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ラスボスが主人公  作者: こたつぬま


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18/20

神々の黄昏(たそがれ)

コウモリネコたちが撮影してくれた魔王軍侵攻を3人で食い止めた動画はめちゃくちゃバズった。

最初に北の魔王軍がいかに悪いやつかっていうナレーションもいれたので一方的な殲滅でもスカッとするしヒーローを崇めたくなる。


じつは修行で魔界に行った時に北の魔王が怪しい動きをしているというウワサはキャッチしていた。

人間界の情報をやたら集めて戦力の分析をしている、というウワサだ。

どうやら人間界への侵攻を考えてるみたいね、と思ったけど放置しておいた。


侵攻させて退治すればあたしたちの名声は天にまで届くもの。

計算通り各界からあたしたちに対する信仰が集まった。

あたしたちはもはや神を超えた存在だ。

超神ね。

霊力ははちきれんばかりみなぎり全宇宙まで広がってるように感じる。

時は満ちた。

あたしは朝陽とびぐるを連れて天国の扉の前に立つ。


「人間は愛を学ぶために地上に堕とされた」


合言葉を唱えると巨大な門の扉が開きはじめる。


「うひょーこれが天国か!すっげえな!天空の城だぜ!」

「こんな清浄な空間はじめて♩」


天空都市を見て目を丸くしている。

懐かしい我がふるさと。

歓迎のパレードはないけど心はじゅうぶん高揚する。


「猫の国に行くわ」

「おう!」

「うん♩」


あたしたちは南に向かって飛ぶ。

雲の上に広がる大きな都市に降り立った。

中世のヨーロッパ風に作られた猫の国の街並みは昔と変わってない。

ただ街で見かける紋章とオブジェが猫からネズミになってる。


「猫ちゃんいないね?」


朝陽はキョロキョロして猫耳を探す。

街にいるのはほとんどネズミ族だ。

残りの種族にも猫はいない。

あたしをみた町人たちが足を止める。


「あー!猫だ!こんなところに猫がいるぞ!」

「大罪人め!この国から出ていけ!」


激しい憎しみの眼差しに取り囲まれたので飛んで逃げる。


「すごい差別意識だね」

「ネコ嫌われすぎだろ。下界じゃ考えられないぜ」

「ネズミ政府が反猫教育を行なっているんでしょう。自分たちの怠惰な政治に対する民衆の不満をそらす目的もあるんでしょうけどね」


猫族を探してほかの町に行く。

虎族の国に降り立った。


「あっ、猫ちゃんいる!」


朝陽が声を上げる。

噴水広場のステージで猫族たちは踊って歌っていた。

みんな足を止めてステージに注目している。


「この国じゃ差別されてねぇみてぇだな」

「よかったね♩」

「そうかしら。あの子たちすごいやせてるわ」


あたしは彼らの健康状態が気になった。


「猫姫様ッ!」


横から声をかけられる。

振り向くとメガネをかけた猫耳の美女がいた。


「ワタクシのことを覚えておいでですか?」

「もちろんよ、ひさしぶりねソファ」

「おひさしゅうございます」


ソファは涙ぐむ。あたしはハグしてあげた。


「知り合いか?」

「あたしの教育係のソファよ」

「はじめまして。夜霧ちゃんの友だちの朝陽です♩」

「同じく友だちのびぐるだぜ。よろしくぅ」

「ソファと申します。ここではなんなので喫茶店でお話ししましょう」


あたしたちは近くの喫茶店に入った。

ミルクとホットケーキを注文する。


「あたしが転生して前世の記憶を持ったまま帰ってきたのにおどろきが小さいわね」

「猫姫様はただでは死なないと思っていました。何か策を打って戦いに挑んだのではないかと推測しておりました」

「ご明察ね。さすがあたしの教育係。いまはどうしてるの?」

「劇団の支配人をしています。各国をめぐりながらミュージカルで劇団員を食べさせています」

「あの子たちすごいやせてたわ。ちゃんとエサあげてる?」

「国に納めるお金が多くてわたくしたちの生活はカツカツなのです」

「公演するために国にお金払わなきゃいけないの?」

「はい」

「なんかおかしいなぁ。もしかして猫族だから差別されてるんじゃない?」

「朝陽様のおっしゃる通り猫族は各国で差別を受けています。干支に歯向かったことで国を失った猫族は放浪の民となりました。奴隷のように働かされている者もいれば、わたくしたちのように公演しながら各国をめぐり糊口を凌いでいる者もおります。猫族の立場が弱いことにつけ込まれどこの国でも法外なショバ代を役人に請求されます。家も買えないし貸してもらえません。カツアゲにもよく合います。微力ながら身寄りのない路上で暮らしていた猫族を劇団で養っていますが働いても働いても我が暮らし楽にならずです」

「かわいそう。猫は何にも悪くないのに!」

「特級神っていう1番偉い身分のやつらに相談したらいいんじゃないか?」

「わたくしたちの身分ではお会いできるはずもございません」

「ムダよ。あいつらは猫族の苦難は天罰だと思ってるし階級社会を変えるつもりは毛頭ない。永遠に権力を維持したいだけなんだから」


あたしはテーブルに届いたホットケーキをむしゃむしゃと平らげる。

ソファの着ている服もおしゃれだけど安っぽい。

昔はもっといい服を着ていたのに。

あたしがあげた宝石類もきっとぜんぶ売ってお金にしたんでしょう。

仲間を食べさせるために。


ミルクでホットケーキを流し込む。

空になったコップをだんっ!と置く。


「当初の目的通り、いまから天界を制圧するわ。あたしが新たな王となり天界を支配する。だれもが笑って暮らせる差別のない社会を創るの」

「意義なし」

「賛成♩」


あたしたちは立ち上がる。

ポケットから大量の金貨の入った袋を取り出してテーブルに置く。

エクソシスト協会が所持していた天界で流通している金貨だ。

1級エクソシストは天界を訪問して神の依頼をこなしたり、仲良くなった神からお小遣いで金貨をもらってる。その一部を持ってきた。


「これでみんなに美味しいものを食べさせてあげて」

「ありがとうございます。猫姫様、朝陽様、びぐる様、ご武運を!」

「まかせなさい」

「うん!」

「おうよ!」


喫茶店を出たあたしたちは空を飛んで特級神の暮らすエリアに向かった。

飛んでも飛んでもなかなか辿りつかない。


「どんだけ高いところが好きなんだよ」

「そうとうな霊力がないと途中で墜落しちゃうね」

「同等の力を持つものでなければ話す気もない。神は弱者が嫌いなのよ」

「なんかずっと試されてるような気もするね」

「神は試練が大好きなの」


長らく飛んでようやく頭上に雲が見えてきた。

和風のお屋敷が並ぶ大都市だ。

背の高い建物はまったくない。

着物を着たさまざまな種族が町を歩いている。

ここで暮らせるのは特級神が認めた者だけ。

彼らは自分たちより下の階層に暮らす種族のことなど気にしない。

自分たちさえ良ければいいんだわ。


中央にある立派なお屋敷に向かう。

黄色い羽を羽ばたかせながら朝陽が問いかけてくる。


「今さらだけど天界の乗っ取りって重大な犯罪だよね?」

「おのれの手を汚す覚悟を持ちなさい。苦しんでいる天界人を大勢救えば犠牲にしたわずかな天界人をはるかに上回る。差し引きとして善が勝つ。単純な計算よ」

「そっか。そうだよね♩」


お屋敷の前に降り立つと2人の門兵が立ち塞がった。


「ここはアメノミナカヌシ様のご邸宅だ。立ち去れ!」


造化(ぞうか)の三神の1柱ね。

近くにタカミムスビノカミ(高皇産霊神)、カミムスビノカミ(神産巣日神)も住んでるのかしら。


「ちょっと話があるのよ。ダメ?」

「ダメに決まっておる!」

「あらそう。朝陽お願い」

「スリープッ!」


朝陽は手をかざして門兵に睡眠魔法をかける。

門兵たちはその場に崩れ落ちた。

霊力に差がありすぎて弾けないでしょ?

門をくぐり靴を脱いでそろえて屋敷に上がり込む。

着物を着たうさぎ顔の女中見つかる。


「超神議り(ちょうかむはかり)にお呼ばれのお客様でしょうか?」

「そうよ」


しれっと嘘をつく。


「ご案内します」


うさぎはあたしたちを先導する。


「超神議りってなんだ?」

「特級・1級の神様で集まって会議してるのよ。ちょうどよかったわ」

「この子、顔がうさぎすぎ」

「野生御神酒(やせいおみき)を飲んだんでしょ。神力で顔が濃くなるの」

「わたしも飲みたい♩」

「人間には効果ないわ」


廊下を歩き1番奥の部屋のふすまをひらく。


「お客様をご案内しました」


広い畳の部屋に造化の三神・オリュンポス十二神・イザナギ家・七福神・七大天使・武甕槌(たけみかづち)・八意思金神(やごころおもいかねのかみ)たちが首をそろえていた。

お膳(おぜん)が並んでいる。

ごちそうを食べながら会議していたみたいだ。

お酌をしている女中たちもいる。


「なんじゃそなたらは呼んでおらぬぞ」


天照大御神が胡乱な目を向けてくる。


「なかなか見目麗しい。酌でもさせるか」


隣に座るゼウスはおちょこをぐいっとあおる。


「よきお考えじゃ。舞も踊らせましょうぞ」


天鈿女命(アメノウズメノミコト) はコロコロと笑う。

ほかの神たちも珍客の来訪に興味深そうな視線を送ってくる。

あたしは背筋を伸ばして声を張る。


「あたしは猫姫。怠惰(たいだ)なあなたたちに変わって今日からあたしが天界をおさめることにしたわッ!あたしに忠誠をちかわぬものはものはこの場で斬るッ!」


宴会場に大笑が響く。


「なかなか面白い冗談じゃ。だれぞが寄越した宴会の余興か」

「おいおい反乱が起こったぞ。だれか鎮圧せい」


だれも真に受けない。

魔剣を抜く。


「魔竜の息吹(デビルドラゴンブレス)ッ!」


宴会場は瞬く間に魔界へとぬり変わった。

創り上げた異世界に転送したのは神だけ。

女中とごちそうは消え失せる。

魔界では神族や天使のステータスは著しくさがる。

魔界の不吉な空気は神の気をまとう彼らの肌に合わないのだ。


「さあ、ひざまづきなさい」


あたしは剣先を向けた。


「おいたがすぎるぜ。お嬢ちゃん」


タケミカヅチはのそりと立ち上がる。

霊力で剣を作りあたしに向かって来る。


「腕一本で勘弁してやらぁ!」

タケミカヅチの振った剣を魔剣で受け止めた。

ガキィィィンッ!

甲高い音がしてタケミカヅチの剣が折れる。


「なにぃ!?」


驚愕するタケミカヅチの首を斬り飛ばす。

天之尾羽張(あめのおはバリ)ならいざ知らず酔いが回った頭でイメージした霊剣が魔剣の強度に敵うはずがない。千鳥足で剣筋も冴えなかった。

宴会だから武器はうちに置いてきたんでしょう。

つねに身から離さず手元に置いておくべきだったわね。

転がった生首はいまだ立ち上がりもせず傍観している神々の中心に転がる。


「なんてこった!」

「おそろしい子ッ!」

「タケミカヅチ様ッ!」


天界の誇る武神があっさりと散ったことに神々は動揺する。

天照はタケミカヅチの生首を抱き抱えて何かつぶやく。


「アイスプリズンッ!」


朝陽の氷魔法で天照は巨大な氷塊に閉じ込められる。


「復活はさせないよ」


天照に蘇生魔法があることは事前に教えていた。


「地獄牢ッ!」


びぐるは地獄刀を大天使ラファエルに向ける。

呆然となりゆきを見守っていたラファエルは炎の牢獄に閉じ込められた。

中はとんでもない熱さで本来は地獄の罪人を苦しめる刑罰らしい。


「こんなサウナいやーー!」


ラファエルは泣き叫ぶ。

天使も死者を生き返らせる蘇生魔法を持ってる。

なかでもラファエルの癒やしの力はすさまじく多くの死者をいっぺんに蘇生できる。

ぜったい先に力を封じておくべきだ。

地獄牢に閉じ込められたラファエルは灼熱から身を守るために回復魔法を使い続けなければいけない。もう仲間の復活に手は回らないだろう。

朝陽とびぐるにほかの神々と天使のデータも渡している。抜かりはない。


「もはや子どものいたずらではすまされぬぞ!」


スサノオが荒ぶる神の一面を見せる。

巨体でおそろしい顔だからど迫力だ。


「いたずらなんかじゃないわ。ずっと本気よ」

「身のほど知らずが!貴様のくだらぬ野望など粉々に打ち砕いてくれるわ!」


スサノオは大きな棍棒を作り出す。

あたしにどたどた向かってきた。

怖がって逃げ回る相手ばかり相手にしてきたのかしら?

動作が遅すぎでしょ。


「おしおきじゃッ!」


スサノオの振り上げた右腕は消えている。


「なぬっ!?」


びぐるの地獄閃だ。

居合で斬撃を飛ばしスサノオの右腕を斬り飛ばした。


「鍛錬をサボりすぎよ」


隙(すき)だらけなので袈裟(けさ)斬りにする。


「うがぁ!」


スサノオはひざから崩れ落ちる。

心臓を貫きしっかりトドメを刺した。

こいつも天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)を手元に置いてない。

神はホント平和ボケしているわね。

最強の武神を2柱ほうむった。

あとは毘沙門天(びしゃもんてん)とゼウスとマルスだ。


「子供とはいえあなどれぬ。ゼウス殿マルス殿ゆめゆめ油断なされぬな」


先端が3つにわかれた槍を構えた毘沙門天はゼウスとマルスに呼びかける。


「わかっておる。生意気にもこやつの霊力はわれわれを上回っておる。ふんどし締めてかからねばの」


ゼウスは緩んだ顔を引き締めて威厳のある表情だ。

ゼウスは昔の魔法使いの持っていそうな木製の大きな杖を手にしている。

雷霆(らいてい=ケラウノス)と呼ばれる雷で作ったカミナリの形の武器なら、ちょっと警戒しなきゃいけなかった。

なにしろ世界を一撃で滅ぼし全宇宙を焼き尽くすことができるとされる伝説の武器だ。

普段は持ち歩いてなかったようでホッとしたわ。


「ひさしぶりに血の匂いを嗅いだぜ。やっぱり戦場は興奮するなぁ」


マルスはグラディウスと呼ばれる剣と円形の盾を装備している。

3柱の神はあたしを取り囲んだ。


「いまから始まるのは一方的な蹂躙(じゅうりん)。あなたたちが敵軍に対していつも行っていたことをその身で体験なさい。闇刃(ダークブレイド)ッ!」


漆黒の斬撃を連続で飛ばす。

神々は避けきれず被弾した。

腕や足から鮮血が舞う。

魔界では魔剣を持つあたしのステータスはバフがかかる。

いまのあたしの剣は神でさえも見切れるものじゃない。


「世界を破滅に導く神の鉄槌(てっつい)・・・」


ゼウスが杖を天に掲げる。

詠唱を終える前に斬らなきゃ。

あたしは大地を蹴った。


「通さぬ!」

「通行料払いな!」


毘沙門天とマルスが立ちはだかる。押し通る!


「魔炎斬りッ!」


2人が攻撃を繰り出す暇もなくむらさき色の炎を魔剣にまとわせて連続で斬る。


「あつぅ!」

「あちぃ!」


炎に巻かれてる2人を置き去りにして猪突(ちょとつ)猛進する。


「我が怒りを世界に示せ。サンダーアロ・・・ふがっ!」


ゼウスの口を魔剣で貫く。

ぎりぎり間に合った。

引き抜いて今度は心臓を刺す。

魔炎を浄化した毘沙門天とマルスが襲いくる。

光魔法で魔炎を消したようね。


「こんにゃろう!ぶっ殺してやる!」

「悪魔の子め!魔滅じゃー!」


全身火傷で動きが鈍い。

これなら詠唱する余裕がある。

魔法は詩をつけて詠唱したほうが効果が強い。

2柱に向けて手をかざす。


「冷徹非情な魔人を狂わせる堕天使の矢。ダークサンダーアロー!」


発生した複数の黒い雷の矢が軍神たちを貫いた。

毘沙門天とマルスはうめき声をあげて魔界の大地に伏す。

魔炎の炎で灰と化す。

朝陽とびぐるのもとに急ぐ。

2人は七大天使と戦闘していた。

ひとまず2人の成長を見守ることにする。


朝陽が剣を交えているのは神軍の総司令官ミカエルだ。

互いに剣と魔法を駆使して戦ってるけど、朝陽が押している。

ミカエルの剣を弾き飛ばした朝陽は叫ぶ。


「桜花爛漫(おうからんまん)ッ!」


一瞬で一万回以上斬られた最強の天使は悲鳴をあげて堕落していった。

さっそくひとり撃破ね。

びぐるを探す。

びぐるはガブリエルと戦っている。

魔導書を手に魔法で戦っているけど、呪文を唱える前にびぐるに斬られた。

ラギュエルは杖の先端が天秤(てんびん)になっている変わった武器をつかっている。

相手の名前を口にし前世から積み重ねた悪行が善行を上回ると即座に死亡させる初見殺しの悪人には恐ろしい兵器だ。ラギュエルには相手の頭上に名前が見える。

誰も天使の審判から逃れられない。

びぐるは名前を呼ばれてもまったく意に介さずラギュエルを剣で刺し貫いた。


ラギュエルの天敵はお人よしの善人だ。

先端が月の形をしたオシャレで長い魔法の杖を持っているのはサリエルね。

心眼で魂を見つめ汚れている部分を魔法の針を飛ばして攻撃する。

けして防げない必中攻撃だ。

魂を破壊されれば存在そのものが消滅して転生さえも許されない。

サリエルは目を見開く。

びぐるの魂は鮮やかな芝生色をしている。

シミひとつない穢れなき魂を天使は傷つけられない。

サリエルはあきらめの表情を浮かべてあっさり斬られる。


2人の成長にニヤニヤが止まらない。

仲間をやられて激怒したウリエルは聖剣に神の炎をまとわせてびぐるに斬りかかった。

びぐるは地獄刀に地獄の炎をまとわせて対抗する。

地獄の炎は罪人を見つけるとより火力を強める仕組みだ。


支配層でありながら苦しむ民を見捨て堕落した生活を長らく送っていた天使を地獄の炎はどう判断するかしら?


地獄の業火はウリエルを包み込み天使の翼ごと燃やし尽くす。

ウリエルは炎に包まれ絶叫しながら落下していった。

炎の剣対決はびぐるに軍配が上がる。

大天使を4人も倒すなんていじめられっ子だった時からは考えられないほどのすばらしい成長ぶりね。


神の奇跡だわ。


最後に残ったレミエルは非武装だ。

朝陽が斬りかかる。

レミエルは祈りの憂いを帯びた顔で祈りのポーズをとった。

幻覚を見せてしもべにするつもりだ。


「エンジェルテンプテーションッ!」


ピンクハートの連続攻撃を受けた朝陽は首を傾げる。

朝陽と霊力の差がありすぎてレミエルの催眠魔法は効かない。

額に汗を流したレミエルは小さな白旗をぱたぱた振って降参した。

強い相手に降る。生存戦略としては正解ね。

朝陽とびぐるは合流してハイタッチを交わす。


あたしは2人のもとに向かった。

2人の勝利を讃える。

伝説の神や大天使といえど霊力の差があれば圧倒できることが証明できた。

信仰してくれる信者たちに感謝だわ。

武神と大天使は排除した。

あとは戦いに向いてない神だけだ。

あたしたちは戦うすべを持たない神々の前に降り立つ。

怯えている神々を守るように立ちはだかるのはイザナギとイザナミ夫妻だ。

イザナギの妻であるイザナミは叫ぶ。


「我らの政治に不満があるなら話し合いで解決に導くべきじゃ。暴力的な方法を選んだそなたたちはただの無法(むほう)ものじゃ!」

「話し合いで解決できれば戦争は起こらないわ。前世であたしが死ぬこともなかった。目の前の惨状は豪遊三昧(ざんまい)で色恋沙汰にうつつを抜かし既得権をけして手放さずか弱き民の訴えにいっさい耳をかさず過ごした怠惰な日々が招いた結果であることをお忘れなく」


あたしは腰に両手をあてる。


「あたしに忠誠を誓うならみんな生かしておいてあげるわ。いまの悠々自適な暮らしも保証してあげる。3秒で決めて」

「しばし待たれよ」


イザナギ夫妻は1番後ろに待機する造化の三神のもとに急ぐ。

少しして戻って来た。


「われらはそなたに忠誠を誓う」

「かしこい選択ね」


あたしはにっこりと笑う。

振り返ると朝陽とびぐるも笑顔だ。

天照とラファエルも解放する。

魔界を閉じてもとの宴会場に戻った。


「だれか記者たちを呼んで。あたしが天界の支配者となったことを全世界に喧伝するの」

「承知いたしました」


月読命(ツクヨミノミコト)はすばやく動いてくれる。

気持ちの切り替えがはやく。腰が軽い。すばらしいわ。

天照が問うてくる。


「スサノオたちの復活はダメかえ?」

「武神と軍神は復活させない。好戦的な大天使も。かならず反乱を起こすから」

「ざんねんじゃ」

「今日はもうお開きよ。会議の日程はまた連絡する」


重い足取りでみんな帰って行った。

アメノミナカヌシ主様に語りかける。


「この家はもらうわ」

「かまわぬ。屋敷はほかにもいっぱいある」


許可は簡単に得られた。ラッキィ。猫も飼おう。

応接間に移動して待っているとすぐにカラスやハトの記者が集まって来たので取材を受けた。

写真をパシャパシャ撮られる。

アイドルポーズを決めてあげた。

彼らは興奮した様子で取材を終えると各方面へ飛んで行く。

あたしはうさぎ女中に声をかける。


「あたしは猫姫。いまからここはあたしの家。あなたはあたしに仕えなさい。名前は?」

「ミミです」

「ミミ。お風呂の用意と3人分のごはんと布団を用意して」

「ははぁ」


ミミは頭を下げるとぴょんぴょん去っていく。


「さすがもとお姫様。指示に慣れてるね♩」

「あしたから忙しくなるわよ。しっかり休みなさい」

「ういっす」

「は~い♩」


天界制圧という野望を果たした。

達成感で胸がいっぱいだ。

最高のお風呂だった。

ひさびさにぐっすりと安眠した。

参考 seesawブログ 伝説の魔剣・聖剣・盾

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