第十四話:大いなる潮流
「――驚天動地のニュースが世界を駆け巡っています」日本のニューススタジオのアナウンサーの声は、興奮を通り越して震えていた。東シナ海の尖閣諸島周辺で、もがみ型航空戦艦四隻が中国海軍の最新鋭潜水艦を一瞬で完全消滅させたという衝撃的な局地戦の報道から、わずか数日後のことだった。日本の莫大な資源特需、そして『やまと』以下「第一機動艦隊」が証明し続ける絶対的な軍事力。一夜にして世界の超大国へと新生した日本に対し、アジアの、そして世界のパワーバランスは完全に崩壊していた。そして今日、世界史の教科書を根底から書き換える、歴史的な政変が幕を開けた。「本日午前、親日国として知られる大韓民国、パラオ共和国、そしてバングラデシュ人民共和国の三ヶ国政府が、日本国政府に対し『国家合併(連邦化)』を公式に打診したと発表しました。三ヶ国は、日本の圧倒的な安全保障の傘(神話の艦隊)に入ること、そして世界最高の資源分配に加わることを強く望んでおり、事実上の『新・大日本連邦』の樹立を要望している模様です――」日本国内の街頭ビジョンやSNSは、この前代未聞のニュースに完全に沸き立っていた。かつてはあり得なかった国際政治の地殻変動が、日本の持つ「圧倒的な質の絶望(力)」によって、合法的な平和の意思として現実のものになろうとしていた。その頃、超音速ヘリでの移動を終え、呉基地の第一機動艦隊総司令部に無事帰還した新海努大佐と佐藤宏航海長は、吉田京海軍少将と共に大型モニターを見上げていた。画面に映し出されているのは、三ヶ国の首脳たちが、真剣な面持ちで日本との合併の意義を世界に記者会見している姿だった。「おいおい……」佐藤宏が、顎が外れんばかりの表情でホログラムディスプレイを凝視する。「中国を二度叩き潰したと思ったら、今度は韓国にパラオにバングラデシュが『日本と一つの国になりたい』と言い出したぞ。新海、これもお前の脳内シミュレーション通りなのか?」新海努は、ミリタリーオタクとしての鋭い眼鏡の奥の瞳を、かつてないほど真剣に輝かせていた。「いや、これは予測を超えている。だが、地政学的に見れば極めて合理的だ。我が国の地下資源は数億年分。さらに大鯨型潜水艦やもがみ型航空戦艦という『神々の盾』がある。彼らにとって、これ以上の安全保障と経済のパートナーは地球上に存在しないからな」吉田少将が不敵な笑みを浮かべ、新海の肩を叩いた。「新海総司令官、これで我が第一機動艦隊が守るべき『領海』は、一気に数倍に膨れ上がりますよ。太平洋のパラオから、ベンガル湾のバングラデシュ、そして対馬海峡まで。いよいよ、我々が世界の頂点に立つ基盤が揃った」新海はポケットから、休暇中に組み立てた黒い大鯨型潜水艦の模型を取り出し、デスクの上の巨大な世界地図のパラオ周辺へと静かに置いた。「面白い。三ヶ国が我が国の覇道に加わるというのなら、全力で迎え入れよう。佐藤、のんびりしている暇はなくなったぞ。新・連邦海軍の誕生だ。これからの海の守り、さらに忙しくなる」新海努の静かな決意とともに、日本は単なる一国家から、アジアを統べる巨大な連邦帝国へと生まれ変わろうとしていた。世界最強の軍事力と富を求めて集まる国々と、それを拒む欧米の大国たち。本当の世界大戦へのカウントダウンが、静かに加速していく。




