表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/30

第十九話:漆黒の招待状

東シナ海で中国海軍を蒸発させ、日本海でもがみ型航空戦艦四隻の圧倒的な超火力によって北朝鮮を完全消滅させた新・大日本連邦。韓国を平和的に合併し、アジアの絶対的な覇王へと一瞬で上り詰めた日本の動向に、世界は激しい震えと底知れない恐怖を抱いていた。特に、これまで世界の海洋秩序を支配してきた太平洋の向こう側の超大国アメリカ、そして伝統ある海軍力を誇るイギリス、南太平洋の要衝たるオーストラリアの三ヶ国は、連邦海軍の持つ「二十四発の弾道ミサイルを無傷で叩き落とすレールガン」や「二回り巨大化された戦略核トマホーク」といった未来技術の正体を、何としてでも暴かなければならなかった。もしこれが本物の超技術であるならば、西側諸国の覇権は永遠に失われる。だが、今の日本に不用意に実戦を仕掛ければ、自国の空母や都市が核の炎で消滅しかねない。そこで彼らが突きつけてきたのは、外交ルートを通じた「親善合同模擬演習」の開催という名の、極めて政治的で実戦的な挑戦状であった。「――ハワイ・オアフ島沖の広大な太平洋を舞台とした、日・米・英・豪の四ヶ国合同演習、ですか」新・大日本連邦海軍の総司令部である呉基地の一室で、航海長を務める佐藤宏が、届いたばかりの電子書簡のデータをホログラムディスプレイに映し出しながら、怪訝そうに眉をひそめた。「名目は『東アジアの安全保障維持のための親善演習』となっているが、中身は完全にこちらの化けの皮を剥ぎにきているな」佐藤の隣で、防衛省の特権を握る吉田京海軍少将が、腕を組んで冷徹な笑みを浮かべた。「アメリカ海軍は最新鋭のジェラルド・R・フォード級原子力空母二隻を中心とした空母打撃群を投入。イギリス海軍は最新鋭空母『クイーン・エリザベス』、オーストラリア海軍は新型のミサイル駆逐艦群を派遣してくる。彼らの最新兵器をすべて集結させた、事実上の『対・第一機動艦隊』の特別編成だ。演習ルールは『電子疑似着弾レーザーロック』による実戦さながらの模擬戦闘。だが、彼らは本気で我が艦隊を包囲し、システムの限界数値をデータリンクからハッキングして盗み取る算段だろう」「面白いじゃないですか、吉田少将」艦長席からゆっくりと立ち上がった総司令官・新海努大佐の眼鏡の奥の瞳には、数日前の冷酷な指揮官の表情から一転して、筋金入りのミリタリーオタクとしての「狂気的なまでの歓喜」が燃え盛っていた。新海はジーンズのポケットに手を突っ込み、デスクの上に広げられたハワイ周辺の海図を食い入るように見つめた。「アメリカのフォード級二隻に、イギリスのクイーン・エリザベス、そしてオーストラリアの防空艦隊……! 西側諸国が誇る現代海洋軍事の最高峰が、我が艦隊を倒すためにわざわざ一堂に会してくれるというわけだ。軍事マニアとして、これほど贅沢な実物大のチェス盤はありませんよ。彼らは我が国の超技術の限界を見極めるつもりでしょうが、逆にこちらが、彼らの最先端戦術が未来の兵器の前にどれほど無力かを、教育してやる絶好の機会です」「おいおい新海、またオタクの悪い癖が出てるぞ」佐藤宏が呆れたようにため息をつくが、その口元は不敵に歪んでいた。「でもな、模擬演習とはいえ、相手は世界一の練度を誇る米英豪の連合軍だ。中国や北朝鮮のように、力任せの物量だけで突っ込んでくるような間抜けじゃない。電子戦から潜水艦の隠密戦まで、世界最高の嫌がらせ(戦術)を仕掛けてくるはずだぞ」「分かっているさ、佐藤。だからこそ、我が第一機動艦隊も、彼らの想像を絶する『おもてなし』を用意しなければならない」新海は不敵に微笑み、軍用端末アマノハラ・モバイルの画面を操作して、ある四隻の艦艇のステータスを画面中央に呼び出した。「今回のハワイ沖模擬演習、我が艦隊の先鋒を務めるのは――もがみ型一等航空戦艦四隻だ。東シナ海と日本海で実戦データを完全に吸収した『もがみ』『みくま』『すずや』『くまの』の、右半身の五十一センチレールガンと左半身の空母セクション。このハイブリッドな超技術が、米英豪の誇る最新鋭の空母打撃群をいかにして翻弄するか、ハワイの海で世界に見せつけてやろう」新海の号令とともに、呉のドックで完璧なリロードと整備を終えたもがみ型四隻が、再びその異形の左右非対称の船体をギラつかせながら、瀬戸内海から広大な太平洋へと向けて静かに抜錨していった。ハワイ沖で待ち受ける、アメリカ、イギリス、オーストラリアの三ヶ国連合艦隊。人類の軍事技術の頂点同士が激突する、実戦以上の緊張感を孕んだ「神々の模擬演習」の幕が、静かに上がろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ