第二十六話 鉄の暴風雨と長門型四姉妹
凍てつく風が吹き荒れる日本海北部。灰色の雲が低く垂れ込め、荒れ狂う高波が激しく船体を叩く極限の戦場において、ロシア海軍太平洋艦隊の放った八十発の極超音速対艦ミサイル『ツィルコン』の猛火。それは金剛型四姉妹の「新素材チタン・セラミック超重複合装甲」の前に物理的に完全拡散され、傷一つ付けることなく無効化された。爆煙を切り裂いて四十ノットの超高速で疾走を続ける金剛型の威容を前に、ロシア艦隊は一瞬にして底知れない恐怖に包まれ、その陣形を大きく乱していた。しかし、新海努総司令官の容赦ない戦術は、これだけにとどまらなかった。「金剛型四姉妹は、あくまでも敵の第一波ミサイルを引き付けるための『高速の盾』に過ぎん。ロシア海軍よ、我が国の重工業特需が本気で蘇らせた、もう一つの『真の神話』を目に焼き付けるがいい」新海が通信レバーを叩き、データリンク『アマノハラ』の第二段階を解放したその瞬間、金剛型四姉妹の遥か後方、日本海の白波を割りながら、息を呑むほどに巨大で重厚な「四隻の超弩級戦艦」がその姿を現した。それこそが、かつて世界のビッグ7と謳われ、日本国民の誇りとして愛され続けた伝説の名艦の名を冠する、最新鋭超近代化一等重戦艦――『ながと』『むつ』、そして三番艦『びぜん』、四番艦『さつま』の長門型四姉妹であった。もちろん、この四隻にも、三日前に完成したばかりの最新鋭主砲が完全に換装されていた。「な、何だあの圧倒的な威圧感は……! 金剛型よりも遥かに巨大だ!」佐藤宏航海長がホログラムに映し出された長門型四姉妹のスペックを見て絶句する。姿を現した長門型四姉妹は、船体全長二百四十メートル、排水量五万トンを超える重装甲要塞であった。かつての美しい屈曲煙突や城郭型艦橋のシルエットをベースにしながらも、中身は未来の超科学で完全に改修されている。最大の特徴は、その前部に二基、後部に二基据え付けられた、三日前に完成報告のあった新型「四十六センチ連装電磁加速主砲」計八門。それが四隻、合計三 三十二門という、水上打撃戦における絶対的な破壊の権化であった。さらに艦体全面には、金剛型を上回る極厚の重重複合装甲が施され、ロシア軍のいかなる大口径砲をも弾き返す「不落の城塞」と化していた。「長門型四姉妹、オールオンライン! 一番艦『ながと』を筆頭に横一列の斉射陣形を形成、四十六センチ砲の加速チャージを開始します!」四隻の長門型の主砲身が、うなりを上げてロシア海軍の総旗艦『アドミラル・ナヒーモフ』へと一斉に向きを合わせた。常温核融合炉から生み出される全エネルギーが、三十二門の四十六センチ砲身へと注ぎ込まれ、日本海を青白い電磁の光が冷酷に照らし出す。「よくぞ揃ってくれた、我が連邦海軍の誇る重戦艦たちよ。金剛型が切り開いた敵の防空網の穴へ、最大火力を叩き込め。長門型四隻、全主砲、てーっ!!」新海の腕が振り下ろされた瞬間、日本海北部が真昼を越える閃光で爆発した。ドォォォォォォォォォン!!!マッハ十の超極超音速で放たれた長門型四姉妹の計三十二門の四十六センチ徹甲弾が、空間をねじ切るような衝撃波を伴ってロシア艦隊へと殺到した。ロシア海軍の総旗艦『アドミラル・ナヒーモフ』、および随伴するアドミラル・ゴルシコフ級フリゲート計八隻は、迎撃の機会すら与えられず、三十二発の圧倒的な運動エネルギーの激突の前に、一瞬にして艦橋や機関部を真っ二つに叩き割られ、大爆発とともに激しい水柱の中に消え去った。「敵総旗艦『アドミラル・ナヒーモフ』大破爆沈! 随伴艦八隻、一撃で消滅判定です!」金剛型四姉妹の無敵の盾、そして長門型四姉妹の圧倒的な絶対火力。北の巨頭が誇った水上打撃艦隊は、日本海軍が誇る二大新兵器の完璧な連携の前に、ただの一発の有効打すら与えられぬまま、文字通り灰へと変えられていくのだった。




