第四十八話 少しずつ戻る日常
あの事件から三日ほど経った
わかなは幸い、大きなけがはなかった
けど、心には深く傷を負っている
いつもは、許嫁だと知られないために別々で行くことが多いが
今日はなんとなく、一人で歩かせる気になれなかった
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「行くぞー」
わかな「待って待って」
二階からわかなが降りてくる
わかな「お待たせ」
わかなは笑っていた
以前と同じ笑顔のはずなのに、どこかぎこちなかった
「..........行くか」
わかな「うん」
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登校中
二人ともほとんど喋らない
少し沈黙が続いたあと
「........まだ怖いか?」
わかなは少しだけ足を止めた
わかな「......うん」
「そうか」
わかな「夢に出てくるの」
「..........」
わかな「また閉じ込められる夢」
わかな「竜也が来てくれない夢」
「.........」
俺は少し考えてから言った
「じゃあさ」
「これ持っとけ」
そう言って、小さなキーホルダーを渡す
わかな「?」
「前、一緒にゲームセンターで取ったやつ」
わかな「あ........」
小さな猫のマスコットだった
「怖くなったら、それ見ろ」
「俺を思い出せ」
「絶対助けに行くから」
「何があっても.......な」
わかな「........うん」
その笑顔は、
今度はちゃんと、本物だった
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学校
淳平「おっはー!」
りん「二人とも元気そうだな」
愛奈「わかなー!」
由衣「大丈夫?」
わかな「うん、もう平気」
愛奈「本当に?」
わかな「.......少しだけ」
愛奈は何も言わず、
ギュッ
わかなを抱きしめた
わかな「え?」
愛奈「怖かったよね」
愛奈「もう無理しなくていいから」
由衣「私たちもいるし」
りん「次は絶対助ける」
淳平「次なんか来ねえよ!」
「それが一番だけどな」
みんなが笑った
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昼休み
「なあ」
淳平「ん?」
「この前はありがとな」
淳平「急にどうした」
「ちゃんと言ってなかったから」
りん「俺も別に礼なんかいらねえ」
淳平「友達助けるのなんて当たり前だろ」
「..........」
由衣「竜也って案外そういうとこ真面目よね」
愛奈「そこが竜也らしいじゃん」
「............そうか」
「まあ、感謝くらいは伝えとかないと、と思ってな」
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放課後
帰り道
桜の花びらが風に舞う
わかな「ねえ」
「ん?」
わかな「これからも..........ずっと隣にいてね」
「当たり前だろ」
「約束する」
わかな「........うん」
俺たちは手をつないで並んで歩く
春風が吹き抜ける
あの日失いかけた日常は
少しずつ、俺たちのもとへ戻り始めていた




