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第二十七話 漆黒の龍、目覚める

ロシア海軍太平洋艦隊の総旗艦『アドミラル・ナヒーモフ』、およびその直衛フリゲート八隻が、長門型四姉妹の放った計三十二門の四十六センチ電磁加速主砲レールガンの一斉斉射によって一瞬で海の藻屑と化した日本海北部。波濤逆巻く極限の戦場には、巨大な水柱の名残である白煙と、燃え盛るロシア艦の重油の炎だけが不気味に揺らめいていた。「金剛型四姉妹、および長門型四姉妹、すべての新型主砲の駆動システム、オールグリーン。常温核融合炉のエネルギー供給も完全に安定しています」一番艦『ながと』の統合艦橋からデータリンクを通じて入る報告を聞きながら、総司令官・新海努大佐は眼鏡を指で押し上げ、不敵な笑みを浮かべた。三日前、三菱重工から入ったあの極秘連絡。それこそが、この日本海北部での圧倒的な真っ向勝負ラインバトルを完璧な大勝利へと導く絶対的な鍵だったのだ。世界はまだ知らない。ハワイ沖でアメリカ・イギリス・オーストラリアの連合艦隊を無傷で完封した戦艦『やまと』やもがみ型航空戦艦四隻が、いまだ出力を半分も解放していない試験段階の兵器に過ぎなかったことを。そして、その試験段階のデータをもとに、三日前、三菱重工の極秘地下ドックにおいて、すべてを過去にする本物の超巨大原子力空母が完全完成を遂げていたという事実を。その新巨大原子力空母の名は、『神龍しんりゅう』。全長九百八十七メートル。一キロメートルに迫るその巨体は、人類がこれまでに建造したあらゆる洋上建造物を遥かに超越した、文字通りの「浮遊する超巨大人工島」であり、新・大日本連邦の圧倒的な富と超技術が具現化した、まさに絶対的な覇王の城であった。アメリカのフォード級を三隻縦に並べてもまだ足りないその漆黒の船体は、これまでに日本海軍が建造した五大原子力空母『しなの』らをも子供に見せるほどの、まさに動く超大型洋上航空要塞であった。さらに、その極秘連絡にはミリタリーオタクである新海を最も狂喜乱舞させる衝撃的な内容が含まれていた。『――新海総司令官へ緊急電。本日、三菱重工長崎造船所の地下特区において、新たなる大和型超弩級改修戦艦、四番艦『月詠つくよみ』、および五番艦『紀伊きい』の二隻が完全竣工しました。さらに、かねてより極秘裏に開発を進めていた究極の決戦兵装……大和型、もがみ型、金剛型、長門型のすべてに搭載予定であった「核レールガン三連装砲」、および「レーザー波動砲三連装砲」への全面兵装置き換え準備が完了したことを報告します』核弾頭をマッハ十以上の速度で超長距離から直接撃ち込む「核レールガン」、および空間そのものを光の奔流で焼き尽くす「レーザー波動砲」。実験機であった『やまと』たちを文字通りの神へと昇華させる真の最終兵器の換装準備が、ついに整ったのだ。「新海総司令官、ロシア艦隊の残存水上戦闘艦、計三十隻が陣形を完全に崩壊させながらも、サハリン沖へ向けて必死の撤退リトリートを開始しました!」戦艦『やまと』の第一艦橋からデータリンクで繋がっている航海長・佐藤宏の声が、興奮を隠せない様子でスピーカーから響く。「逃がすか。彼らは我が国の領海へ核を撃ち込もうとしたのだ。この日本海を彼らの墓場にしてやるのが、連邦海軍の礼儀というものだ」新海は私服のジーンズのポケットから軍用端末アマノハラ・モバイルを取り出すと、その画面中央に輝く、漆黒の龍のエンブレムを力強くタップした。「三菱重工極秘ドックより緊急展開、新巨大原子力空母『神龍』――オンライン。……日本海北部戦域へ、その真の姿を現せ!」次の瞬間、ロシア艦隊が必死に逃走を図るサハリン沖の夜霧の向こうから、空間そのものが激しく歪むほどの重低音を響かせ、全長九百八十七メートルの黒き巨獣『神龍』が、最初からそこに潜んでいたかのように堂々と姿を現した。そのあまりにも巨大すぎる漆黒の船体と、中央にそびえ立つたった一つの超巨大統合型艦橋の威容に、逃げ惑うロシア軍の兵士たちは、神の裁きを前にしたかのように絶望の悲鳴を上げた。「『神龍』、データリンク『アマノハラ』接続完了! 三段式マルチデッキ、全カタパルト、電磁チャージ百パーセント!」「よし、仕上げだ。新巨大原子力空母『神龍』、全航空セクション稼働! 日本製B―52J、および超大型重爆撃機B―36J、幻の超音速爆撃機を新生させたXB―70Jを発艦させろ! さらに直衛戦闘機として、F―2改、およびアメリカから買い叩いた最強のステルス戦闘機F―22J改を同時スクランブル! 逃げ惑うロシアの残存艦隊を、我が連邦海軍の誇る『最強の鉄の翼』で一瞬にして一掃せよ!」新海の興奮に満ちた覇王の命令とともに、『神龍』の上下三段に分かれた広大な飛行甲板から、青白い電磁カタパルトの閃光が嵐のように幾重にも瞬いた。最初に上段デッキから射出されたのは、八発のエンジンを轟かせるB―52Jの大編隊と、プロペラとジェットを併せ持つ巨躯のB―36J。続いて、その白く美しい主翼から常温核融合ガスタービンの凄まじい排気熱を揺らめかせ、マッハ三を超える超音速爆撃機XB―70Jが夜霧を切り裂いて飛び出していく。さらに、中段と下段のデッキからは、対艦攻撃能力を極限まで高めた蒼きF―2改と、日本海軍の日の丸を纏った無敵のステルス戦闘機F―22J改が、まるで獲物へ群がるハヤブサの如き速度で次々と射出されていった。九百八十七メートルの巨体だからこそ可能とした、戦略爆撃機、超音速機、最新鋭ステルス戦闘機が入り乱れる狂気的な同時大量スクランブル。極寒の日本海の空を完全に覆い尽くした最強の航空隊が、逃げ惑うロシアの残存艦隊に向けて、一歩も退かぬ破滅の鉄槌を振り下ろそうとしていた。

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