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地獄大戦

魔界への扉は迷いの森をさまよってたマスクをしてチェンソーを持ってる悪魔から夜霧が聞き出した。ゲートは古い井戸の底だ。

教えてくれたら命を助けるという約束だったが夜霧は簡単に反故した。

魔界では魔王同士が領土を争っていたから弱そうなほうに味方する。

最終的に魔王の城に乗り込み魔王を討ち取った。

夜霧は魔剣と魔銃をゲットして上機嫌だ。

祝宴で虫歯の悪魔みたいなやつに地獄へのゲートを教えてもらう。

地獄でも修行しましょう、と夜霧がいうので従った。

地獄では閻魔大王に悪鬼退治を依頼され豪勢な屋敷で酒宴を開催して騒いでいる悪鬼どもを撫できりにする。

閻魔大王からほうびに地獄刀という妖刀をもらう。

妖刀との絆を深めるために毎日、欠かさず手入れして夜は抱いて寝た。

たまに話しかけることもある。

これは夜霧から妖刀の力を最大限引き出すために必要なことだと教わった。

1ヶ月後、夜霧のいう通り地獄刀は秘められた力をオレに提示してくれる。

やっぱ夜霧に従っていりゃまちがいねぇ。

ゴングがなり決勝戦がはじまる。

オレの相手は金剛カルラだ

ニコニコしたやさしそうなお姉さんだが、守護霊の不動明王はいかちぃ。

でも憤怒の相にはちゃんと意味がある。

決勝戦で当たる相手のことは全員研究した。

オレが読んだ本によると不動明王は「仏教を信じない人間をも救済する」五大明王のうちの1人だ。

世の中のあらゆる人、罪を背負ったり仏教を信じなかったり煩悩を抱えたりする人をも、その力で以て強引に救おうとしてる。

そのためには凶悪な悪鬼と戦うこともいとわない。

このようなことから不動明王は人を見守り人を救い悪鬼と戦うための「怒り」をその顔に称えているといわれている。

不動明王の怖い顔はオレたちを脅かすためではなく迷いや煩悩を断ち切り、どんな悪人でも必ず救い出すという「絶対的な慈悲(愛)」を表現したものなんだ。

つまりとんでもなく優しい仏様ってこった。

「本来、得られるはずのない莫大な経験値を得てレベルアップしたのであれば、あなたたちを粛清しなければなりません。それがエクソシスト協会のルールですから」

カルラは腰にさげた剣を抜く。

なんてこたぁない普通の名剣だな。

あんなの金を積めばいくらでも買える。

やべえのはうしろに控える不動明王の右手の剣だ。

龍が刀身に渦巻いているあの剣は倶利伽羅剣くりからけんと呼ばれ煩悩や悪魔を断ち切ると伝わる利剣だ。

左手に持つ縄もまずい。

あれは羂索けんさくって言って本来は煩悩から抜け出せない人々を縛り、力づくでも救い出すための縄だ。

悪魔退治に使う時は直接、悪魔を縛ってもいいし悪魔に取り憑かれた人間を縛ってもいい。

悪魔は焼かれるような苦しみを味わう。

人間に取り憑いていた悪魔も焼かれるような苦しみで飛び出して来るから、そこを利剣でぶった斬る。不動明王はチート武器を2つも持ってやがんだ。

おまけに背中の炎、迦楼羅焔かるらえんは近づいてくる悪魔をことごとく焼き尽くす。

上級悪魔いがいは生き残れねぇ仕組みだし、生き残っても利剣と縄で滅される。

オレが悪魔なら裸足で逃げ出すね。

オレは地獄刀を抜く。地獄の業火のような真っ赤な刀身だ。

「仏の慈悲を与えちゃくれねぇのかい?」

「苦しまず死を与えることが最大の慈悲です。来世は善人に生まれ変わりなさい」

「オレは善人だ」

「悪人は皆そう言います」

カルラは正面から突っ込んでくる。

オレは迎え撃った。

激しい剣の応酬になる。

しばらくすると目が慣れた。

すばしっこいし剣筋もいいが、上級悪魔たちをさんざん打ち倒して来たオレにはものたりねぇ。

カルラの剣を見切って一寸の見切りを披露する。

カウンターで首を狙った。

完璧なタイミングだ。

キンッと衝撃音がして刀が止まる。

止めたのは倶利伽羅剣だ。

うしろで見守っていた不動明王がもうお出ましだぜ。

「たいした腕前ですが、これでおしまいです」

不動明王の縄がオレの体を縛る。

体が締め付けられてあちぃ!

ほんのわずかな煩悩でもこれかよ?

悪魔はたまんねぇだろうな。

カルラは身動きできねぇオレの首を狙ってくる。仕返しか?

「わんっ!」

チョコが居合い抜きで縄を斬ってくれた。ナイスワンコ!

自由になったオレはカルラの剣を止める。

つばぜりあいだ。力では女に負けねぇ。

押し負けて刃が首にささりそうになったカルラは大きく後ろに跳躍した。

追いかけると眼前に不動明王がドンっ!と立ちはだかる。

やはりこいつを先に倒さねえとムリか。

不動明王に斬りかかろうとすると奴が背負ってる炎がこちらに伸びて来た。

「なにぃ?」

そんな使い方もできるんかよ。

オレの体は炎に包まれる。

「炎を吸い取れ!地獄刀!」

地獄刀は業火の炎を吸収する。あっぶねぇ。焼け死ぬところだった。

ほっとしたのも束の間、倶利伽羅剣が頭上から降ってくる。

はやいが避けられる。

ひょいと飛んでかわすと倶利伽羅剣に巻き付いていた小さな龍が襲って来た。

「そんなんありかよッ!」

小龍はカミナリを吐く。避けられねぇタイミングだ。

「がはっ!」

直撃を受けたオレは体がしびれて焼かれる。

不動明王の倶利伽羅剣が再びオレを襲う。

チョコが斬撃を防いでくれた。

だが、オレの背後から忍び寄る影を止める者はない。

「粛清完了です」

カルラはオレの心臓を正確に突いた。

「ぐはぁ!」

激痛だ。オレは血を吐いてリングに倒れる。

リングを舐めながらチョコの戦闘を見つめた。

チョコは小竜に氷のブレスを吹きかけられ凍らされたところを倶利伽羅剣で砕かれる。

つえー。主従そろって手も足も出なかったな。

手を合わせているカルラが目に入った。

おやさしいこって。

目を閉じると体が温かくなる。

全身が光に包まれた。

チョコと一体化したオレは獣人としてよみがえる。

心臓を貫かれる直前に神人合体を念じていた。唱えなくてもいいのはほんと便利だぜ。

犬耳にしっぽ、和風の鎧に地獄刀はそのまんまだ。

「しぶといですね」

カルラはくちびるを尖らせる。

「延長線だぜ」

オレは地獄刀を掲げる。

「地獄門ッ!」

あたりの景色が塗り変わり地獄の景色が広がる。

さあ、地獄の門が開いたぜ。

オレは地獄刀の秘められた力を使い異空間を創り出した。

周囲には三途の川が流れ、血の池が広がり、針山がそびえ立ち、荒々しい火山活動や噴気が立ち込めている。

ここは拷問を受けてる罪人の憎悪の念が蔓延している絶望の地だ。

清い心を持つカルラにはさぞかし厳しい環境だろうぜ。

間違いなくカルラのステータスは下がっている。

カルラは汗をダラダラかいて息も荒い。

「暑いのは苦手です」

「そりゃラッキーだ」

オレはカルラに斬りかかる。

不動明王と小竜が立ちはだかった。

「地獄炎ッ!」

地獄刀に炎が灯る。

氷のブレスを吐いてくる小竜をぶった斬った。

小竜は悲鳴をあげて骨も残らず消滅する。

怒った不動明王が倶利伽羅剣を振り上げる。

「地獄閃ッ!」

刀を一度さやにおさめて光の速度で抜く。

紅の閃光が不動明王の体を真っ二つに切り裂いた。

地獄の炎を圧縮したレーザビームのようなもんだ。

カルラは怒りで肩を震わせる。

「なんて罰当たりな真似を・・・地獄に堕ちますよ?」

「もう堕ちてっし」

カルラは手を合わせて念仏を唱える。やれやれ困った時の仏だのみかよ。

「ノウマク・サンマンダ・バラザダン・センダ・マカロシャダ・ソワタヤ・ウンタラタ・カンマン」

「おいおい地獄に仏はいないぜ?」

「これはマントラです。不動明王の力を最大限に引き出すための極意」

カルラと切断された不動明王の体が光輝く。

人と神は合体してひとつになった。

カルラはたれ目だったのに吊り上がった目でこちらをにらんでいる。

右手の剣は倶利伽羅剣から降魔の三鈷剣ごうまのさんこけんに変わっていた。

柄の頭部が仏具の「三鈷杵さんこしょ」という形状になっている剣だ。

三股に分かれた刃には「仏の智慧で三毒(貪・瞋・癡)を打ち砕く」という意味が込められている。

「降参するならいまのうちですよ?」

「こっちのセリフだ!」

オレはカルラに地獄閃を放つ。

カルラは降魔の三鈷剣で弾き返す。

うひょー。閃光が見えてんのかよ。

連続で地獄閃を放つが、カルラは飛んでかわしたり剣で弾きながら猛スピードで斬りかかってきた。

はええっ!?

鋭い斬撃を地獄刀で受け止める。

さっきまでとちがってすんげえ剛力だ。

カルラが片手で振った剣を両手じゃないと止められねぇとはな。

スピードもパワーマシマシだぜ。

余った左手でカルラが縄を投げつけてくる。

縛られるのはもう2度とごめんだッ!

「うおぉぉッ!」

オレは火事場の馬鹿力でカルラの剣を弾き返して縄を斬る。

すぐさま後ろに跳躍して距離をとった。

カルラと正面きって戦うのは不利だ。

激しい力を引き出せば代償として大量の霊力を消耗する。

何度も火事場の馬鹿力には頼れねぇ。

卑怯な戦法を使わせてもらうぜ。

オレは地獄刀を掲げて最終奥義を披露した。

「地獄宴ッ!」

三途の川からガイコツの群れが這い上がってくる。

血の池からうじゃうじゃと蛇が湧いてきた。

火山からは巨大な溶岩魔神が出現しする。

地獄の門番ケロベロスは針山をモノともせず駆け降りてきた。

あちこちの洞窟から金棒を持った鬼の獄卒たちもわらわら出てくる。

魔物の軍勢はたちはカルラを取り囲んだ。

オレは軍勢の1番後ろに控えて叫んだ。

「地獄の大宴会にようこそッ!」

「招待された覚えはありませんッ!」

カルラは背負っている迦楼羅炎で魔物の軍勢を焼き尽くす。

だが炎耐性があるせいで簡単には焼き尽くせない。

動きは鈍るが魔物の軍勢の足は止まらなかった。

カルラは降魔の三鈷剣ごうまのさんこけんで魔物をズバズバ切り裂いて燃やし、羂索けんさくで魔物を縛りつけて炎上させる。

すべての魔物を倒した時には背中の迦楼羅炎はロウソクぐらいの小さな炎になっていた。

高みの見物を決め込んでいたオレの出番だ。

「地獄変ッ!」

地獄刀を掲げて呪文を唱える。

燃え盛る灼熱地獄の風景は一変して凍えるような極寒地獄へと変化する。

猛吹雪と氷の世界。

ここは八寒地獄の最下層に位置する大紅蓮地獄だ。

この地獄に落ちた者はあまりの酷い寒さのために皮膚や肉が破れ血が流れ出て皮膚が裂け一瞬で真っ赤な蓮の花(紅蓮華)のように見えることからこう名付けられた。

「寒すぎですッ!」

カルラは鼻水垂らしてガタガタ震え出す。

迦楼羅炎も凍りついて機能していない。

霊力で寒さを防御しているが、じきに尽きるだろう。

魔物大軍との戦闘で大量の霊力を消耗しているからな。

オレは地獄刀に炎をまとわせて暖をとる。

「あったけぇ」

「ずるいです!」

カルラは火を求めてこちらに歩み出るが一歩歩いたところで倒れた。

氷上にあざやかな紅蓮華の花が咲く。

女を斬るのはどうも抵抗があるんでな。

この勝ちかたが1番、心に負担がない。

「お開きだ」

地獄刀に伝えるともとの空間に戻る。

フェニックスと神人合体した美少女が飛んできてカルラをすぐに復活させた。

オレは観客から大歓声を浴びる。客席に笑顔で手を振ってやった。

少しめまいがする。

異空間を創るのにも魔物を創るにも大量の霊力を消費して、もう霊力はからっぽだ。

神人合体をギリギリ維持している状態だった。

同じく勝利をおさめた夜霧と朝陽が寄ってくる。

2人とも霊力がつきかけている。死闘だったんだろう。

表彰式を終えて学生寮に戻るとシャワーも浴びずにベッドに倒れ込んだ。

参考文献・引用 ネット記事〔あおき葬祭コラム〕第86回:怒れる不動明王、その怒りの理由はどこにある?

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