第二十話:白日の下の王座
ハワイ・オアフ島から南西に数百マイル離れた演習海域。そこは「極秘」の闇の中ではなく、全世界の報道陣や軍事関係者が見守る【完全公開】の白日の下に晒されていた。東シナ海と日本海で圧倒的な超火力を証明し、新・大日本連邦へと生まれ変わった日本の異次元の力。西側諸国が誇る現代海洋軍事の最高峰であるアメリカ、イギリス、オーストラリアの三ヶ国(AUKUS)は、その技術の底知れなさを何としてでも世界に証明し、自らの覇権を維持するため、あえてこの模擬演習を全世界へライブ配信するという大勝負に出たのだ。「――世界中の視聴者数が、すでに億単位を突破しています。地球上のすべての国家が、このハワイ沖を見つめていると言っても過言ではありません」戦艦『やまと』の第一艦橋。佐藤宏航海長が、全世界に生中継されている実況画面のデータをホログラムディスプレイの端に映し出しながら、ふっと笑みを浮かべた。直前の第一戦。もがみ型一等航空戦艦四隻は、右半分に据えられた五十一センチ電磁加速主砲をただの一発も使うことなく、左半身の「空母セクション」から放った電子戦ドローン『八咫烏』と無人迎撃機『海蜂』の連携だけで、米英軍の誇る最新鋭ステルス戦闘機八十機を電子空間上で完全撃沈してみせた。カメラシップや軍事衛星を通じてその光景を目撃した世界中の専門家たちは、言葉を失い、ただ画面の前で硬直していた。しかし、米英豪の連合艦隊も、世界に恥を晒したまま引き下がるわけにはいかなかった。「演習第二フェーズ開始。米英豪連合艦隊、水上打撃群が動きます。オーストラリア海軍の最新鋭ミサイル駆逐艦『ホバート』級三隻を先頭に、アメリカ海軍の巡洋艦群が、我がもがみ型四隻を完全に視界に捉える距離まで急速接近してきました」呉基地の総司令部から、吉田京海軍少将の冷徹な声が響く。彼らの次なる戦術は、電子戦が通用しないほどの超至近距離からの、物理的な砲撃および対艦ミサイルによる「目視内の飽和打撃」であった。全世界のカメラが、波飛沫を上げて突撃する米英豪の戦列を鮮明に捉えている。「なるほど、電子の帳がダメなら、今度は大衆の目の前で物理的に叩き潰すというわけだ。実に分かりやすい、西側諸国のプライドの現れですね」総司令官・新海努大佐は、軍用端末の画面を凝視しながら、眼鏡の奥の瞳を筋金入りのミリタリーオタクとしての「狂気的な歓喜」でギラつかせた。新海はジーンズのポケットから手を抜くと、もがみ型四隻の艦長たちへ、データリンク『アマノハラ』を通じて新たなる作戦コードを打電した。「もがみ型各艦、作戦コード『天岩戸』。左の空母セクションを休ませ、今度は右半身の『戦艦セクション』の出番だ。全世界が注目するこの舞台で、我が国の誇る五十一センチ連装電磁加速砲の『本当の限界速度』を、カメラの向こうのすべての人類に教育してやりなさい」演習開始の号令とともに、もがみ型四隻の右半分に据えられた巨大な連装砲塔が、うなりを上げて旋回を始めた。常温核融合炉から生み出される莫大な電磁エネルギーが、砲身の超電導コイルへと一瞬でチャージされ、激しい青白い光の火花が甲板全体を走る。その超技術の輝きは、全世界に配信されている高解像度カメラの映像を通じ、白昼の太陽の下でもはっきりと視認できるほど鮮烈だった。「ターゲット、前方のオーストラリア海軍駆逐艦、および後方のアメリカ海軍巡洋艦。……疑似主砲、全門同時斉射。てーっ!!」ドォォォォォン!!!音速を遥かに超越したマッハ十以上の速度で放たれたのは、実弾ではない。レールガンの軌道をそのままなぞるように出力された、超高出力の「疑似レーザー着弾ロック」の閃光だった。時速マッハ十を超える光の矢は、米英豪の誇る最新鋭のイージス防空システムが迎撃計算を開始する隙すら与えなかった。オーストラリアの最新鋭駆逐艦『ホバート』、そしてアメリカのタイコンデロガ級巡洋艦の艦橋や機関部が、次々と眩しい閃光で照射されていく。『ホバート、疑似直撃! システムダウン! 撃沈判定!』『巡洋艦ポート・ロイヤル、完全大破! 戦線離脱判定!』米軍の作戦室、そして全世界のライブ配信のコメント欄が、一瞬で絶望と驚愕に凍りついた。米英豪の最強の水上打撃群は、もがみ型四隻の右半分から放たれた、現代の常識を遥かに置き去りにした「マッハ十の超高速砲撃」の前に、反撃の対艦ミサイルをただの一発も撃ち返すことすらできず、白日の下で一瞬にして全滅の判定を下されたのだ。「敵水上打撃群、全艦が電子空間上で沈没! もがみ型四隻、依然として無傷、被害ゼロです!」佐藤宏の歓喜の声が響く中、全世界のテレビ局の解説者たちは「これはもはや演習ではない、神罰の再現だ」と机を叩いて絶叫していた。もがみ型の持つ、右半身の戦艦と左半身の空母という異形のハイブリッド超火力。それを完全公開の舞台で見せつけられた世界は、新・大日本連邦という新世界の覇王の前に、ただ平伏する以外の選択肢を失いつつあった。




