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第六話 東シナ海大決戦

豊後水道を抜けた計十三隻の第一機動艦隊は、夕闇が迫る東シナ海の海原へと進出していた。常温核融合炉を動力とする艦隊は、重油の黒煙を上げることもなく、不気味なほど静かに、しかし圧倒的な威圧感を持って波を蹴立てて進む。その時、大和のフェーズドアレイレーダーが、静寂を破るけたたましい電子警告音を鳴り響かせた。第一艦橋の空間に浮かぶ統合ホログラフィック・ディスプレイの端、日本領海の外側線アウター・ラインを越えて侵入してくる、無数の赤い光点が点滅を始める。「電探室より艦橋! 敵艦隊の正体が判明しました! 中国海軍・北海艦隊および東海艦隊の連合部隊です! 空母『遼寧』『山東』、そして最新鋭の電磁カタパルト搭載空母『福建』を中心とした、計三個空母打撃群! 水上戦闘艦艇、総数六十隻以上! 我が国のレアアース採掘基地へ向けて直進中!」電探室からの緊迫した報告に、第一艦橋の空気が一瞬で凍りついた。佐藤宏航海長が不敵に笑うが、その額には大粒の汗がにじんでいる。日本の急激な資源大国化と、それに伴う異次元の軍備増強を最大の脅威とみなした中国海軍が、数の暴力で新生日本海軍を根こそぎ圧殺すべく、その全力をこの海域に投入してきたのだ。東シナ海を埋め尽くすほどの、六十隻以上の巨大な赤い影。「フン、数だけは揃えてきたな。だが、我が第一機動艦隊の『それぞれ』の力を見せるには、絶好の舞台だ」新海努総司令官は、冷徹な目でホログラムに映る敵の布陣を見つめ、即座に全艦へ超広帯域暗号通信(データリンク『アマノハラ』)を通じて命令を下した。「空母『しなの』を筆頭とする五大空母へ伝達! 多段式マルチデッキをフル稼働させ、F―35BおよびFB―22、計二百機を同時スクランブル! 敵の空母『福建』から発艦したステルス戦闘機『J―35』の大編隊を、東シナ海上空で完全に圧殺せよ! 同時に、深海に潜む大鯨型五隻! 『たいげい』『じんげい』『ちょうげい』『はくげい』『らんげい』! 敵艦隊の真下へと無音潜航し、水中発射型VLSより超高速魚雷の一斉信管を開放。敵の目を海中に引きつけろ!」『ハッ! 五大空母、航空隊発艦! 大鯨型五大潜水艦、水中より攻撃開始!!』五大空母の上下二段の甲板から、青白い電磁カタパルトの光の筋とともに、最新鋭のステルス戦闘機が嵐のような轟音を響かせて夜空へ射出されていく。中国側の予想を遥かに超える展開速度。東シナ海の成層圏で、歴史上例を見ない規模の超音速ステルスドッグファイトが幕を開けた。同時に、完全な無音推進で敵の陣形中央、まさに空母『福建』の真下へと滑り込んだ『たいげい』をはじめとする五隻の巨大潜水艦から、網の目のように張り巡らされた超高速魚雷が、中国艦艇の艦底を容赦なく襲う。海面が次々と爆発の炎で割れ、中国の駆逐艦が悲鳴を上げる間もなく傾いていく。「続いて、敵の防空の要である〇五五型駆逐艦を排除する。大和、むさし、あまてらす、五十一センチ電磁加速主砲レールガン、照準合致……全艦、てーっ!!」新海の腕が振り下ろされた瞬間、三戦艦計二十七門の五1センチ巨砲が一斉に火を噴いた。ドォン!!!音速のマッハ七を超える速度で放たれた五十一センチの超巨大徹甲弾は、衝撃波で周囲の海面を数百メートルにわたって陥没させ、文字通り海を割った。中国海軍の防空駆逐艦〇五五型四隻は、迎撃の機会すら与えられず、その圧倒的な運動エネルギーによって一瞬で艦底まで真っ二つに叩き割られ、巨大な火柱を上げて爆発・消滅した。上空からの航空隊、海中からの魚雷、そして地平線外からの五十一センチ主砲という、空・海・水中からの完璧な同時飽和攻撃を受け、中国艦隊の陣形は恐怖とパニックで激しく乱れ始める。「攻撃の手を緩めるな! 次の標的は敵空母だ!」新海の怒声が響く。しかしその時、大和の未来規格レーダーが、別の不穏な音を捉えた。中国大陸の奥深く、内陸のミサイル基地から、複数の巨大な熱源が猛烈な勢いで急上昇を始めている。「総司令官! 中国本土より緊急発信! 敵の対艦弾道ミサイル『DF―21D(空母キラー)』および『DF―26』、計二十四発が本艦隊へ向けて発射されました!! 大気圏外から、マッハ十以上の超極超音速で落下してきます!」大気圏外から降り注ぐ、現代の防衛技術では迎撃不可能な悪魔のミサイル。第一機動艦隊の十三隻を一網打尽にせんとする、中国軍究極の反撃だった。艦橋のオペレーターたちが恐怖に顔を引きつらせる。しかし、新海は艦長席を強く握りしめ、不敵に笑った。「慌てるな。言ったはずだ。我が艦隊の『それぞれ』には、固有の神の力が宿っていると。全艦、データリンク『アマノハラ』最大出力! 迎撃戦闘用意!」大気圏外からの究極の奇襲に対し、それぞれの超兵器を持つ十三隻の神々と新海努が、今まさに反撃の火蓋を切ろうとしていた――。

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