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第二十九話 龍の咆哮と鋼の豪雨

『神龍』の九百八十七メートルにおよぶ三段式マルチデッキから放たれたのは、新・大日本連邦海軍が誇る最強の混成航空打撃部隊であった。成層圏の冷気を切り裂いて進むのは、八発の新型エンジンを轟かせる重爆撃機『B―52J』。その傍らを、プロペラとジェットを併せ持つ巨躯の『B―36J』が不気味な重低音を響かせながら巡航し、さらにその上空からは、白く美しい主翼を激しく輝かせた超音速爆撃機『XB―70J』がマッハ三の衝撃波ソニックブームを日本海に叩きつけながら突撃していく。これら超大型爆撃機を護衛するのは、対艦攻撃能力を極限まで高めた蒼き『F―2改』、そして日本海軍の日の丸を纏った無敵のステルス戦闘機『F―22J改』の大編隊であった。「敵航空隊、本艦隊の上空へと急速接近! レーダーの計測限界を完全に突破! 画面が機影の光点で埋め尽くされています!」サハリン沖へと敗走を続けていたロシア海軍の残存水上戦闘艦三十隻の艦橋では、オペレーターたちが半狂乱の叫びを上げていた。総旗艦を長門型四姉妹に爆沈され、陣形も防空指揮系統も完全に喪失した彼らに、空を覆い尽くす「鉄の翼の嵐」を迎撃する術など残されていなかった。「目标、ロシア海軍残存艦隊全群。一隻の例外なく、海の藻屑に変えろ」『神龍』の広大な第一艦橋からデータリンク『アマノハラ』を通じて下された新海努総司令官の冷徹な号令。それが、北の巨頭に向けた絶対的な処刑の合図となった。戦闘の火蓋を切ったのは、超音速爆撃機『XB―70J』であった。マッハ三の速度を維持したまま、機体下部から最新の極超音速対艦ミサイルが次々と投下され、音速を遥かに超える光の矢となってロシア艦へと殺到する。さらに『B―52J』と『B―36J』の巨体から、数千発にもおよぶ近代化改修型精密誘導爆弾が、まるで黒い豪雨のように夜空から降り注いだ。「CIWS、作動しない! 敵のF―22J改による強力な指向性ジャミングで、我が方の電子兵装がすべてフリーズしている!」「う、うわぁぁぁぁッ!!」ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴガァァァァァン!!!!極寒の日本海北部、サハリン沖の全域が、夜の闇を完全に消し去るほどの凄まじい大爆発の炎によって埋め尽くされた。ロシア海軍が誇るアドミラル・ゴルシコフ級フリゲートや最新鋭駆逐艦群は、爆弾の直撃とミサイルの猛火を肉体に直接受けるように浴び、上部構造物を木端微塵に吹き飛ばされながら次々と横転していった。逃げ惑う敵艦の懐へと滑り込んだ『F―2改』が、超低空からのシースキミング魚雷を突き刺し、巨大な水柱とともにロシア艦を艦底から真っ二つに叩き割る。数分前まで「世界最強の水上打撃艦隊」の誇りを纏っていたロシア太平洋艦隊の残滓は、神龍から放たれた最強の航空隊による一方的な蹂躙の前に、ただの一隻も生き残ることなく、完全に殲滅された。海面には引きちぎられた鉄板と、炎上する重油の黒煙だけが残り、北の巨頭の野望は日本海の底へと静かに沈んでいった。「サハリン沖、敵水上艦艇三十隻の完全消滅を確認。……これにて、ロシア海軍太平洋艦隊、水上・水中ともに全滅です」戦艦『やまと』の第一艦橋からデータリンクで繋がっている佐藤宏航海長の声が、スピーカーから響く。その声には、あまりにも圧倒的な破壊力を目の当たりにした男の、深い畏怖が混じっていた。「よし。金剛型、長門型、および神龍はただちに反転。呉の極秘地下ドックへ帰投せよ」新海努総司令官は艦長席からゆっくりと立ち上がり、自らの軍服の襟を正した。眼鏡の奥の瞳には、ロシア艦隊を殲滅した満足感ではなく、三日前に三菱重工から届いたあの「究極の連絡」への、抑えきれない高揚感が満ち満ちていた。「これより、第一機動艦隊のすべての主力艦を対象とした、人類史上最大の『最終換装計画』を執行する。試験段階のやまと、むさし、あまてらす。そしてもがみ型、金剛型、長門型の全四隻の兄弟たちをすべてドックへ収容せよ。三日前に竣工した新たなる大和型『月詠』『紀伊』を艦隊に迎え、全主力艦の主砲を『核レールガン三連装砲』、および『レーザー波動砲三連装砲』へと完全に置き換える。世界はこれから、本物の神話の意味を知ることになる」呉基地の超極秘地下ドックの重厚なハッチが開き、瀬戸内海の暗闇のなかで、新たな二隻の巨獣『月詠』と『紀伊』、そして全長九百八十七メートルの『神龍』、さらに核レールガンとレーザー波動砲という「神罰の牙」を全身に纏うための主力艦たちが、世界を完全に一つの秩序へと統一するための「究極の新生」へ向かって、静かにその歩みを進めていくのだった。

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