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デスゲームに巻き込まれたと思ったら天国だった件〜きままな無人島サバイバルライフを満喫します〜  作者: 亀丸物産


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十九話 十四日目ーー狩りの難しさを知る

 朝。


「朝バナナ、うまいー!」


 熟したバナナを一本頬張る。

甘みが口いっぱいに広がる。

糖分が身体に染み込み、頭が少しずつ目覚めていく。


「よし」


 真っ先に向かったのは、昨日仕掛けた罠だった。

一つ目。

石はそのまま。

枝も倒れていない。


「……空振りか」


 二つ目。三つ目。

どれも同じ。

ただ――餌だけがきれいになくなっていた。


「……賢いな」


 鳥がつついたのか。

小動物が持ち去ったのか。

いずれにしても、罠は作っただけでは獲れない。

海はしゃがみ込み、仕掛けをじっと見つめた。

支点が深い。

石が重すぎる。

軽い鳥なら、餌だけ食べて逃げられてしまう。


「まだまだ甘いか」


 位置を変える。

開けた場所ではなく、低木の陰。

鳥が警戒しにくそうな場所を選ぶ。

支点も浅く調整し、少し触れただけで石が落ちるよう角度を変える。

さらに一つ追加した。


「精度より数、だったよね」


 森は、簡単には食料を与えてくれない。


◇


 バナナの群生地へ寄る。

熟し始めた実がいくつか増えていた。


「助かるなぁ」


 糖分は補給できる。

でも、身体が求めているのは別だった。


「タンパク質……欲しいな」


 魚や貝では足りない。

もっと大きな獲物。

自然と視線が森の奥へ向く。

白い影。

昨日見かけたヤギだった。


「……やるか」


 海は静かに立ち上がった。


◇


 落とし穴も考えた。

だが、掘る体力も時間も足りない。

なら、脚を狙う。


 森で太いツタを集める。

しなやかで、切れにくそうなものを選ぶ。

何本も編み込み、一本の太い縄にする。

作るのは、輪罠――スネア。

動画で何度も見たことがある。

地面へ輪を広げる。

輪の端は木へ固定。

脚が輪に入ったまま前へ進めば締まり、抜けなくなる仕組みだ。


「問題は強度だけど……」


 本物のロープではない。

暴れられたら切れるかもしれない。

それでも、何もしなければ何も始まらない。


◇


 ヤギの足跡を追う。

同じ場所が何度も踏み固められている。

やはり獣道だ。


 一つ目。

輪を地面へ置く。

落ち葉を薄く被せ、自然に見えるよう隠す。

端は近くの木へ固定。


 二つ目。三つ目。

できるだけ人の匂いを残さないよう慎重に作業する。

仕掛け終えた頃には、太陽が西へ傾き始めていた。

汗が額を伝う。

森は静かだった。


◇


 拠点へ戻る。

火を起こし、夕食の準備を始める。

今日の食材は、岩場で採ってきたカメノテと青パパイヤ。

カメノテは岩に張り付いて暮らす甲殻類で、その名の通り亀の手のような姿をしている。

缶へ水を張り、カメノテと細切りにした青パパイヤを入れる。

ぐつぐつと煮込む。

青パパイヤはそのままだと淡白だ。

でも、甲殻類の出汁を吸えば変わるかもしれない。


「カメノテの旨味が染みたら、いい感じなんじゃない?」


 蓋はない。

だから香りがそのまま立ち上る。

火から下ろし、一口。


「……おっ」


 思ったより悪くない。

カメノテの潮の香りと旨味を、青パパイヤがしっかり吸っている。

調味料なんてない。

それでも、十分に美味しかった。


「こういう発見、結構好きかも」


 新しい食べ方を試す。

失敗もする。

でも、それも楽しい。

鳥罠も。

ヤギ罠も。

料理も。

全部、試してみないと始まらない。


 十四日目。

森は今日も何も与えてくれなかった。

それでも海は、不満そうな顔ひとつしなかった。


「それもサバイバルの醍醐味でしょ」


 笑って、焚き火へ薪を一本くべる。

生きることだけで精一杯だった最初の十日間。

けれど今は違う。

工夫し、試し、失敗し、また挑戦する。

気づけば海は、この無人島での暮らしそのものを楽しみ始めていた。

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