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第一章 十三節 朝の約束

「はぁっ......!はぁっ……!はぁっ……!」

 まだ空気がひんやりとしている早朝、私は走っていた。

 集落ではまだひとがまばらな中、ヨドが先導して走っている。

 前を走っているヨドはまったく息を切らしていない。

 走りながらたまに後ろの私の方を振り向く。

 ……ヨド、全然疲れてなさそう。

 ……私は結構限界に近いのに。

 かれこれ十五分は走っている。

「ヨド……ちょっと待って……!少し休憩したい。」

 ぜえぜえ言いながら、うつむきがちに私は足を止める。

「もう休憩か?コユキ本当に体力ないな。」

「だって……はぁ、今まで運動なんて……はぁ、してこなかったんだもの。」

「仕方ないなぁ……徐々に体力付けるしかないか。立ち止まってても仕方ない、せめて歩くぞ。」

 ……え?歩くの!?

「当然だろう。体力付けるのが目的なんだから。」

「え?今私何も言ってない。」

「顔見りゃわかる。」

 ヨドに言われて仕方なく歩く。

 ……もうへとへとなのに……

「私も付き合ってやるから頑張れ!」

「わかったってばぁ!」

 ヨドと一緒にテクテク歩く。

 気が付けば商店が集まっている通りまで来ている。

 こんな時間だけど、食料品を扱う店は開いているみたいだ。

 ……そうだ!

「ヨド、ちょっと買い物行くー!」

 私はお店の方へテテテッと小走りする。

「元気じゃないか……」

 ヨドがボソッと言う。

 八百屋でめぼしい野菜と果物をカンで選ぶ。

 香辛料っぽい野菜も見つけてそれも買う。

 肉屋でロースっぽい肉と卵も買う。

 牛乳……もとい、ヤギュ乳も売っていたのでそれも買う。

 さっきまでへとへとだった心がウキウキに変わっていた。

「ついさっきまで死にそうだった奴とは思えないな。」

 横でヨドが苦笑している。

「食べるものは大切なんだからね!ヨド分かる?」

 苦笑しているヨドに対して少し強めの言葉で言った。

 ヨドが珍しくたじろいだ。

「食べるものは私が管理するから……」

「するから、なんだ?」

「今はまだあんまり出来てないけど……ヨドは身体づくりの方教えて……」

 少ししおらしくヨドに伝えた。

「当たり前だ。」

 ヨドは腕を組んで少し笑顔で答えた。


 ねぐらに戻ると、私はさっそく朝ごはんの支度を始めた。

 短剣を手に取る。

 昨日の訓練を思い出して短剣を握りなおす。

 それで肉を切ろうとするが、調理にはこの持ち方は合わないみたいだ。

 改めて握りなおして肉と野菜を切る。

 薄く切った肉の上に卵を乗せて焼く。

 ジューッという音が美味しそうだ。

 焼けたそれをパンの上に乗せる。

 野菜は香辛料っぽい野菜も含めて一緒に炒める。

 良い香りが漂う。

 目利きは誤っていなかったようだ。

 ヤギュ乳は鉄のコップに注ぐ。

 そこに気持ちだけ砂糖を入れる。

 出来た料理をテーブルに並べた。

「なんだこれ?すごく旨そうな匂いがするぞ。」

「ふふーん、絶対美味しいから!」

 少し自慢げに言った。

「では食べるか。」

 私とヨドはテーブルに着いて食べ始める。

「いや、これ本当に旨いな。はぐっ!」

 一瞬でパンが半分無くなっている。

 思わずあんぐりとしてしまう。

「あのヨドさあ、美味しそうに食べてくれるのは嬉しいんだけど、もう少しゆっくり食べようよ。せっかくの美人が台無しだよ。」

 ヨドはきょとんとした目で私を見る。

「ん?旨いものを旨そうに食べて何が悪い?美人とかどうでもいい。」

 ……はぁ

 ……残念な美人戦士だ

 食事が終わって洗い物を済ませる。

 そして、今日こそ荷物が届いていると信じて街道組合に向かった。

 ……また遅れるのかな?


「すまん。荷物はまだ届いていない。他の依頼も今のところ無い。」

 到着一番マヤトが申し訳なさそうに言った。

 ……今日も仕事ないのか

 ……鍋とかちゃんとした包丁とか揃えに行きたいな

「なら今日も特訓だな。」

 ……やっぱそうなるよね……

「ただ……今のコユキの体力で訓練場をまた借りるのはもったいないか。ふむ。」

 ヨドは考え込む。

「走るのはあまり続かないなら、外のノジ山を登りに行くか。」

「えっ!?山ぁ!?」

 私は驚愕した。

「心配するな、そんなに高くないし、勾配もきつくない。そうだ、それこそコユキの得意な料理を持って山頂で食べるなんてどうだ?」

 ……山登りかぁ

 ……キツそうだなぁ

「コユキ、体力付けるんだろ?」

「うん……そうだね……」

 少し気乗りしない気持ちで答えた。

「ノジ山はそんなに高くないが、結構景色はいいぞ。」

 マヤトが突然口を挟んできた。

「綺麗な景色を見ながら、コユキの旨いメシ食うの良いんじゃないか?」

 ヨドが珍しく興奮気味に言う。

 ……もしかしてごはん目当て?

 ヨドを見る。

「コユキの作るメシってのはそんなに旨いのか?」

 マヤトが食いつく。

「あぁ、旨いぞ。」

 ヨドが即答した。

「そんなに旨いのならワシもついていこうかな。なんか今仕事暇だしよ。」

 マヤトが楽しそうに笑う。

「支部長。物資の在庫管理の確認終わったのでしたっけ?」

 後ろからカソミツの声が飛んできて、マヤトの笑顔が固まった。

「い……いやぁ、それまだ急いでないからまだ大丈夫じゃないか……」

「そうですか。」

 カソミツは手元の帳簿をパタンと閉じた。

「確か、一週間前も同じことを仰っていませんでしたっけ?」

「……」

「支部長?」

「……言った。」

 諦めた顔でマヤトが言った。

「では、本日中に終わらせましょう。私も手伝いますから。」

「……わかった。やればいいんだろ、やれば。くっそ、コユキの旨い飯食いたかったなぁ。」

 ……マヤトさん強そうなのにカソミツさんには弱いなぁ

 諦めきったマヤトを背に、私たちは一旦ねぐらに戻った。


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