二十八話 二十一・五日目ーー3人の脱落者
帝愛グループ本社・地下モニタールーム。
静寂。
壁一面に並ぶ十のモニターは、いつしか半分以上が黒く沈んでいた。
灯っている映像は、わずか五つ。
「台風通過後、第二次被害報告を開始します」
オペレーターの声だけが響く。
代表は腕を組み、黙って画面を見つめていた。
◇
最初の映像。
島番号02。
痩せた男が足を引きずって歩いている。
右足首は大きく腫れ、傷口は赤黒く変色していた。
「台風通過後、倒木の下敷きとなり負傷」
「傷口から細菌感染。高熱を発症」
男は二日間耐えた。
だが三日目。
歩けなくなった。
救助要請。
モニターが暗転する。
◇
島番号06。
女性。
崩れた拠点の前で立ち尽くしている。
屋根は飛び、火は消え、水の容器も失った。
立て直そうとした。
何度も。
だが雨で濡れた枝は燃えない。
体温は下がる。
精神状態も急激に悪化。
腕輪が危険域を示した。
「生命維持優先」
救助。
映像が消える。
◇
島番号09。
四十代の男性。
探索中に崩れた斜面へ足を踏み入れた。
地盤が崩れ落下。
その際、右肩を強打。
鎖骨骨折。
歩行不能となり、こちらも救助。
画面が暗くなる。
◇
「以上です」
オペレーターが静かに告げた。
十名。
八名。
五名。
そして――
二名。
モニターが切り替わる。
島番号03。
男。
火を起こしている。
動きに無駄がない。
台風で失った拠点を、もう組み直し始めている。
「元・陸上自衛官」
「三十八歳」
「危機対応能力は全参加者中トップ」
もう一つ。
島番号07。
山田海。
獣道にしゃがみ込み、輪罠を調整している。
指先が止まらない。
失敗を前提に、次を考えている。
「出版社勤務」
「二十七歳」
「危機適応能力は全参加者中トップ。」
代表が初めて口を開く。
「面白い」
誰も返事をしない。
代表は画面から目を離さず続ける。
「二人とも、強いわけじゃない」
部屋が静まり返る。
「強い人間なら、自然に勝とうとする」
海の映像が映る。
落ち葉を一枚ずつ動かし、罠を隠している。
男は折れた木を拾い、新しい支柱を組んでいる。
代表は、小さく笑った。
「だが、生き残る人間は違う」
少し間を置く。
「自然に勝とうとはしない」
「自然が過ぎ去るのを待ち」
「自然に合わせて、自分を変える」
代表はモニターを見渡した。
「だから、この二人は残った」
誰かが息を呑む。
代表は最後に静かに告げる。
「ここから先は、脱落者は出ない」
その一言に、部屋の空気が変わった。
運営は知っている。
腕輪のデータ。
行動履歴。
判断力。
生存能力。
すべてが示している。
この二人はもう、
“生き延び方”を知ってしまった。
モニターの中で、海が立ち上がる。
別の島では、男が焚き火に薪をくべる。
互いの存在を知らない二人。
それでも、三十日後。
この二人だけが、
同じ景色を見ることになる。




