第四話 新国家日本
4話きたぜ
「……つまり、これからの日本に自衛隊はなく、新しい『日本海軍』が世界の頂点に立つ。その象徴となるのが、この大和なのですね」 新海努は、深く息を吐き出しながら、呉基地の地下ドックに鎮座する巨体を見上げた。 数時間前まで、自分は海上保安庁の巡視船『ゆうじま』の艦長として、坊ノ岬沖でこの船を追いかけていた。それが今や、戦後初の憲法改正、国家の資源大国化、そして「日本海軍」の復活という、歴史の転換点のど真ん中に立たされている。「その通りです。新海艦長……いや、新海大佐」 呉基地の一等海佐(新・海軍大佐)、吉田京が不敵に笑った。「世界は我が国の石油やレアアースを求めて、最新鋭の兵器を次々と差し出してきている。アメリカのフォード級空母やF-22、ロシアのSu-57……これらをすべて組み込み、我が国は世界最強の機動艦隊を編成する。そして、その総旗艦の艦長に、あなたを任命したい」「私が、大和の艦長に……」 新海は支給されたばかりの、深い紺色の海軍大佐の軍服の襟を正した。 見上げれば、大和の前甲板に据えられた51センチ三連装砲の砲身が、LEDの鋭い光を浴びて鈍く輝いている。その根元には、現代の最先端科学である「電磁加速砲」のユニットが隙間なく組み込まれ、艦橋の周囲には4機のCIWSと6機のファランクス、そしてFB‐22ステルス戦闘機を運用するための最新の全天候型カタパルトまでが装備されていた。「これだけのバケモノだ。生半可な操艦では扱いきれんぞ」「だからこそ、坊ノ岬沖でこの艦と最初に対峙し、一歩も引かなかったあなたに委ねるのです。すでに世界各国から買い叩いた最新の巡航ミサイル、艦対空ミサイルも、前後の20門ずつの発射装置(VLS)に満載されています。いつでも、世界を相手に戦える」 新海は大和の舷門をくぐり、近代的なデジタルコックピットへと生まれ変わった第一艦橋へと足を踏み入れた。 かつてアナログな計器が並んでいた場所には、ホログラフィック・ディスプレイが浮かび上がり、日本周辺の海域のレーダー情報がリアルタイムで刻まれている。 新海は艦長席へと歩み寄り、そのシートに深く腰掛けた。「航海長、全通電。システムの起動を急げ。JCG(海上保安庁)の時代は終わった。これより本艦は、大日本帝国海軍・戦艦『大和』として、日本の新しい海を守る」『ハッ! システム、オールグリーン。51センチ主砲、およびレールガン、オンライン! 新生大和、いつでも出撃可能です!』 オペレーターたちの力強い声が艦橋に響く。 二〇二七年、資源大国となった日本の大いなる野望を乗せて、人類の歴史上、最も凶悪な進化を遂げた「イージス大和」が、今まさにその眠りから目を覚まそうとしていた。
疲れる




