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デスゲームに巻き込まれたと思ったら天国だった件〜きままな無人島サバイバルライフを満喫します〜  作者: 亀丸物産


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九話 五日目――塩の味

 目を覚ました瞬間、喉が焼けるように痛んだ。

乾いている。

ペットボトルを傾ける。

ちゃぷん。

残っているのは、二口分ほどだった。


「……今日は本気で動かないと死にそう」


 火は安定している。

ヤシの実は残り三つ。

空腹も限界に近かった。


 初日からまともな食事をしていない。

身体が明らかにタンパク質を求めている。

それでも不思議と悲観はしていなかった。


 昨日、島を一周した。

どこに何があるかは、おおよそ頭へ入っている。

今日は東側の岩場だ。

潮がゆっくりと引き始めていた。


「今だ」


 潮だまりが姿を現す。

小魚。

小さなカニ。

そして、岩へ張り付く黒い貝。


「カサガイかな」


 指で押す。

びくりと動くだけで剥がれない。


「正面からじゃ無理か」


 ナイフを岩との隙間へ差し込む。

力を入れる。

てこの原理で持ち上げると――


ぱき。


 一つ。

もう一つ。


「よし」


 次々に剥がしていく。

夢中になっていた、その時だった。

足元が滑る。


「っ!」


 膝をつく。

手のひらが岩へ擦れた。

ひりりと痛む。

恐る恐る見る。

血は出ていない。


「……危なかった」


 こんな場所で怪我をしたら終わる。

深呼吸する。

焦るな。


 必要な分だけ。

そう思っていたのに、気づけば十五個ほど集めていた。


「ちょっと欲張りすぎたかな。」


 苦笑しながら拠点へ戻る。

火を強める。

火で熱した石の上へ貝を並べる。

しばらくすると身から汁が泡立ち始めた。

潮の香りが立ち上る。

思わず喉が鳴った。

ナイフで身を殻から剥がす。

白い身。

ふう、と息を吹きかける。

一口。


「……うま」


 塩味、旨味。

それだけなのに、涙が出そうになった。

四日間、ヤシの実ばかりだった。

甘さはあっても、この味はなかった。

身体が喜んでいる。

ゆっくり噛む。

飲み込む。

胃の奥がじんわりと熱くなる。


「生き返る……」


 足元をヤドカリが横切った。

思わず目で追う。


「食べられそう……」


 その考えが頭をよぎる。

だが、すぐ首を振った。


「ダメダメ」


 オカヤドカリは天然記念物。

監視されている状況で、余計なことはできない。

今は、カサガイで十分だ。

ふと、ペットボトルへ目を向ける。

残りは、ほんのわずか。

貝の塩気が、余計に喉を渇かせる。


「……まずい。」


 ヤシの実を一つ割る。

冷たい果汁が身体へ染み込む。

それでも足りない。


 明日。

明日こそ、水を見つけなければならない。

頭上をドローンが低く旋回する。

焼けた貝を映しているのだろう。

海は空を見上げて笑った。


「どう?」


「飯テロになってない?」


 返事はない。

火はある。

拠点もある。

タンパク質も少しだが手に入った。

足りないのは、たった一つ。

ペットボトルを逆さにする。


ちゃぷん。


 もう音しかしない。

海は黒い岩壁のある方角を見つめた。


「……明日、決める」


 そこに水がなければ。

きっと次はない。

波音だけが、静かに島へ響いていた。

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