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デスゲームに巻き込まれたと思ったら天国だった件〜きままな無人島サバイバルライフを満喫します〜  作者: 亀丸物産


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十三話 八日目――ペットボトルは裏切らない

 朝。

焚き火の熾を整えながら、海は真顔で呟いた。


「……魚、食べたい」


 思わず苦笑する。

貝もカニも美味しかった。

塩気があって、ちゃんとタンパク質も摂れる。

でも、一度まともな”食事”を味わってしまうと、人間は欲が出る。


「貝ってさ……美味しいけど、取るの結構大変なんだよねぇ」


 潮が引くのを待ち、

岩から剥がし、

殻を割って、

身を取り出す。

食べられる部分はほんの少し。

カニも同じだ。

三週間、この生活を続けられるかと聞かれたら――


「うん、たぶん飽きる」


 海は苦笑した。

もっと効率よく、もっと多く。

生き延びるには、それが必要だった。


 その視線が向かった先にあるのは――

昨日拾ったペットボトル。

海はそれを持ち上げる。


「文明、再出動」


 透明で軽く、それでいて丈夫。

そして加工しやすい。


「ほんと便利だなぁ……」


 ナイフで上部三分の一ほどを慎重に切り落とす。

ギコ、ギコ。

切り口は少し歪になった。


「……まぁ、使えればヨシ!」


 切り取った上部を逆さまにして本体へ差し込む。

漏斗型。

魚は餌を目指して中へ入る。

でも、一度入ると出口が狭く戻られない。


「これ考えた人、本当に天才だよね」


 感心しながら頷いた。

次は餌。

朝採ってきた貝を石で割り、身を取り出す。

それをさらに細かく潰した。

ぐちゃっ。


「……見た目は最低」


 でも匂いは強い。

魚からすれば、ご馳走のはずだ。

餌を底へ入れ、海は昨日確認していた潮だまりへ向かう。

小魚が群れていた岩陰。

ここなら期待できる。

ペットボトルを静かに沈め、石で固定した。


「お願いだから入ってね……」


 願いを込める。

だが、あとは待つしかない。

自然相手に焦っても意味はない。


    ◇


 その間、海は拠点へ戻り、湧き水を汲み、薪を集める。

時折、潮だまりの方へ視線が向く。


「……気になる」


 見に行きたい。

でも我慢。

何度も確認すれば魚は逃げる。

そう自分に言い聞かせる。

頭上では今日もドローンが静かに旋回していた。


「そんなに見たいなら、応援くらいしてよ」


 もちろん返事はない。


    ◇


 夕方になり潮がさらに引いた。


「……そろそろかな」


 海は潮だまりへ向かう。

正直、期待は半分。

自然はそんなに甘くない。

ペットボトルを持ち上げる。


 ずしっ。


「……ん?」


 水の重さだけじゃない。

中を覗き込む。


ぴちっ。


 銀色の影が跳ねた。


「……え?」


 一匹。もう一匹。

小さな魚が二匹、ペットボトルの中で泳いでいる。


「……入ってる」


 数秒、思考が止まる。

そして。


「やったぁぁぁぁぁ!!」


 無人島中に響くほどの歓声だった。

思わずその場で飛び跳ねる。

誰もいない。

だから遠慮もしない。


「すごい! 本当に入るんだ!」


 たった二匹。

それでも十分だった。

昨日までゼロだったものが、今日は二になった。

数字以上の意味がある。


「文明、最高!」


 昨日はゴミだと文句を言っていた。

今日は全力で感謝している。

現金なものだ。

でも、それでいい。

使えるものは使う。

それが生きるということだ。

海は大事そうにペットボトルを抱え、拠点へ戻った。


    ◇


 魚は小さい。

焼けばすぐ焦げてしまう。

そこで缶へ湧き水を入れ、内臓を取り除いた魚を丸ごと入れる。

塩気を足すため、海水を少しだけ加えた。

火にかける。

ぐつぐつと泡が立つ。

魚の香りが立ち上る。

思わず腹が鳴った。

十分ほど煮込み、少し冷ます。

缶を両手で持ち、一口。


「……おいしい」


 じんわりと旨味が広がる。

貝とは違う。

魚の出汁。

身体に染み込んでいく。


「ちゃんと魚料理だ……」


 思わず笑みがこぼれた。

量は少ない。

腹いっぱいにはならない。

それでも満足感は大きかった。

自分で考え、自分で作り、自分で捕った魚。

それを食べている。


「私、ちゃんと生きてる」


 胸の奥から、そんな実感が湧いてくる。

火の向こうで炎が静かに揺れる。

頭上ではドローンが今日も旋回していた。

海は空を見上げ、にやりと笑う。


「どう? 少しは見応え出てきたでしょ?」


 返事はない。

それでも構わない。


 八日目。

火がある。

水がある。

拠点がある。

そして――魚を捕る方法も手に入れた。

少しずつ。

本当に少しずつ。

この島は、「生き延びる場所」から「暮らせる場所」へ変わり始めていた。

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