第十六話 平壌(ピョンヤン)からの火の雨
「敵ミサイル、一斉発射! 朝鮮半島内陸のあらゆる移動式発射台、および地下サイロから、計百二十発の弾道ミサイルが上昇中! 目標は旧韓国領の主要都市、および我が国の首都圏です!」日本海に緊急展開した戦艦『やまと』の第一艦橋に、オペレーターの悲鳴が響き渡った。韓国の日本合併に激怒し、理性を失った北朝鮮が、ついに「核の引き金」を引いたのだ 。夜空を埋め尽くすように突き進むミサイルの群れは、旧式の『スカッド』や『ノドン』から、最新鋭の変則軌道ミサイルまで、持てる火力を全て注ぎ込んだ狂気の飽和攻撃だった。「新海総司令官、迎撃が間に合いません! 数が多すぎます!」佐藤宏航海長がホログラムに映る無数の赤い光点を指差し、顔を歪める。しかし、艦長席に座る新海努大佐は、眼鏡の奥の瞳を冷徹に輝かせたまま、不敵な笑みを浮かべた。「慌てるな、佐藤。北朝鮮の旧式兵器がどれだけ集まろうと、我が第一機動艦隊の『防壁』の前には、ただの火遊びに過ぎん。……もがみ型四隻、データリンク最大出力。右半身の神話を解放せよ日本海の前線に堂々と並ぶ四隻の一等航空戦艦――『もがみ』『みくま』『すずや』、そして新たに戦列へ加わった新型『くまの』。左右非対称の異形の船体を持つこれら四隻の【右半分】、すなわち純粋な戦艦セクションに据えられた「五十一センチ連装電磁加速砲」計八門が、一斉にうなりを上げて天へと仰角を上げた 。常温核融合炉から生み出される莫大な電力が、コイルに一瞬でチャージされ、甲板全体が青白い電磁光で激しく明滅する。「もがみ型各艦、レールガン、対空散弾『三式弾改』装填。……撃て!!」 新海の命令と同時に、もがみ型四隻の主砲が一斉に火を噴いた。ドォォォォォン!!! 音速を遥かに超越したマッハ十以上の速度で放たれた五十一センチ徹甲弾は、成層圏に達した瞬間に炸裂し、一発につき数万発の超硬質タングステン散弾へと姿を変えた 。空中に展開されたのは、文字通り「絶対不可侵の鉄の網」だ。落下を開始しようとしていた北朝鮮の核ミサイル群は、もがみ型が放った物理的な圧倒的運動エネルギーの壁に真っ正面から衝突 。マッハ十同士の激突により、百二十発のミサイルは旧韓国領や日本本土に届く遥か手前で、成層圏で一発残らず粉々に粉砕され、夜空に空虚な爆発の華を咲かせて霧散していった。「迎撃……すべて成功! もがみ型の主砲だけで、敵の弾道ミサイルを全数撃墜しました!」艦橋に歓声が沸き起こる 。しかし、新海大佐の目はすでに防御ではなく、完全な「殲滅」の色を帯びていた。「守る時間は終わった。ここからは、我々が新しい世界のルールを教えてやる時間だ」新海はディスプレイに映る北朝鮮の軍事拠点を指差した。「もがみ型四隻へ伝達。これより、平壌を焦土に変える『最後の儀式』を行う。全艦、次弾装填」




