われたロクアシドラしか見てないな。

 やはり、大魔王が討伐されたから非活性化しているのだろうか。

 太陽が真上から少し傾いてきた。

 私は少し限界を感じていた。

「ヨドー!少し休もうよー!」

「もう少し歩くと開けた場所がある。そこで少し休憩するか。」

 ヨドは一旦足を止めて私に振り向いた。

「わかったよー!そこまでは頑張るよ!」

 私は振り絞った声をヨドにぶつけた。

 不意にヨドの目が鋭くなり生い茂った草むらを睨みつける。

 ……ガサッ!

 何かが飛び出した。

「コユキ、伏せろっ!」

 言うが速いかヨドが剣を抜いて私の頭を目掛けて薙ぎ払う。

「イヤーーーっ!!!」

 思わず目を閉じて、叫びながらしゃがむ。

 ……ギュァッ!

 その何かにヨドの剣がヒットする。

 目を開けてそれを見た。

 大きい鼠だ!

 ……うわ、なにこれ気持ち悪い。

 続いてガサッ、ガササッと左右から聞こえる。

 ……キュイ!キュイ!

 同じような大きい鼠が何匹か飛び出してきた。

「コユキ!走れっ!」

 え?この状態で走れと!?

 でも、こんな鼠に噛まれたくない。

 私は疲れた足に鞭を打ち、走り出した。

 私の背後からヨドが大きい鼠たちを相手に剣を振るっている音が聞こえる。

 ヨドを置いて逃げる後ろめたさを感じながら、それでも必死に走った。

 不意に横からキュイっという音がした。

「キャーーーー!!!」

 左腕に、鋭い痛みが走る。

 ……噛まれたっ。

「コユキっ!」

 ヨドが隼のような速さで駆け寄り、私の腕に噛みついていた鼠を斬り飛ばした。

 もう草の音も、キュイという声も聞こえない。

「今のが最後か。大丈夫かコユキ!」

「痛い……痛いよぉ……」

 泣きながらヨドに応える。

 腕から血が流れている。

「すまん。守れなくて。」

 ヨドが鞄から瓶を出し、躊躇なく中の液体を噛まれた私の左腕の傷口にかける。

 じんじんしていた痛みが、すっと引いていく。

 ……すごい薬だ。

 すこしポカーンとしてしまう。

 気持ちが落ち着いて、ヨドを見る。

 よく見るとヨドの腕にも傷が出来ている。

「ごめんヨド。私怖くて何も出来なかった。」

「いや、逃げてくれて正解だ。あそこに居たままだと私も戦いにくいし、コユキも傷が増えていたはずだ。」

 ヨドが落ち着いた声で私を諭す。

「ヨド、ありがとう。」

 ヨドにお礼を言う。

 しかし、ヨドの腕からは血が流れたままだった。

「でも、ヨドも治療しないとダメじゃん!」

「治癒薬がひとつしかなかった。テノジンで買っておかないといけなかったな。」

 腕から血を流しているのに、ヨドは軽く笑っていた。

「とりあえず、ここは少し危険だ。先にある少し開けた所までは行こう。」

 そう言って、ヨドは少し戻って荷物を回収した後、道を進める。


 開けた場所に到着し、私とヨドはそこにある岩に腰かけた。

 ヨドの腕からはまだ出血が続いている。

「どうしよう……。ヨド、ごめんね。」

「コユキは謝らなくていいんだ。私がドジっただけだから。」

 そういうヨドの顔は少し辛そうだった。

 ……どうにかしてあげないと。

 私はふと、鞄に元々着ていたシャツを入れていた事を思い出した。

 淡いピンク色の花柄のシャツを取り出し、袖の部分を破って切り離した。

「コユキ、何をしている!?」

 私はヨドの腕を取り、裂いたシャツを傷口を覆うように巻いていった。

「こうすれば血は止まるはずだから。」

「だけど……そのシャツは大事なものなんじゃないのか?」

 シャツを見てヨドが言う。

「いいの。今はヨドの傷の方が大事だから。」

「……コユキ、ありがとう。」

 ヨドは少し苦い顔をしてそう言ってくれた。

 肩を寄せ合ってしばらくそこで休んだ。


 ザッザッザッ。

 規則正しく刻む音がだんだん近づいてくる。

 ……また何か近づいて来る……怖い。

 そう思いながらヨドの顔を見ると、ヨドの表情には緊張感は無かった。

 ふと人影が見えて、私は少しだけ胸を撫で下ろした。

 よく見ると、近づいてきたのは背中に弓を背負ったニャルメルの男性だった。

「ん〜。あれ?お前ヨドじゃん。こんな所で何してんの?」

 ……誰?

 ……ヨドの知り合い?

「タマキか。そこでダイダイキュウソに出会ったんだ。ドジを踏んでしまって、このザマだ。」

 ヨドは自分でヤレヤレという表情で応える。

「ヨドほどの者がダイダイキュウソ相手にドジを踏むとはねぇ。ん?ところでそこの嬢ちゃんは誰?」

 ヨドの表情が警戒モードに変わった。

「初めまして。藤野小雪です。」

 とだけ私は答えた。

「あー、俺知ってるぜ。神現しの使者じゃん。ヨロシクー。で、こんな所で何してんのー?」

「私のせいでヨドに怪我させてしまったので、手当てしてたんです。」

 私は端的に説明した。

「ヨド、ダイダイキュウソに噛まれたのかぁ。あれ痛いんだよなぁ。って、腕に何巻いてるん?」

「私の服の切れ端で血を止めるために巻いてるんです。」

「あー、もしかしてヨド治癒薬ないのー?俺持ってるぜー。こういう時のためにな?今ならなんと千ディルで売ってやるぜ。」

「要らん。」

 ヨドがきっぱりと断った。

「そんな布っ切れで巻いてるより、すぐ治るのにー。ほらちゃっちゃとその布っ切れ取っちゃってー……」

 タマキが布に触れようとする。

 一瞬の間。

「触るな!」

 ヨドが叫ぶ。

「これはお前が触れて良いものではない!」

「あらー、そんなに睨まないでよ。ヨドってば怖いなー。」

 タマキはおどけて言っている。

 なんだかよくわからない人物だ。

「まぁ、良いってのなら良いけどさ。」

 タマキはわざとらしく帽子を直すふりをする。

「とりあえず、ヤルクまでなら荷運びを手伝ってやる。その腕じゃ辛いだろ?」

 タマキはそう言ってくれたが、ヨドはタマキを睨みつけている。

「そう怖い顔すんなって、ヤルクくらいなら無償でいいからさ。」

「本当か?」

「今は良いよー。先行投資ってやつさ。」

 タマキはヨドの荷物を拾い上げる。

 そうしてタマキを一行に加えてヤルクに向かうことにした。

 ……それにしてもタマキはなんとなく胡散臭い。

 ……この人、信用していいの?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。