エクソシスト学園
秋になってあたしたちはエクソシスト学園に入学した。
握力計みたいな形の霊力測定器を3人ともそれぞれ握ったら数日後に政府からスカウトの声がかかった。
A級判定だ。S級に指がかかってる。
スカウトに応じて豪華な学生寮に入寮する。
制服はおしゃれでカッコよくてかわいい。
社会のために悪霊退治をしているエクソシストは国民から尊敬されなければいけない。
だから制服も超気合いが入っている。
デザインは超一流のデザイナーが考えてるし素材も最高級品だ。
生徒1人1人オーダーメイドで特別感がある。
霊力を込めて作られているので悪霊の攻撃に対する防御力も高い。
悪霊退治に出かける時はみんなこれを着てる。
全校生徒数は200人だけ。
エクソシストとして才能がある子供はそれだけ希少ということだ。
3年生にはあの天空音路がいる。
いずれ顔を合わせるだろう。
学園は小中高一貫で幼少期にスカウトされる子供が多い。
突然、守護霊の霊格が飛躍的にアップするなんてことはまずない。
エクソシストになる人間は生まれつき強い守護霊が憑いている。
現世で徳を積み重ねることで守護霊の霊格がアップする。
ふつうに生きてたらちょっとずつしか守護霊は上がらない。
前世で世界を救って死んだら最終形態まで進化した守護霊が憑いているでしょうね。
放課後は毎日、あたしの部屋にびぐると朝陽がやって来る。
「この学園の生徒についてる守護霊おもしれえなぁ。さっき天狗がいたぜ」
「お稲荷さんを見かけたよ♩」
「ユニコーンとペガサスもいたわ」
「激レアばっかじゃなくて犬や猫の守護霊もよく見かけんな。柴犬とかペルシャ猫とかいろんな種類がいていい目の保養になんぜ」
「仲間にするんならドーベルマンが良かったんだけどね。まあ、ビーグルでもよしとしましょう」
「だきょうかよ」
「好みの問題よ。シュッとした顔が好きなの」
「アゲハ蝶とトンボとてんとう虫をそれぞれ守護霊にしてる女の子とお友だちになったよ♩」
「仲間にするんならモルフォ蝶が良かったんだけどね。まあ、キチョウでもよしとしましょう」
「モルフォ蝶は森の宝石だもんね。ぐうわかる」
「女は宝石好きだよなぁ。そういや掲示板のポスターにクリスマスに武闘祭が開催されるって書いてあったぜ」
「めっちゃおもしろそう♩」
「そのためにわざわざ2学期から転校してきたのよ。3人1チームで出場できるわ」
「優勝賞品はヘヴンザゲートの鍵だとさ」
「なんじゃそれ?」
「天国への扉を開けるための合言葉ね」
「げげげ。オレまだ死にたくねぇよ」
「霊化の術を使えば死ななくても天界に行けるわ。合言葉はころころ変わるから武闘祭は最大のチャンスね」
「霊化の術?」
「神人合体の状態で霊化と念じれば肉体を失い霊体で空を飛べる。試してごらんなさい」
「そうなのか!さっそくやってみようぜ!」
「うん♩肉体に戻る時はどうするの?」
「受肉と唱えれば自然界のエネルギーを利用して肉体が形成される。空を登っていけば天国の扉が現れるはずよ。見てきなさい」
天界と下界の境界に天国の扉がある。
いよいよあたしが天界に戻る日も近い。
2人は霊体になり空中遊泳して天国の扉を見て戻ってきた。
「すごい立派な門だね♩あの扉の向こうが天国かぁ。ワクワク」
「どんな世界が広がってんのかなぁ」
「下界よりは空気がきれいで悪霊がいない落ち着いた世界ね」
「夜霧ちゃん天国の住人だったの?もと天界人?」
「武闘祭で優勝したらすべてをお話しするわ。あたしがなぜ人間なんかに身を落としたのかをね」
「楽しみがひとつ増えたぜ!」
「人間なんかって人間をすごい低く見てるよね。天界人ってみんなそうなの?」
「現世は魂の修行の場。そこに落とされるのが人間。合格して天国の永住権を得ているのが天界人。人間は天界人に劣る下等な存在なのよ。見下されて当然だわ」
「なんか悲しい。神様は人間を温かい目で見守ってくれてるのかと思ってた」
「慈愛に満ちた神もいるけど、ほとんどは冷めた目で見てるわね。神人合体まで到達した人間は神と同格だから対等に見てる」
「オレは神だッ!」
びぐるは立ち上がり両手を広げる。
「あぶないひとみたい」
朝陽は眉をひそめる。
あたしたちは武闘祭に向けて放課後と休日は過酷な場所で修行した。
3ヶ月後、待ちに待った武闘祭が始まる。
ドーム型闘技場は学園の敷地内だ。
学園は広大な敷地を所持している。
試合の様子は天井から吊るされた巨大モニターにも映し出される。
鳥を守護霊とする生徒たちがカメラを鳥につけて試合を撮影している。
なのでさまざまな角度から観戦できる仕組みだ。
世界中の霊能力者がこの大会に注目している。
優勝チームは神と崇められ多くのファンがつく。
1回戦はパンサーとライオンとウサギを守護霊とする女の子チームでチーム名はケモノガールズだ。
うちはナイトメアにした。
対戦相手に悪夢を見せてあげるわ。
ゴングが鳴り響きリングの上で3対3の戦いが始まる。
霊感のある観客で満員のスタジアムに歓声が響いた。
世界中に放送されていて霊感のない人間は霊視メガネを購入して観戦する。
「オレはパンサーちゃんと戦いてぇな。同じ剣士だしよぉ」
「わたしはだんぜんうさぎちゃん♩」
必然的にあたしはライオンが相手だ。
ライオンの守護霊は最終形態まで進化していて赤いマントを羽織って黄金の鎧をまとい王冠を頭に載せていた。
「レオ!やっておしまい!」
たてがみのような長髪をなびかせた猫目美少女は百獣の王に命令をくだす。
背中の大剣を引き抜いたレオがナイトに襲いかかる。
「にゃにゃにゃにゃッ!」
ナイトはフルーレで得意の連続突きをお見舞いする。
レオは構わずナイトに突進した。
フルーレはレオの鎧に弾かれてささらない。
レオはぶんぶん大剣を振り回して後退するナイトを追いかけ回す。
乱暴な剣ね。百獣の王とは思えない気品のなさ。
ナイトがもっと深く踏み込めばレオの鎧をフルーレで貫けるかもしれないけど、そしたら豪剣のえじきになりそうね。
「おーっほっほっほっ。オタクの子猫ちゃんいじめられてるみたいでかわいそぉ」
「調子に乗ってなさい。最後に笑うのはあたしたちよ」
あたしは腰の刀を抜いた。
前のは吸血鬼に砕かれたので新しく購入した名刀だ。
レオは倒せなくてもレオの飼い主である獅子丸麗香を倒せばいい。
麗香に向かって疾走する。
腕組みをほどいた麗香は不敵な笑みを浮かべて背中の大剣を抜いた。
「わたくしにならかなうとでも?ざんねん。わたくしレオ以上に強いのよ」
あたしの刀と麗香の剣が激突する。
つばぜり合いするけど、麗香の剣は重くてびくともしない。
なんて剛力なの?
逆に押し切られそうになって後退させられた。
「主従そろって貧弱ねぇ!もっとお肉を食べなさいッ!」
麗香は獰猛な剣を振り回して迫って来る。
こんな剣を受けていたら刀が折れてしまう。
勝ち目がないあたしは背中を向けて逃げ出した。
「おまちなさーい!」
獲物を狩るライオンの顔で麗香が追ってくる。
目が血走ってて恐い。
ナイトを見ると折れたフルーレを持って逃走していた。
レオに追いかけられてる。
主人とまったく同じ状況だ。
走るナイトと正面から衝突する。
「神人合体ッ!」
あたしはナイトと1つになった。
猫耳としっぽが生えてフルーレと古式銃を手に入れる。
今頃、実況席は大興奮しているはずね。
あたしはレオに向けて銃を撃つ。
鎧を貫かれたレオは片膝をついて崩れ落ちた。
「よくもレオをッ!」
怒れる麗香に素早く接近して腹部をフルーレで突き刺す。
彼女が剣を振るよりも早く一撃を喰らわした。
いまのあたしのスピードは光速だ。
麗香もレオと同じく片膝をついて崩れ落ちた。
治療班がいるからすぐに傷は回復する。
勝負ありだ。
降参の声を待っていると麗香は叫んだ。
「神人合体ですわッ!」
麗香とレオの体は輝きひとつになる。
やっぱり到達していたのね。
鎧をまといライオンの耳を生やした美少女が出現する。
傷は完璧に回復していた。これも合体効果だ。
人と守護霊の霊力が混ざり合って傷を修復する。
「おしおきの時間ですわ」
麗香は獲物を見つけた猛獣のような速さでこっちに走ってくる。
銃を連射するが銃弾を喰らっても平気で向かってきた。
鎧は貫いてるのに止まらないなんて・・・
まさか筋肉で銃弾を弾いてる?
「豆でっぽうなんて効きませんわッ!」
麗香の振り回す剣を冷静にかわす。
威力はありそうだけど、あたらなければ怖くない。
百獣の王の迫力に負けて腰が引ける臆病者とばかり戦って来たんでしょ?
あたしはちがう。
冷静にすきをついて深く踏み込み突く。
フルーレは麗香の腹部を貫通した。
銃弾で穴を開けたところを狙ったから貫けて当然よ。
「グフフッ」
麗香は口から血を流し両膝をついた。
傷口から流れた血が水たまりを作っている。
今度こそ勝負ありね。
直後、あたしの体にしゅるりと縄が巻き付いた。
「えッ!?」
いつのまにか麗香の手にしていた大剣がムチに変わっている。
瞬時に大剣を消し去り霊力でムチを生成したのだ。
イメージが固まってないとへなちょこの武器しか生成できないけど、このムチはおしゃれでじょうぶだ。そうとうな時間イメージ訓練を重ねたに違いない。
「のどぶえを食いちぎってさしあげますわ」
麗香はのそりと立ち上がる。
この出血量でまだ動けるなんて不死身ね。
あたしはムチに体を絡め取られて身動きできない状態で微笑んだ。
「こんなの簡単に抜け出せるわ」
「やってごらんなさい」
麗香は牙が伸びた口を大きく開ける。
のどに牙が突き刺さろうとした瞬間、あたしの体に巻き付いていたムチがちぎれて弾け飛ぶ。
「なんてことですのッ!?」
麗香は頭を抱える。
あたしはフルーレを消して両手にかぎ爪を出現させていた。
かぎ爪でからみつくムチを切り裂いたのだ。
服も動きやすいように三銃士から黒いミニワンピに変更した。
「悪あがきはやめなさいッ!」
麗香は絶叫しながら飛びかかってくる。
「とりゃー!」
あたしはしゃがんでかわすと巴投げで麗華を華麗に投げ飛ばした。
「ぎゃふ!」
背中からリングに叩きつけられた麗香はカエルが潰れたような声を出す。
麗香に飛び乗り細い首をかぎ爪で切り裂いた。
「きゃーーーッ!ひとごろしですわ!」
麗香は首をおさえて出血を止める。
「あなたもあたしを殺そうとしたでしょ?被害者ぶるのはやめて」
治療班にはフェニックスの守護霊を持つエクソシストもいる。
たとえ死んでも生き返るでしょ。
あたしは顔についた血を黒いハンカチで拭きながら他の2人の様子を確認する。
チョウの羽を生やした朝陽はリングに倒れたチャイナドレスを着たうさぎ耳の美少女を見下ろしている。
コボルトと化したびぐるは正座してうなだれる黒いコートをまとったパンサーの獣人を見下ろしていた。
2人とも勝利したみたいね。
観客席から大歓声が上がる。
麗香はフェニックスの力で無事に復活して駆け寄ってくる。
「次はぜったい負けませんわ。ライオンがネコの上位互換ということを世間に示さねばなりません」
「猫のほうが可愛いけどね。可愛いは最強。ライオンはうちで飼えないでしょ。食べられちゃうもの」
「威厳と畏怖が大事なのですわ!」
「ネコ最強説を広めるためにあたしは戦い続ける。いつでも来なさい。返り討ちよ」
あたしと麗香は火花をばちばちと散らす。
「まあまあ同じ猫科なんだしなかよくしなよ♩」
朝陽に仲裁される。あたしは別にそこまでライオンに敵意ないけど麗香は猫を敵視している。
猫のほうが人気あるから嫉妬でしょうね。
あたしたちは観客に手を振って退場した。
控え室で一息つく。
「うさぎの子とはステゴロだったの?」
「うん♩キックボクシングも勉強してて良かったよ♩」
朝陽はファイティングポーズをとり「しゅしゅっ!」とジャブを繰り出す。
チョウのように舞いハチのように刺したのかしら。
「パンサーちゃんは黒い刀を持つ侍だったぜ。最後は居合対決でオレの勝ちよ」
びぐるは刀を抜く真似をする。
「向こうのほうが一瞬早かったんだけどな。ふせてかわしてズドンよ!」
「さすが犬ね。ふせが得意」
「だろぃ」
びぐるは胸を張る。
1回戦を突破したあたしたちは次々に強敵を撃破した。
翌日、ついに決勝戦がはじまる。
相手は天使を守護霊とする天空音路、龍神を守護霊とする竜王院龍子、不動明王を守護神とする金剛カルラだ。
チーム名はブレッシング。
朝陽はチーム名を聞いた時「わたしが1番好きな英語だよ♩」と言っていた。
不覚にもこの子と結婚したいと思ったわ。
祝福という言葉は自分ではなく他人に使う言葉。
他人の幸せを心から祝える人間じゃないと幸せにはなれない。
この子と結婚すればあたしは幸せになれるということだ。
あたしは幸せになりたい。
復讐の神に取り憑かれたあたしには叶わぬ願いだけどね。
ネロたちが登場すると観客は大声援を送った。
3人とも笑顔で観客に応えてる。
威圧の風を受けて体がビリビリとしびれる。
「やべえな。おもわずひざまづいて頭を垂れたい気分だぜ」
「カリスマだよね。光のマントを羽織ってるみたい」
「政府の誇る我が国最高戦力よ。あの子たちを倒せば、政府はもうあたしたちに干渉できない」
「いままでのルール違反もぜんぶ不問?」
「そういうこと」
「じゃあ、ぶっ倒すしかねぇな」
びぐるこぶしをにぎって鳴らした。
音路はあたしたちを見て首をひねる。
「ん?きみたちどこかで見た顔だね・・・あーそーだ鬼退治の時の子だ」
龍子は目を軽く見開く。
「あんたから手柄を横取りしたっていう悪ガキどもかい?こりゃ、こらしめてやんねーとな」
カルラは腰に両手をあてる。
「悪い子はおしりぺんぺんしちゃいましょう」
優しい顔でおっとりとした口調だけど、背後の不動明王の憤怒の相が怖すぎる。
「さーてだれがだれとやる?」
「あたしは音路とやるわ。あなたたちは好きになさい」
「わたし龍神がいい♩」
「ならオレは不動明王か。歯ごたえがありそうだぜ」
それぞれ対戦相手が決まった。
ゴングが鳴り響き決勝戦がはじまり。
弓を構えた天使が矢を放った。
ナイトがフルーレで弾く。
天使の相手はナイトが引き受けてくれる。
あたしは音路に集中だ。
「きみの心には黒い炎が見える。世界にあだなす者は滅するのみ」
音路は聖剣を鞘から抜いた。彼女の心を映すように真っ白い。
あたしは今日のために用意したまがまがしい邪悪な剣を鞘から引き抜いた。
「あたしの魂は永遠に不滅よ!」
不適な笑みを浮かべて駆け出す。
音路に斬りかかった。
音路と本気のチャンバラをする。
「魔剣だね。そんなのどこで手に入れたんだい?」
「ないしょ」
「魔界か。またルール違反。ルールを守れないなら子供とはいえ容赦しないよ」
「あなたも子どもでしょ!」
「私は大人と同じ権限を持つ。きみは持ってない」
「ルールなんて権力者が勝手に決めたこと。おとなしく従うのは力がないから。どこの世界でも力こそ正義でしょ!」
「完全に間違っている。幼稚園からやりなおしたほうがいい」
「あなたは特権階級の腐敗を知らずに政府からいいように使われてるだけ。エクソシスト協会の上層部はたっぷり私腹を肥やしているわよ?権力の座もずっと一族で継承してる。他人の才能で裕福な暮らしをしている怠惰な連中を排除して世界をきれいにするためには革命が必要なの!」
「それが本当だとしても話し合いで解決すべき問題だ。暴力で世界を変えようとしているなら私はけして許さない」
「政府の犬に許してもらおうなんて思ってないわ!」
燃え上がる怒りを込めた魔剣で音路の聖剣を弾き飛ばす。
聖なる銃に手を伸ばした彼女の左腕を斬り飛ばした。
あたしはベルトに下げていた暗黒色の銃を引き抜いて音路の心臓をぶち抜く。
「さよならネロ。天界はあたしがいただくって神に伝えて」
スローモーションで倒れる音路を見つめていると胸に痛みが走った。
胸から金の矢が飛び出している。
キューピッドの矢だ。
正確に心臓を貫かれたあたしは膝をつく。守護天使が音路に駆け寄り回復している。
後ろを振り返ると胸に矢が刺さったナイトが仰向けに倒れていた。
天使なんかにやられるなんて情けないネコね。
あたしは念じる。
神人合体ッ!
体から光があふれる。
ナイトと合体して猫耳しっぽの三銃士の姿になった。
傷は完全に回復している。魔剣と魔銃はそのままだ。
これらは両方、魔界で入手したものだ。
あたしたちは3ヶ月間、放課後と休日を利用して魔界で修行した。
魔界への無断渡航は法律で禁じられてるけど、強さを求めて法律を犯した。
魔界を支配する魔王の1人を倒して魔剣と魔銃をゲットする。
魔剣は人間が使うと闇落ちするっていわれてるけど純白の魂を持つあたしならだいじょうぶでしょ。
憎しみを燃やせば燃やすほど魔剣は力を増す。
復讐者のあたしには抜群に相性がいい。
魔界へのゲートは心霊スポットとか暗い森の古い井戸にある。
ゲートの場所は迷いの森をさまよう悪魔を脅して聞き出した。
傷を回復した音路は怒りを込めて聖銃をぶっ放してくる。
天使も弓矢を乱射した。
あたしは避けながら突っ込む。
見える見える。銃弾も矢も止まって見える。
あたしのスピードに対応できない音路を袈裟斬りして天使を一刀両断する。
たわいもない。神に人が敵うものか。
倒れた音路の体に天使が寄り添うように重なった。
2人の体が輝き始める。
光輪と羽を生やした天使がリングに降臨した。
今日1番の歓声が湧き上がる。
「遊びの時間はおしまい。穢れた心をすぐに浄化してあげる」
「あたしの心はだれにも触れさせない。たとえ神であっても」
霊化と念じ空中戦に備えて霊体化する。
さらに魔剣を天に掲げた。
「魔竜のすみかッ!」
あたしと音路を取り巻く世界が塗り変わり魔界の景色が登場する。
むらさきの空、黒い雲、果てしなく広がる大地だ。
魔剣に秘められた力を使い魔族に有利な異空間を作り出す。
この空間にはあたしと音路とカメラを背負った鳥は残っていた。
魔界は邪気に包まれていて魔族以外はデバフ効果がある。
つまりステータスがいちじるしく下がる。
魔剣を持っているあたしにはデバフ効果はない。
音路は息苦しい様子で顔をしかめている。
「あらあらどうなさったのかしら。顔色が悪いようだけど?」
あたしは問いかける。
「悪魔の笑顔だね。とってもみにくいよ」
「みにくいなんて言われたことないから新鮮だわ。クククッ」
大地を蹴って音路に斬りかかると彼女は空に逃げる。
当然、飛んで追いかける。
デバフ状態の音路は動きが悪い。
魔界の空を飛び回って剣をかわす。
体力を削られた音路はふらふらして肩で息をしはじめた。
このままいけば勝てる。チャンスだ。
音路はあたしに背を向けて逃げると大きく距離をとって振り返った。
音路は光の斬撃を飛ばしてくる。
「聖刃ッ!」
あたしは闇の斬撃を撃ち返した。
「闇刃ッ!」
連続で光の刃を飛ばしてきたけど、ぜんぶ闇の斬撃で相殺する。
音路は天に手をかざした。
「光柱ッ!」
天界から光の柱が降ってくる。
あわてて避ける。
あんなのモロに喰らったら消滅しちゃう。
お返しよ。大地に手をかざす。
「闇柱ッ!」
闇の柱が地獄から伸びて音路を襲う。
音路は翼を羽ばたかせてかわした。
手のひらをこちらにかざす。
「聖雷ッ!」
白いカミナリが放たれる。あたしも手のひらを音路に向ける。
「闇雷ッ!」
黒いカミナリが放たれた。
カミナリ同士は衝突して消えた。焦げ臭い匂いがあたりに漂う。
「魔法なら勝てるとでも?残念ね。聖剣にできることは魔剣にもできるのよ」
「それなら私も天界を創り出す。天使の縄張りッ!」
音路は聖剣を天に掲げるけど、うんともすんとも反応しない。
「どうして?」
絶望する音路に魔銃を撃ちながら接近する。
音路が銃弾を跳ね返しているすきに背後に回り込んだ。
「意思疎通が足りないのよ。これからは毎晩、抱いて寝なさい!」
背中を左袈裟に斬り下げる。
「ぐああああッ!」
落下していく音路に銃弾もおまけした。
意思を持つ武器は絆を深めることで真の威力を発揮する。
異空間形成は絆が最大値まで高まってないと願っても発動できない。
音路は聖剣に対する知識が浅かった。
あたしは魔剣にささやく。
「閉界」
異空間が払拭されて景色が闘技場に戻る。
倒れた音路に救護班が駆け寄っていた。
絶賛と悲鳴が入り混じるなか、実況はあたしの勝利を告げる。
ほかの戦いはどうなったかしら?
振り向くとボロボロになった朝陽とびぐるが立っていた。
「ひゅー。なんとか勝ったぜ」
「辛勝っす♩」
2人とも笑顔でピースしている。
龍子とカルラも救護班の手当てを受けていた。
ユニコーンと一体化した美少女が懸命に回復魔法をかけていた。
優勝はあたしたちだ。
学園長から天国への扉を開く合言葉を耳打ちされた。
その言葉は「人間は愛を学ぶために地上に堕とされた」だ。
あたしが天界にいた頃は「人生はありがとうを集めるゲーム」だった。
迷える人間の魂を天国へと導きたい神の願いが込められた清らかな合言葉だ。
表彰式が終わったあと、学生寮に戻って泥のように眠った。
翌日の祝勝会は高級レストランで行った。
「カンパ~イ♩」
ステーキやパスタ、グラタン、オマール海老などがところせましと並んでる。
びぐるはワイングラスに注いだシャンメリーを回した。
「カルラは激強だったぜ。さすが不動明王だ。けど、地獄刀がありゃどんな強敵もイチコロよ」
びぐるは腰の刀をぽんっと叩く。
あたしたちは魔界だけでなく地獄でも修行した。
閻魔大王からの依頼で悪鬼たちを退治した褒美にもらったのが地獄刀だ。
「あたしも妖精剣のおかげで龍神様に勝てたよ♩」
朝陽は腰に下げてる剣をさすった。
修行中に妖精界にもおじゃました。
平和な国だったけど、少し細工して魔物を生み出して討伐した。
マッチポンプだけど妖精女王から妖精剣という宝剣を頂く。
「あなたたちの戦いぶり気になるわね。帰ったら観てみるわ」
「あたしも夜霧ちゃんの戦い気になる♩」
「おやつ買ってかえろーぜ!」
あたしたちはたらふくごちそうを食べて学生寮に帰宅した。




