表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/30

第十三話 深海の狩人(ハンター)

「敵魚雷の完全迎撃を確認! もがみ型各艦、直ちに対潜攻撃陣形『ツクヨミ』へと移行せよ!」一番艦『もがみ』の統合型艦橋に、静徹な戦術AIの音声が鳴り響く。左右非対称の異形の船体を持つ四隻の一等航空戦艦『もがみ』『みくま』『すずや』、そして新型『くまの』は、夜霧を切り裂きながら中国の無音潜水艦『039A型』二隻の真上へと急速に躍り出た。データリンク『アマノハラ』により、先ほど魚雷を放ったことで位置を露呈した敵潜水艦の精密な三次元座標が、艦隊全体で完全に共有されている。その頃、呉基地の緊急発進用ヘリポートへと滑り込んだ新海努大佐と佐藤宏航海長は、超音速連絡ヘリの機内にいた。手元の軍用端末アマノハラ・モバイルには、尖閣諸島周辺のリアルタイムな戦闘ホログラムが鮮明に映し出されている。「おいおい、俺たちが基地に駆け込む前にもがみ型だけでケリをつける気か?」佐藤が連絡ヘリのシートに深く体を預け、感嘆混じりの声を上げる。新海は眼鏡の奥の目を輝かせ、画面に釘付けになっていた。「佐藤、これこそが私が三菱の技術者たちと語り明かしたハイブリッド運用の極致だ。もがみ型の『左右の個性』が、深海の暗殺者を完全にチェス詰めにしている!」東シナ海の現場海域では、もがみ型四隻の反撃がまさに始まろうとしていた。「もがみ型、左半身(空母セクション)より、最新鋭対潜無人ドローン『海燕かいえん』一斉射出!」四隻のアングルド・デッキに据えられた超電導カタパルトが青白い火花を散らし、計八機の対潜ドローンが夜空へと次々に弾き出された。ドローン群は敵の直上へと急行すると、海面へ向けて音響追尾式の超高速短魚雷を網の目のように投下した。ドゴォォン! ドゴォォン!深海で連続して巻き起こる水中爆発。中国の039A型潜水艦二隻は、直撃こそ免れたものの、全方位から迫る衝撃波によってソナーハイドロフォンを破壊され、深海で完全に「目と耳」を奪われた。パニックに陥った敵潜水艦は、たまらず海底から離れ、必死の急速反転を試みる。「敵艦、パニックによる微速前進を確認。完全に誘い出したぞ」一番艦『もがみ』のAIが冷酷に最適解を弾き出した。「最終仕上げだ。もがみ型、右半身(戦艦セクション)――五十一センチ連装電磁加速砲レールガン深海砲撃ディープ・ストライク用意」四隻の右半分に据えられた巨大な五十一センチ連装砲塔が、うなりを上げて海面へと水平に近い角度で指向された。通常、戦艦の主砲は空中を飛ぶものだが、このハイブリッド艦のレールガンは違う。時速マッハ七で放たれる超巨大徹甲弾の物理エネルギーを、そのまま「海の中」へ叩き込むのだ。「全艦……てーっ!!」ドォォォォォン!!!四隻計八門の五十一センチ砲が同時に火を噴いた。凄まじい衝撃波によって、周囲の海面が直径数百メートルにわたって瞬間的に陥没し、巨大な潮の壁が立ち上がる。マッハ七で海中へと突き刺さった超硬質徹甲弾は、水中を猛烈な速度で突き進み、敵潜水艦のわずか数十メートル側方でその圧倒的な運動エネルギーを解放した。――それは、深海における「人工の超巨大地震」であった。逃げ惑っていた中国海軍の039A型潜水艦二隻は、レールガンが引き起こした異次元の超高水圧の衝撃波に直接押し潰された。頑強な高張力鋼の船体はいとも簡単に歪み、ねじ切れ、深海の圧倒的な水圧によって一瞬にしてペシャンコに圧壊していった。敵の動力源が誘爆し、深海に鈍い二つの光が揺らめいた後、全てが静寂へと帰した。「東シナ海、敵潜水艦二隻の消滅を確認。我が方の被害、皆無です」もがみ型四隻と駆逐艦『くまの』による、二週間越しの局地戦は、日本海軍の完全なる圧倒的大勝利で幕を閉じた。連絡ヘリの中でその光景を見届けた新海努は、深く息を吐き出しながら、ポケットの中の小さな潜水艦の模型をいじった。「完璧な勝利だ。だが、これで中国は局地戦では我が国に勝てないと悟ったはずだ」新海の言葉に、佐藤宏が表情を引き締める。「……つまり、次に来るのは小細工なしの、本当の『大嵐』ってわけか」東シナ海の夜空に、再び不気味な静寂が戻る。しかし、日本海軍の圧倒的な力を突きつけられた世界は、今度こそ本格的な政変と軍事同盟の再構築へと動き出そうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ