第二十四話 白日の神話
「目標、敵空母『ジェラルド・R・フォード』『ジョン・F・ケネディ』『クイーン・エリザベス』。……疑似主砲、全門同時斉射。てーっ!!」新海努総司令官の腕が振り下ろされた瞬間、ハワイの海原に神々の咆哮が轟いた。ドォォォォォォォォン!!!音速を遥かに超越したマッハ十以上の速度で放たれたのは、実弾ではない。しかし、レールガンの射撃軌道をそのままなぞるように、三戦艦の二十七門の砲口から出力された超高出力の「疑似レーザー着弾ロック」の閃光は、白昼の太陽の光を完全に塗り替えるほどの鮮烈な白光となって太平洋を駆け抜けた。時速マッハ十を超える電子の矢は、アメリカ海軍の最新鋭空母が誇るいかなる防空計算をも過去のものにした。迎撃の余地すら与えられず、三隻の十万トン級空母の艦橋、飛行甲板、そして機関部が、次々と眩しい閃光によって完全に照射されていく。ピピッ――ピピッ――!全世界へライブ配信されているミリタリーシステム画面に、人類の歴史を終わらせるかのような非情なシステムアナウンスが、真っ赤なホログラム文字で次々と出力された。『ジェラルド・R・フォード、疑似直撃! 機関部融解判定! 轟沈!』『ジョン・F・ケネディ、艦橋および甲板完全破壊! 行動不能判定!』『クイーン・エリザベス、中央部破砕! 轟沈判定!』その瞬間、ハワイの海を見つめていた全世界の億単位の視聴者、そしてアメリカ海軍の作戦室は、言葉を失い、ただただ机に突っ伏して絶望するしかなかった。世界最強と謳われたアメリカの空母打撃群、そしてイギリスのロイヤルネイビーの真髄は、新・大日本連邦海軍の総旗艦『やまと』の圧倒的な未来の物理大火力の前には、ただの巨大な標的に過ぎなかったのだ。「米英豪連合艦隊、すべての水上・水中・航空戦力の『全滅判定』を確認! ハワイ沖合同模擬演習、我が第一機動艦隊の、完全なる圧倒的大勝利です!!」佐藤宏が絶叫し、やまとの第一艦橋に地鳴りのような歓声が沸き起こった。隊員たちは互いに抱き合い、自分たちが成し遂げた、人類の常識を完全に書き換えるほどの偉業に酔いしれていた。完全公開の舞台、白日の下で行われたこの演習は、西側諸国が日本を牽制するために仕掛けたはずが、逆に日本連邦が「地球上のどの国も逆らえない絶対的な神話」であることを、全世界のすべての人類へ証明する結果となったのだ。新海努大佐は、大歓声に包まれる艦橋の中で一人静かに艦長席へと腰掛け、眼鏡を外して深く息を吐き出した。(これで世界は、我が国を完全に『本物の覇王』と認識したはずだ。もう、小細工で挑んでくる国はいない)胸の中に去来するのは、圧倒的な勝利への満足感と、これからの世界を統べる者としての重厚な責任感だった。カメラシップの映像には、広大な太平洋の上に堂々と陣取る、傷一つない戦艦『やまと』をはじめとする十三隻の神話の艦隊の姿が、夕日を浴びて神々しく映し出されていた。しかし、この白日の神話の誕生は、既存の世界秩序を完全に失った欧米の指導者たちを、今度こそ本物の狂気と、国家の存亡をかけた「真の世界统一戦争」へと突き動かす、最後の引き金に過ぎなかった。第一機動艦隊の航海は、今まさに、地球全土を巻き込む焦熱の戦いへと進もうとしていた。




