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第五話 神話の艦隊

「新海大佐、この大和が我が軍の唯一の切り札だと思ったら大間違いですよ」新生日本海軍少将、吉田京は不敵な笑みを浮かべると、コントロール卓の中央に据えられた高輝度メインレバーを静かに、しかし力強く押し上げた。次の瞬間、第一艦橋の中央に鎮座する統合ホログラフィック・ディスプレイが、これまでにない鮮烈な光を放って空間を明滅させた。青白い光の粒子が空中へと舞い上がり、瞬く間に瀬戸内海の超極極秘海域、そして呉基地の周囲に広がる広大な大密林の地下ドックの全貌を、精巧な三次元立体映像として描き出していく。「これは……」新海努は艦長席の肘掛けを掴み、驚愕のあまり思わず身を乗り出した。その眼前に広がっていたのは、単なる大艦隊の映像ではなかった。それは、人類の軍事史を一夜にして過去のものにする、文字通りの「神話の艦隊」の全貌であった。ホログラムの海に最初に浮かび上がったのは、大和型戦艦二番艦『むさし』、そして三番艦『あまてらす』の威風堂々たる雄姿だった。だが、新海の視線を最も釘付けにしたのは、その背後にそびえ立つ、動く洋上要塞とでも呼ぶべき五隻の超巨大原子力空母群、そしてさらに深海を模した濃紺の光の中に不気味に潜航する、五隻の黒き超巨大原子力潜水艦のシルエットだった。「我が日本海軍が、この前代未聞の資源特需と、アメリカや西側諸国から買い叩いた最先端技術のすべてを注ぎ込んで同時開発・竣工させた主力……超大型多段式原子力空母『しなの』『あかぎ』『そうりゅう』『ひりゅう』『ずいかく』。そして、深海の真の支配者たる超大型原子力潜水艦『たいげい』『じんげい』『ちょうげい』『はくげい』『らんげい』の五大鯨型潜水艦です」新海は言葉を失った。全長四百メートルを超え、上下に分かれた「多段式マルチデッキ」構造を持つ五隻の原子力空母は、アメリカ海軍が誇る最新鋭のフォード級すら子供に見えるほどの巨体だ。上段の広大な甲板でF―35Bステルス戦闘機や最新の無人攻撃機を電磁カタパルトで猛烈な勢いで射出しながら、同時に下段の専用甲板から早期警戒機や対潜ヘリを並行して発着艦させる。現代の航空軍事常識を完全に置き去りにした、移動する絶対航空要塞。そして、深海で息を潜める五隻の大鯨型潜水艦は、常温核融合炉による無限の潜航能力と、完全無音推進システム、そして水中発射型VLS(垂直ミサイル発射装置)を艦首から艦尾まで敷き詰めた、深海の死神だった。「新海総司令官、驚くのはまだ早い」吉田少将の笑みがさらに深まり、ディスプレイの文字データが次々と更新されていく。「この十三隻のそれぞれが、単なる同型艦ではない。個別にあらゆる局面を想定し、異なる独自の超兵器を搭載しているのです。大和が純粋な物理大火力の絶対王者なら、二番艦『むさし』の兵装は【超高出力・指向性対空レーザー砲】を主軸とし、三番艦『あまてらす』には【全方位型電磁パルス(EMP)投射システム】が組み込まれている。完璧な防空の神と、電子戦の悪魔です」さらに画面に踊るデータは、新海の想像を絶していた。空母『しなの』が有人機を統べる旗艦なら、『あかぎ』は数百機の無人自爆ドローンを群れとして制御する脳。そして深海の『たいげい』にいたっては、水中から大気圏外の目標を直接狙い撃つ【対衛星・対弾道ミサイル迎撃システム】が単独で組み込まれていた。「大和型三戦艦、五大空母、そして大鯨型五大潜水艦……。それぞれが世界最強の個性を持ち、それらがデータリンクで繋がることで、ひとつの『生きた神話』となるわけか。アメリカやロシアの最新兵器をすべて組み込み、我が国は世界最強の機動艦隊を編成したのだな」新海の言葉に、第一艦橋に詰める若い海軍オペレーターたちも、興奮と誇りに満ちた表情で力強く頷いた。かつて日本の海を守っていた自衛隊はもういない。世界最強の資源と、未来の軍事力を手に入れた新生「日本海軍」の夜明けが、今ここに告げられたのだ。「その通りです。そして、この空、海、水中すべてを統べる第一機動艦隊の総司令官に、あなたを任命したい。新海大佐、いや、新海総司令官。世界に、新しい日本の力を見せつけてやりなさい」新海は支給されたばかりの、深い紺色の海軍大佐――いや、総司令官の軍服の襟を正し、艦長席からゆっくりと、しかし圧倒的な決意を秘めて立ち上がった。見上げれば、大和の前甲板に据えられた五十一センチ三連装砲の巨躯が、第一艦橋の窓越しに鈍く輝いている。「航海長、全通電。システムの起動を急げ。これより我が艦隊は、日本海軍・第一機動艦隊として、日本の新しい未来を守る。……第一機動艦隊、抜錨! 五十一センチ砲の威力、世界に叩き込んでやる!」『ハッ! 大和以下、全十三隻、戦闘配置完了! 瀬戸内海、超極秘海域より、出撃します!!』重厚な防壁が開き、二〇二七年の青い海へと、世界最強のイージス艦隊がその凄まじい鉄の翼を広げて出撃していった。

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