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おばけ屋敷

竹林を抜けるとお墓と卒塔婆そとばが並んでる場所に出た。

人魂が出現し白い着物と三角頭巾をつけたおばけがお墓の後ろからこっちを覗いている。

「かくれんぼはやめて出てきたら?」

あたしは刀を引き抜く。

ナイトもフルーレを構える。

おばけたちは慌てて井戸の中に逃げ込んで行った。

「これじゃ肝試しになんねぇな」

「こっちがおばけみたいな?」

「命拾いしたわね」

あたしは刀を鞘に納める。

「いやもう死んでるんだが」

「ひゆよ」

さらに進むと古びた武家屋敷が現れた。

「本番はこれから。気を引き締めて行きましょう」

門をくぐると提灯おばけが現れる。

あたしたちを先導してくれるようだ。

歓迎されているみたいね。

ポケットサイズの懐中電灯をしまう。

玄関をあがると見えない壁にぶつかった。

「ぬりかべだ!」

朝陽は見えない壁をどんどん叩く。

「邪魔ね」

ナイトはフルーレで百烈突きを繰り出す。

穴だらけにされたぬりかべはものも言わず退散した。

「退治したの?」

「いいえ。ケガを負わせただけ。悪意を感じなかったから逃したわ」

「無益な殺生は良くねぇもんな」

「退治したい時は棒で足元(下の方)を払うと倒せるそうよ」

「ぜったいおぼえとく!」

あたしたちは長い廊下をどんどん突き進む。

ひとつ目小僧やからかさ小僧と遭遇したけど無害なので素通りする。

朝陽は小さく手を振っていた。

庭の池から河童が顔を出してこちらをのぞいている。

墓場で逃げ帰る人間が多くて来客は珍しいのだろう。

突き当たりを右に曲がってすぐの部屋に入る。

座敷わらしとろくろ首が座布団に座ってまったりしていた。

天井にはあかなめがいる。

このこたちも無害なので素通りする。

無人の部屋が続き広い部屋に出た。

中央に超巨大な蜘蛛がいる。

顔は鬼で体は牛、足は剣のような爪だ。

「牛鬼だ!」

朝陽は叫ぶ。

「お目当ての妖怪よ。こいつは人間を襲って喰ってる。ドブのような匂いがするでしょ?」

「する。赤鬼の時と同じ匂いだ」

あたしたちは戦闘態勢を取る。

飛びかかろうとしているチョコに注意した。

「危ないからおすわり。一瞬で引き裂かれるわ」

「わおーん」

「朝陽とびぐるも待機なさい」

「もちろんだぜ!」

「夜霧ちゃんナイト!がんば!」

あたしとナイトはじりじりと牛鬼の間合いに近づく。

「なんとうまそうな小娘じゃ。たまらぬ」

牛鬼はニタァと凶悪な笑みを浮かべた。

霊力の強い人間は香ばしい匂いがするらしい。

強い悪霊が悪臭を放つのと同じだ。

間合いにつま先が入った。

牛鬼の爪が襲いくる。

あたしは刀で弾くのが精いっぱいだけど、ナイトは剣を紙一重でかわしながら突撃する。

ナイトの繰り出した突きが牛鬼の片目を潰した。

「ぐぉおおおおッ!」

痛みと怒りで牛鬼が爪を振り回して暴れはじめる。

天井や畳に剣が突き刺さりめちゃくちゃだ。

あたしは転がったり飛んでかわした。

ナイトは牛鬼の背中に飛び乗り何箇所も突き刺す。

硬いのか深くは刺せていない。

「のらネコ風情がワシの高貴な体に傷をつけよって!串刺しにしてくれる!」

牛鬼は爪を向けるがナイトはくるりとかわして飛び降りた。

運動能力が高いネコちゃんね。頼もしい。

「地獄の苦しみを味わえッ!」

牛鬼は口から毒を吐き出す。

黒いドロドロとした異臭を放つ液体だ。

あれを食らったら一撃でおしまいね。

ぷっ!ぷっ!ぷっ!と毒をまき散らす。

爪と毒を両方避けないといけないスリリングな状況だ。

部屋が汚れて足の踏み場もなくなりいつのまにか壁際に追い込まれた。

「八つ裂きにしてくれるわ!」

爪の嵐が襲ってくる。

かわせない!ここまでか!

目をぎゅっとつぶる。ダメージが来ないので目をそっと開けると全身を複数の爪に貫かれたナイトが立っていた。

「ナイト!?」

爪を引き抜かれたナイトは毒沼に倒れる。姿が薄まって消えていく。

「愉快痛快じゃ!最高の感触じゃったわい!」

「うわぁあああああああ!」

あたしは怒りで我を忘れて哄笑する牛鬼の頭に飛び乗り、太い首に刀を深く突き刺す。

「ぐほっ!?」

牛鬼は苦悶の表情を浮かべた。

「うあああああああ!」

絶叫しながらそのまま下に体重をかけて首を半分切り落とす。

「ぜったい許さない!」

勢いで足の爪を根本から2本斬る。

本来の力なら牛鬼の体を深く貫いたり切り裂いたりできないはずなのに怒りで火力が爆発的に上がっていた。

さらに追い討ちをかけようとしたところで足の力が抜けてひざから崩れ落ちる。

冷静さを失って無茶しすぎた。霊力が空っぽだ。

「鬼殺し借りるぜ」

びぐるはあたしから刀を奪い牛鬼の攻撃を避けながら背中に飛び乗った。

「ナイトの仇ッ!」

牛鬼の首に刀を深く突き刺しあたしと同じようにしてもう半分を切り落とす。

びぐるも怒りで霊力が燃えるように強まっている。

「ぐふぅ!」

牛鬼の首がポトンと落ちる。

首だけになった牛鬼はあたしに毒を吐こうとしたけど朝陽が顔面に両膝から飛び乗り口を閉じさせた。それからメリケンサックをはめた拳でめったうちにする。

「だだだだだだだだぁ!」

「ごはぁ!」

連打を浴びせられた牛鬼の頭が消えた。

あとは胴体だ。

びぐるは足をぜんぶ切り落として牛鬼が身動き取れないようにする。

胴体に飛び乗りトドメを刺すために刀を刺して体重をかける。

深く押し込んでようやく心臓を刺し貫いたのか胴体も消えていった。

毒沼も消える。

あたしの足はレモンが回復してくれた。辛勝だ。

びぐるとチョコの体が光る。

「新たな力が湧いてくるぜ!」

チョコの姿が進化した。

和風の鎧を身につけたビーグル犬の獣人コボルトだ。

日本刀も腰にさしてる。

「かっちょいい〜!」

びぐるはチョコに抱きつく。

「バウ!」

チョコはうれしそうだ。

「ナイトちゃんは死んだの?」

「生きてるわよ。霊力を失って姿が維持できなくなっただけ。霊力が回復したら戻ってくるわ」

「よかった♩」

「あたしも霊力を失ったし、悪霊の巣にいるのは危険だわ。そうそうに徹底しましょう」

「うん」

「おう」

あたしたちは早足でおばけ屋敷を出る。

妖怪たちが立って見送ってくれる。

ずいぶん好意的だ。牛鬼は嫌われていたみたいね。

カッパも池から出ていた。

お化け屋敷を出て墓地を抜けて竹林に入る。

チョコが大きく吠えた。

あたしは立ち止まる。

「妖怪よ。構えて」

「えっ?どこどこ?」

「見えねえぞ」

あたしたちはきょろきょろとあたりを見回す。

つむじ風が吹きあたしたちの頬は軽く切れた。

「うわ!なにこれ?」

「かまいたちね」

「ぶっそうなあいさつだぜ」

風は勢いを増し竹林がスパスパと切られる。

かまいたちは両手の爪が巨大な鎌のイタチみたいな姿の妖怪だ。

風のような速さだから目でとらえることは困難である。

いつでも首を切れるのに頬を切ったのはあたしたちが恐怖する姿を愉しんでるんだわ。

チョコはみんなを守るように歩み出ると腰を低く落として刀の柄に手をかける。

「チョコ。まかせるぜ!」

「ワン!」

チョコは目を閉じた。

鼻がひくつく。

突風が吹き抜けた瞬間、チョコは勢いよく刀を抜いた。

居合切りだ。

どさりと音がしてかまいたちが地面に落ちる。

胴体はまっぷたつだ。

「やったな!チョコ!」

「やるわね」

「クーン」

チョコは照れて頭をかいている。

犬の嗅覚で姿が見えないかまいたちをとらえていたんだわ。

「まだ息がある。朝陽、とどめを」

「はいな!」

朝陽はベルトに装備したタガーナイフでかまいたちの心臓にとどめをさした。

かまいたちは「きゃん」とうめいて消える。

「力が湧いてくる♩」

朝陽とレモンのレベルアップがはじまる。

レモンはまゆに包まれるとピクシーに進化した。

モンキチョウの妖精になったレモンは朝陽の周りを飛び回る。

「きたこれ!めっちゃ可愛い♩」

朝陽はぴょんぴょん跳ねてる。

「ピクシーは回復魔法だけじゃなくて攻撃魔法や敵を眠らせる魔法、混乱させる魔法も使える。便利な相棒よ」

「とっても大事にするよ♩」

朝陽はレモンを手のひらの上に乗せる。

「帰って祝勝会やろーぜ」

「つかれたから今夜はもう寝ましょう。祝勝会は明日よ」

「オレはつかれてねーぜ」

「わたしも元気元気♩」

朝陽とびぐるはテンションが高い。

2人はレベルアップして体力も霊力も回復してる。

あたしはもうダメ。

急激に睡魔が襲ってきた。

体がふらつく。

「おいだいじょうぶか?」

「・・・だいじょうぶ」

「だいじょうぶじゃない声だね」

突然、地面が大きく揺れた。

竹林をのぞきこむように巨大なガイコツが現れる。

「こわっ!なにあれ!?」

「ばかでけえ!」

「がしゃどくろよ!」

次から次に妖怪が現れる。生かして返さぬ、と言われてるみたいね。

がしゃどくろは戦死や野垂れ死になどで埋葬されなかった人々の骸骨や怨念が集まってできた巨大な骸骨の姿をした妖怪だ。

夜中に「ガチガチ」と骨の鳴る音を立てて歩き回り、生者を見つけると襲いかかって握りつぶして食べる。

がしゃどくろが伸ばしてきた手をチョコが刀で斬った。

ガチん!と弾き返される。

「バウッ!?」

「かってえな!きれねーぞ」

「刃物はムリね。ハンマーで叩いて砕くの。頭部が弱点よ」

「ハンマーないし!」

鬼が魔力で金棒を作り出したように霊力を消費して好きな武器を具現化する方法もあるけど2人に訓練させてない。

霊力が少ないと武器の具現化はできない。2人がレベルアップして霊力が増えてから教えようと考えていた。

いまの2人の霊力なら武器を具現化できるけどイメージが弱いとへなちょこの武器しか作れない。

実在する武器を触ったり使いたい武器を絵に描いたりイメージ訓練しないとダメだ。

「逃げましょう」

「だな」

「とんずらぁ!」

逃走しようとすると、周囲の地面からガイコツの大群が出没する。

手には骨の武器を持ってる。

「ひえっ!?」

「理科室にいるやつだ!」

「がしゃどくろの子分ね」

あたしたちを逃がさないように蘇らせたのね。

ぜったい絶命のピンチってやつかしら。

霊力ゼロのあたしは戦力にならないけど、最終形態まで進化した守護霊を持つ朝陽とびぐるがいるんだからこの場を切り抜けることはできるはず。

でも、あたしの頭は疲労で回らない。

「レモン!使える呪文を教えて!」

朝陽が命じるとレモンは朝陽のおでこにチューをする。

自分の情報をあるじに送り込んだのだ。

「りょーかい!あれで行こう!」

「きゅぴ!」

レモンは鱗粉を振り撒きながら高く夜空を飛んだ。

「アイスフリーズ!」

朝陽が呪文を唱えるとレモンが祈りのポーズを取る。

周辺に冷気が漂いガイコツたちをいっせいに氷漬けにした。

「チョコ!親玉を噛み砕いてやれ!」

「バウバウッ!」

チョコは鎧を脱ぎ捨て四つ足になると獣のようにがしゃどくろに肉迫した。

がしゃどくろはチョコを捕まえようとするけど足が速すぎて無理だ。

チョコはがしゃどくろの伸ばした手を駆け上がって頭蓋骨を容赦なくどんどん噛み砕く。

「ぐおーーーーーん!!」

がしゃどくろは頭を抱えて地面に座り込みそのまま消えていった。

凍結していたドクロたちは朝陽がメリケンサックで粉々に砕いて回る。

2人は強敵をあっさり退けた。

「やったね♩」

「オレたち強くなってる!」

朝陽とびぐるはハイタッチをかわしてる。

「あたしもう眠すぎて目を開けていられない」

意識が飛ぶ。

気づいたらびぐるの部屋のベッドの上だった。

朝陽とチョコはそれぞれソファーと床でグースカ寝てる。

2人のあどけない寝顔を眺めて微笑む。

育成計画は順調に進んでる。

だけど野望を実現するためにはもっとレベルアップしなきゃダメだ。

あたしは両手でほっぺを叩き気合いを入れ直した。

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